-俳句界 2014年 06月号-


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●A5判  ●定価1,000円



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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【赤コーナー】
梅まつり三的射抜く女武者
神奈川 朝岡芙貴代
俳句ボクシング・今月のチャンピオン【青コーナー】
北風の押し近づける佐渡が島
広島 藤岡蒼樹
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
挨拶の一会の言葉梅二月
滋賀  北村和久
二月になり、一面に梅が咲いた。出会う人が皆、「梅が開きましたね」と挨拶して行く。挨拶した人の多くは、初めて挨拶を交わし、多分二度とは会わないに違いない。この句の作者は目が不自由な方であり、それだけに声に鋭敏であり、一会の言葉であることがよく分るのである。
手品一つ種を明かして春祭
埼玉  牛島千鶴子
暖かい春の日、春祭がにぎやかに行われている。大道芸人が手品を演じている。観客の一人、多分子供が種を明かしてくれと頼んだのであろう。手品師がそれに応じたのである。明るい春祭らしい雰囲気がよく描かれている。
春節の竜に南京町狭し
兵庫  原 英俊
春節は旧正月である。中国では今も旧正月を大いに祝う。この句の南京町は神戸の中華街であろう。そこで竜が舞っているのである。中国では古代から竜が大切にされ、春節には竜が大活躍する。春節の南京町のにぎわいを竜には狭いくらいだと表現したところが佳い。
雑詠-池田澄子・選
うららかや亀が泥ごと歩きだす
神奈川 神野志季三江
「泥ごと」という普通の言葉を普通に読むと、のろのろ動き出した亀の姿と、びっくりしている作者の姿や顔が見えてくる。甲羅が泥まみれで動くまでは泥そのもののように見えていた亀。まさに「うららかや」。気負いのない表現により一層「うららか」。
春節の竜に南京町狭し
兵庫  原 英俊
「狭し」によって成った一句。「竜」の体の大きさと動きの激しさ、人の多さ、賑やかさが語られている。南京街、あまり広い通りではないが、春節ともなれば住人や店員もうきうきと通りへ出ていて、観光客の多さを喜んだり、赤や黄色や爆竹の音が思われ、賑やかさと活気が伝わる。
目も耳も妻もすこやか初詣
栃木  山口 勝
「すこやか」は今への感謝である。「目も耳も妻も」完璧に健やかな日々であれば、それは当然のこととして意識されにくいとも考えられる。それらが、近く、あるいは徐々に失われていくのかもしれないと考える年齢や環境での、感謝と少しの怖れとも読める。
雑詠-伊藤通明・選
目隠しをされて闘鶏冷やさるる
鹿児島 内藤美づ枝
闘うときの軍鶏の鋭い眼、強い脚や羽搏き、ときに嘴を飛ばされたり眼を潰されたりすることもある。闘った軍鶏にまず目隠しをして、視野を塞ぐことで闘争心を鎮める。その後水を浴びせたり、馬穴の水につけたりして冷やされる様子が見えるようだ。
月山の闇を揺るがす雪起し
兵庫  本村幸子
出羽三山の中でも一際高く中央に聳える月山は、修験の山としても知られている。灯りのない真っ暗な夜に突然の雷光と雷鳴が、月山を揺るがせる。その後の季節風と降雪。「闇を揺るがす」という大きな把握から北国の暗澹とした重々しさも感じさせる。
うららかや亀が泥ごと歩きだす
神奈川 神野志季三江
池や沼の縁に泥を被ったまま眠っていた亀が、暖かい日差しに誘われのそりと動き出した。亀の歩く様子は、それだけでも充分楽しいが、甲羅に泥をつけたまま歩き出してくれば尚更、「うららか」そのものである。
雑詠-茨木和生・選
声あらば松とて哭かん涅槃絵図
兵庫  森山久代
釈迦入滅の様子を描いたのが涅槃絵図だが、この軸は涅槃会の法要が営まれる間、本尊として礼拝される。天から馳せ参じた生母摩耶夫人をはじめ、仏弟子、諸菩薩、鳥獣虫などに至るまで嘆く姿を描いている。作者はもし声があったなら松の木も哭くだろうと推量する。
一枚の写真の語る多喜二の忌
東京  尾形和北
昭和八年三月二十日特高警察によって逮捕された小林多喜二は、築地警察署での厳しい拷問によって、即日死亡した。この一枚の写真は拷問の跡の鮮やかに残る遺体とその遺体を囲んでいる小林の同志たちの写真である。この写真を見るといかにひどい拷問だったかが分かる。
第二巻箱だけ残り啄木忌
神奈川 神野志季三江
『石川啄木全集』全八巻を本棚に並べてあった。ところが何か気がかりになって調べてみると、第二巻は箱だけで中身はなかったのである。誰かに貸したという記憶はない。第二巻には啄木の処女詩集『あこがれ』が収められている。持ち出したのは家の誰かであってほしい。
雑詠-大串章・選
寂れたるドックの町や冴返る
神奈川 長浜よしこ
かつて造船国日本を誇っていたわが国も、最近は中国、韓国に大きく水をあけられた。この「ドックの町」も、一頃は造船に関わる人々が多く住み、年に何回も進水式が行われたのだろう。今や往時の活気は完全に失われ、寂れた町になってしまった。時代の流れを感じさせる句である。
除雪車の時刻表なき任務かな
兵庫  大曲富士夫
普通、列車やバスは「時刻表」に従って運行している。しかし、道路や線路の積雪を排除する除雪車に「時刻表」はない。雪はいつ降るか分らないし、いつ何処に出動命令が出るか分らない。それが除雪作業の厳しい現実である。「時刻表なき任務」と端的に言ったところに共感する。
第二巻箱だけ残り啄木忌
神奈川 神野志季三江
箱入り本の全集が本棚に並んでいる。ところが、第二巻は箱だけで中身が入っていない。一体どこへ行ったのだろう。中身を取り出して読んだ後、どこか別の所に仕舞ったのだろうか。下五に「啄木忌」とあるから、嘗て好評を博した『石川啄木全集 全五巻』(改造社)等かもしれない。
雑詠-角川春樹・選
折り紙の金をとり合ふ春隣
三重  岡田良子
ものの命のみなぎる春をこころに描いている作者である。目の前では、子どもたちが、希少な金色の折り紙を取り合いっこしているという。「折り紙の金をとり合ふ」という措辞から元気な子どもを連想させ、「折り紙の金」を用いて待望の春のひかりを描いた秀吟。
ポケットに鳥類図鑑木々芽吹く
埼玉  牛島千鶴子
鳥類を識別できる、文庫サイズの簡易な図鑑であろう。ポケットに収まるサイズというのがいい。芽吹きはじめたばかりのまだ視界の効く山野で探鳥に興じているのだろう。自然讃歌の佳吟。
啓蟄や抜栓したる貴腐ワイン
高知  吉倉紳一
啓蟄は、二十四節気のひとつで三月六日ごろ。地虫や蛇、蜥蜴の類が冬の眠りから目を覚まし、地上に出て活動をはじめる季感である。「貴腐ワイン」との取り合わせの妙のある作品。生命の喜びを、作者のみほとりの華やぎにひきつけて描いた佳吟。
雑詠-辻桃子・選
燠寄せてうるめを乗せる炉端かな
東京  星野佐一
俳諧集『猿蓑』(向井去来、野沢凡兆編)の「市中の巻」中の付け句に〈灰うちたたくうるめ一枚 凡兆〉がある。凡兆の句は直接燠の上にうるめをのせたので、灰を叩いて払っている。この句も、炉端で潤目鰯を焼くところ。燠を寄せるという具体的な動作を詠んだところがよい。
音ほどは見えぬ雨脚小夜時雨
大阪  髙田敏雄
夜の時雨の音がはっきりと、それもかなり大きく聞こえている。ところが雨脚は目を凝らしてようやく見える程度なのだ。はっきりと聞こえる雨音によってかえって夜の静寂を際立たせている。微妙なところを詠んで、小夜時雨の感じをうまく掬い取った。
まんさくの咲いて誰にも誉められず
神奈川 橋本博之
金縷梅(まんさく)はぼうとした薄黄色のめだたない花。薔薇のように、咲けば誉められるような花ではない。そこをとらえた。宮沢賢治の詩に「ホメラレモセズ/クニモサレズ」(「雨ニモマケズ」)とあるが、いちはやく咲いた金縷梅に春を感じ、賢治の詩を思い浮かべたか。
雑詠-豊田都峰・選
手風琴にいつかはなれる枯すすき
兵庫  木村美智子
すすきは風に吹かれ、時々は遠くを見はるかし、また雨風にうたれなどして枯れてゆくが、ただそのような単なる経過を経ているのではない。それらは「手風琴」になるための姿だとする。この連想はたいへん詩的であり、すすきの揺れの姿とする。
雪晴れの遠くよりくる木霊かな
群馬  小暮駿一郎
雪晴れの今であるが、多くの雪が降ったこと・降りつづいている時のことの方が多く作者のイメージを占めている。それが「遠くよりくる木霊」。雪の下にあるものの声・雪折れの声、雪しずれの音などなどの木霊か。残心の響きを評価したい。
啓蟄や自選自解の稿を継ぐ
神奈川 盛田 墾
「啓蟄」を広く考えて、物々の動き始める頃の到来とする。作者にとっては俳句に関係することを一層継続する。そんな動きの具体的な表現である。虫の動きだしから、自分の趣味の動きまでの飛躍は楽しい。
雑詠-宮坂静生・選
樹氷林出て人間にもどりけり
兵庫  木村美智子
樹氷林中を歩いているときの感動が深かったことを思わせる。樹氷林の美しさと一体化し、うっとりとした時間をすごしたのである。抜け出して初めてわれを取り戻したような驚きが「人間にもどり」という把握。「人間」というがっちりした表現に迫力がある。堂々たる作。
朧夜やまろびかねたるガスタンク
愛知  桑原規之
「まろびかねたる」が面白い。転んでいきそうで、危ういところで持ちこたえているような不安定な形を巧みに捉えている。ガスタンクは見る者に不安感を抱かせる。いつ転がるか、いつ爆発するか、近づけない嫌な感じを与える。それが春の朧夜という最高の時間での感慨なのが秀逸。
板前は鰤に一礼して捌く
京都  吉田裕志
板前の律義さ、どんな対象でも料理させてもらう感謝の心が滲む。「一礼」にすべての思いが籠められる。大きい鰤が俎板の上に横たわる。いのちをいただく緊張感もあろう。目に見えるような包丁人の丁寧な所作に、さすがに天下の味どころ、京都の地の貌が見える。なかなかの作。
雑詠-山本洋子・選
雑兵のごと冬濤の起ち上がる
島根  大島一二三
沖から立ち上がり寄せてくる冬の波は、ぶつかりあい、砕けちり、居丈高に吠えるがごとく押し寄せてくる。その様子を「雑兵」と感じたのはユニーク。荒々しい冬の海の波頭は、身分の低い兵卒たちがなんの統一もなくてんでばらばらに気勢をあげる様を彷彿とさせて、説得力がある。
父母は今でもたより桃の花
三重  西浦 優
愛らしい桃の花を眼前にすると、年を重ねた自分が父や母の生き方にならって暮らしていることに気づく。「今でもたより」には心のよりどころをもっている幸せな実感がある。観念的になりがちなテーマが、明るく、愛らしく、生命力のある桃の花という季語により生き生きとしている。
よろこんで父雪投げの的となる
神奈川 英 龍子
「よろこんで」が雪投げの状況のすべてを物語っている。すすんで雪投げに加わり、子の投げた雪つぶてに雪まみれになって子供のようにはしゃぐ父。「雪投げの的となる」子煩悩の父の姿が彷彿とする。
兼題
今月の兼題…【家】
兼題-大高霧海・選
戦没の画家の絵鑑賞建国祭
茨城 羽鳥つねを
雛の家女系三代着道楽
埼玉 成田淑美
万の家灯らぬままの原発忌
福島 松坂一生
兼題-佐藤麻績・選
毀つ家をじっとみている頬被り
大阪 田村昶三
白木蓮飛び立ちさうに母の家
長崎 高橋栄美子
先生の家へ押しかけ卒業す
兵庫 森山久代
兼題-田中陽・選
「この下に家があります」雪を掘る
新潟 岡地蝶児
炎昼のまさか隣家で孤独死とは
大阪 西向聡志
独り家の霞に姉を置いてくる
千葉 今村 廣
兼題-名和未知男・選
才無くば家山を出でず耕せり
愛媛 境 公二
家伝書の染め七通り水澄めり
山口 市川邦子
亀鳴くや家長といへど家来なし
鹿児島 西辻公臣
兼題-山下美典・選
木の家は木の声で哭く雪しんしん
福井 木津和典
大寒波家というもの有難し
岩手 大坂晴子
里神楽本家朝まで開け放ち
東京 髙野虹子

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