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●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2016年1月号 ○
特   集
蛇笏と龍太
〜受け継がれる孤高の俳句精神ーグラビア"蛇笏と龍太の山河"など
特 集 2
投稿欄選者新春競詠
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串章、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、他
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、俳句の「読み」を読むー岸本尚毅、他
特別作品50句
辻 桃子
俳句界NOW
小原 啄葉「樹氷」
甘口でコンニチハ!
菅 直人(元首相)
特別作品21句
岸原清行、阪田昭風、佐久間慧子
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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
夕焼けに躓きさうなバスに乗る
東京 東 和郎
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
賜りし梨雨雲の重さもつ
東京 坂さつき
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
風倒の晩稲ひと束づつ起す
三重 伊室美枝子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
峰雲の仁王立ちする辺野古かな
沖縄 安井千佳子
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
仮面つけ長き夜となる舞踏会
埼玉 小池美知子
謝肉祭で仮面を着けた人々の行列や踊りが行われるが、普通の舞踏会では珍しい。しかし時には仮面舞踏会が行われる。秋の夜長を楽しもうと、仮面を着けた舞踏会が始まったのである。いかにも長い夜らしい雰囲気が描かれているところが佳い。
栗添へて神話の里の宿の膳
福岡 楢㟢恵一郎
この句の「神話の里」とは何処であろうか。出雲か、霧島、或いは高千穂か。いずこにせよ神話や伝説が語り継がれている里の宿に、一泊した時の食事に栗が添えられていたのである。神話の時代から栗を食べていた様子を感じさせるところが佳い。
鳰一声森の日暮急
長野 小川恵美子
鳰はキリッとかキリリと短く鳴く。森の中に湖があり、そこに何羽もの鳰が住んでいる。昼間はしきりに水に潜り亀を捕えていた。その鳰達の一羽が鋭く一声鳴いた。すると森の日暮がにわかに進んだのである。鳰の一声が森に日暮を促したように描いたところが佳い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
惑星のひとつに生きて良夜なる
神奈川 土生依子
大宇宙のロマンが感じられる句である。この「惑星のひとつ」という表現から、我々地球に住む人類だけではなくて、宇宙には他にも知的生命体の生息する惑星があり、その星でも我々と同じように月見をしているような情景が想像出来る。その惑星にはどんな月があるのだろう。
組体操九月の空に立ち上がる
大阪 やまぐち若葉
運動会の花形イベントの一つでもあったと思うが、最近は組体操の、特にピラミッドの安全性が議論されているようだ。私の時代では当り前に演技したのを覚えており、息子の時代でもやっていた。秋の爽やかな空に向かって颯爽と立つ雄々しさは、やはり魅力的である。
黄落や村に残りし能舞台
熊本 利光釈郎
現在でも実際に能楽が演じられているのかどうかは判らないが、地方には、古くからある能舞台に時々出会うことがある。基本的には野外に設えてあり、そこに銀杏落葉が散り敷いているのであろう。重厚な能舞台の造りと、黄色く染める黄落のコントラストが美しく表現されている。
雑詠-茨木和生・選
蝗食ふ死語の一つにララ物資
福岡 川崎山日子
『広辞苑』を見ても「ララ物資」という語はあるものの説明がない。ララ物資は「腹を空かせ、 病気に苦しむ」日本の子供を救おうと、アメリカの団体から送られて来た救援物資。私も蝗を捕 って食べた一人。戦後の貧しさを知るものは、「ララ物資」のありがたさは忘れられない。
今年米神の国とぞ思ひけり
大阪 吉田 喬
一つ一つの米粒が輝いている新米のご飯をいただくと、これほどありがたいことはないと思う。 この「神の国」は、戦時中に言われた〝日本は神国〞というのではない。今年米を手にしては、 日の神のご加護にあずかっている国と思い、水の神をはじめ稲作に関わる神々に感謝する。
新米の弁当とあり買ひにけり
佐賀 篠原凉子
何ともほのぼのとした句である。「新米の弁当あり」という店の貼り紙を見て、こんなにも素 直に喜んで、この弁当を買った作者をうらやましいと思った。私も新米が出たという貼り紙があ るとその店で五キロほど買って帰る。卵掛けご飯のおいしいのは新米のご飯に限るといってよい。
雑詠-今瀬剛一・選
まだ誰も踏まぬ白線運動会
群馬 小暮駿一郎
運動会の始まる前の緊張感がよく表現されている。グラウンドには早々と白線が引かれている のである。まだ人影はまばらだったかも知れない。白線だけがくっきりと目立って感じられる。「ま だ誰も踏まぬ」という表現がみごとに白線を際立たせている。
故郷には故郷の時間ばつたんこ
千葉 岩瀬孝雄
「ばつたんこ」はもちろん添水のことである。その言葉がよく働いていると思った。長閑な里、そこで作者は育ったのだ。心のゆとりからであろうか、都会に比べて時間がゆったりと流れているように思ったのだ。時々鳥や獣を追い払う添水が辺りに響く。
秋の空赤子の声の新しく
神奈川 久里枕流
命の輝きを感じさせるような作品である。先ず「赤子の声の新しく」という表現がいい。この世に生を受けての第一声と思いたい。この感覚的な把握は赤子の健康的な体を丸ごと感じさせる。次にその背景に広がる「秋の空」が印象的だ。赤子の声は大きく広がって響きわたる。
雑詠-大串章・選
案山子展大和三山晴れ渡る
千葉 三木星音子
奈良の田園で案山子展が行われている。案山子の顔や衣装は実にさまざま、宇宙服を着た案山子や野球のユニホームを着た案山子、更には手を繫いだ家族連れの案山子もいる。その向こうには耳成山、香具山、畝傍山の大和三山がそびえ、農業国日本の歴史を感じさせる。
青田中白き母校と生家あり
大阪 中村輝雄
青田波の中に白壁の母校が輝き生家が見える。子供の頃は田圃の中の道を歩いて学校に通った。田植や稲刈りなど、農作業に勤しむ人々の姿が懐かしく浮かんでくる。あの頃は田植機やコンバインはなかったから、一本一本手で苗を植え、一束一束鎌で稲を刈り取っていた。
おわら節習ふ夜長の旅の宿
福井 木幡嘉子
「おわら節」は富山県の民謡、毎年行われる「風の盆」で歌われる。風の盆は深くかぶった編 笠や哀愁ただよう胡弓の音で知られる。九月一日から三日間催されるこの風の盆には毎年多くの 人々が訪れる。「旅の宿」で「おわら節」を習っている作者たちも、そうした人々の一団だろう。
雑詠-角川春樹・選
天窓に銀河を置きていさかへり
静岡 宮田久常
詠まれているイメージの、構成が巧みである。秋の夜長に、お互いの主張を譲らない二人がい る。それぞれにとって拠りどころとなる言い分を、銀河が象徴しているようでもある。銀河に表 された「天」と、「人」の対比が効いている。
ほほづきのまだ青々と忌日来る
富山 的池遙(しんにょう)
作者が悼んでいるのが、どなたの忌日であるかは直接的には表現されていない。しかし、まだ青い鬼灯の実によって、読者には連想が働いてくる。順縁というよりも、夭折された人物を思われているのだろう。
月祀る山河は供華の花となる
兵庫 竹内信子
うつくしい表現がなされている。「供華の花」ということばからは、月夜に浮かびあがる稜線や谷の陰が思われる。山村を守り亡くなっていった人々の産土が見せる、慈愛の表情を言いとめた作品。
雑詠-岸本マチ子・選
村一つひつくり返し野分去る
三重 森 多恵子
暴風、台風または秋から初冬にかけて吹く強い風の事を「野分」というが、「村一つひっくり返し」が実に意外性があって適切。まさにひっくり返して去っていったのであろう。近頃は自然界も温暖のせいか暴力的になっている。
釈迦を背の室内楽や秋の澄む
神奈川 尾㟢千代一
「室内楽」とは、二つ以上の独奏楽器による小規模編成の洋楽のこと。例えば弦楽四重奏、ピ アノ三重奏は一寸無理としても、最近のお寺さんでは流行っているそうだ。お釈迦様も秋の夜長 を楽しんでらっしゃるのかも。「秋の澄む」もいい。
千姫を小脇に抱へ菊師去る
大阪 石川友之
菊人形のマドンナ、千姫を小脇に抱えた菊師。さぞ颯爽としていたに違いない。いまから菊人形の出番なのだ。菊の香が匂って来る。
雑詠-古賀雪江・選
名月や昔も今も村十戸
青森 福士信平
陰暦八月十五日、この仲秋の月は最も澄んで美しいとされている。しかし、月のない夜は深い 闇に覆われている。華やかなものには程遠い里もあろう。そんな侘しい里であっても今宵の名月 は皓皓と遍く照らすことである。「昔も今も村十戸」に句の背後にある作者の境涯を見た。
秋麗や空青ければ海もまた
三重 岡田良子
海が空に、空が海に誘われたのか、水天が境目なく紺碧である。湾の出入りの船も盛んで、沖には白帆も見える、天高く、明るい秋の日を色濃くありのままに詠んだ、景のはっきりした写生的手法の強さが思われ、季語の「秋麗」で感覚を先行させ、イメージをはっきりさせた句である。
給水塔の高々とある良夜かな
広島 谷口一好
給水塔は、給水に必要な水圧を得るために建てられた水槽を備えた塔のことである。皓皓とし た月下に殊更に高くそびえる給水塔、月が明るければ明るいほど給水塔の濃い影をつくるのであ る。「良夜」という季語の斡旋がぴたりと決まった、落ち着いた詩情を思った。
雑詠-坂口緑志・選
山手線日暮里下車や獺祭忌
埼玉 三角千栄子
根岸の子規庵はJR山手線日暮里駅と鶯谷駅の中程にある。ここで子規は寝たきりの中、『病 牀六尺』など多くの書を残した。獺祭忌は九月十九日。この日三十五歳と二日で子規は亡くなっ ている。日暮里駅に降り立った作者は、子規への沢山の思いを胸に獺祭忌へ向かうのである。
胡桃割る向田邦子読みし後
大分 森次よう子
放送作家、直木賞作家として活躍した向田邦子は、台湾旅行中に飛行機事故で亡くなった。五十一歳であった。作者の読み終わった作品は家庭や社会を鋭く観察したものであったろう。読了後、胡桃を割る姿にそんなことを感じている。
ただ長き俳歴を慙ぢ子規修す
愛媛 境 公二
今年も子規忌がめぐってきた。子規は三十五年の生涯であったが、俳句や短歌の世界に大きな足跡を残した。それに比べ俳歴の長いだけの自身を慙じているという。無論、謙遜をされてのことだろうが、それにしても、子規の偉大さは格別である。
雑詠-佐藤麻績・選
冬苺保母は天職といふ娘
神奈川 鎌田保子
人生に於て天職を得られ、しかもそれを自覚出来ることは、何より幸せなことです。一方その事を、わが娘から伝えられた母は大変恵まれていると言えます。季語の冬苺は、保母と言う仕事を表現するに的確。下五は字余りとなりますが、「むすめ」と読むことが実感を伝えてくれます。
鵜篝に新しき闇生まれをり
福岡 市村喜代美
鵜飼は鵜を使って夏の夜に行います。したがって篝火をたく、その有様を熟視されたのです。 篝火で照らされたことによって総てが照らされるのではなく、新たに照らされない闇があること が見えたのです。それが今迄あった闇とは異なる「新しい闇」だと捉えられたのです。
夏至の日の黒板消しの軌道かな
鳥取 石渕さゆり
黒板には白墨を使います。それを消すと軌道が生まれます。乱雑に消せば乱雑に、一定の消し方をすれば一定の。一方夏至とは北半球の昼が最も長く、夜が短くなって太陽暦では六月二十一日頃。黒板に残る軌道を何気なく見て、意識したのです。今日が夏至だと言うことが動かないと。
雑詠-鈴木しげを・選
秋うららなかなか泣かぬ泣相撲
東京 高橋透水
赤ん坊を抱いて東西から土俵にあがり、赤ん坊同士を見合わせる。先に泣き声をあげた方が勝つというほほえましい行事がある。秋の収穫など一段落したあとの祭礼。この句の面白さは「なかなか泣かぬ」である。お互いに赤ん坊はにこにこしている。まさに秋うららといったところ。
門口に鹿の水置き奈良格子
福岡 洞庭かつら
鹿は古くから神の使いとされて神社では篤く守護されている。奈良の春日大社周辺の町家であろうか、門口に鹿のための水が置かれている。そこに住む人々と鹿との共存が、ごく自然にこうしたかたちになってあらわれている。下五の奈良格子が趣をそえている。
新米の弁当とあり買ひにけり
佐賀 篠原凉子
今年収穫したばかりの米がはやくも弁当として売られている。「新米です」の表示が大きくな されていたことであろう。新米の語感がいいしうれしい。作者の「お」というおどろきが「弁当 とあり買ひにけり」のあうんの気息によく表現されている。この一瞬の呼吸が大切といいたい。
雑詠-辻桃子・選
落鮎のまがるところへ来てひかり
兵庫 池田喜代持
産卵を終えて川を下ってきた落鮎。力を使い果たして衰え、体が黒ずんでくるので錆鮎ともい う。蛇行する流れに身を任せながら下ってきた落鮎が、川が曲がるところで次々に日を受けて光 ったのだ。鮎は川を下りつつ短い一生を終えるが、その落鮎の放った最後の光芒のように思える。
筆立てのへり踏みはづす秋の蠅
兵庫 前田 忍
夏に盛んに活動した蠅も、秋になると勢いを失い、飛び方も弱々しくなる。畳の上や壁をゆっくり歩いているところを見かけることも多い。この句の蠅は筆立てに止まり、そのへりを伝っていたが、ふと踏み外してしまったという。いかにも秋の蠅らしいところをとらえた。
威される度に数殖え稲雀
島根 布野想夕
実った稲穂をついばむのが稲雀。畦に近いところの穂が多く被害にあう。鳴子を引き回したり、さまざまな鳥威しをかけたりするが、効果は一時的。しばらくしてまた集まってくる。そんなことを繰り返す度に、雀の数がどんどん殖えていくという。農家にとってまったく頭の痛いことだ。
雑詠-夏石番矢・選
ちんぽこが勃ったらいいなぁ蛍見て
長野 神戸千寛
これまでの投句のなかで最も自由でユーモラスな秀句だ。ただ事投句を読んで疲れていた選者に救われた気分を与えてくれた。男の性欲のバロメーターである勃起反応が、「蛍」を見て実際 に起きたわけではないが、そう願うことで、この世の動物的欲界からの解放をおおらかに唱える。
露草の高さから見る此の世かな
新潟 とっこべとら子
私たちは現世をほんとうはちゃんと見ていない。とりあえず自分の眼球の高さから、雑念をたくさん交えて大雑把に見ているにすぎない。「露草」には可憐ではかないイメージがあり、また あの花が、妖精の瞳を思わせる。その花の低い視点から見たこの世はどのようなものだろうか?
秋扇閉ぢ若冲の象へ寄る
奈良 吉川千鶴
「秋扇」と「若冲の象」との取合せから、とても華やかな風雅が生まれている。伊藤若冲の象 は、《白象群獣図》や《象鯨図屛風》の座った白象だろう。「秋扇」で優雅に舞い終えた女性が、 このおおらかな白象の絵に近寄ってくつろごうとする光景は、この上ない眼福。
雑詠-西池冬扇・選
風紋に亀の足あと星月夜
滋賀 秋口大門
星明りだけの砂浜、風紋を横切る亀の足跡。心象とも思える幻想的な景である。四国の日和佐にも海亀が産卵に上陸する。産卵は闇夜の俗説もあるが実際はアカウミガメの上陸は満月付近がほとんど。この句は星月夜としたことでイメージが幻想的になりすぎるのを避けたのかもしれぬ。
青空のぐらりと動く芋の露
奈良 貞許泰治
一句一章の構造で上五「青空」で切れていない。芋の露が動いたことでそこに映っている「青空がぐらりと動いた」のである。やはり俳句は読者のイメージが新鮮でリアリティに富む表現をすることが必要で、そこに美が生まれる。動くことのない空をぐらりと動かした表現の面白さ。
三尺の𩹷浮きくる良夜かな
北海道 花畑くに男
𩹷は「イトウ」だろう。北国の大きな幻の魚。だいぶ昔だが私もテレビ番組でみた。原野の湖 に月を愛でようと舟を浮かべた、その船縁に静かに浮かび上がったイトウの影。幻想的な景で美 しい。「𩹷」は釣り人以外には難読である。「諸橋大漢和辞典」で調べたらハリセンボンとあった。
雑詠-原 和子・選
空海の筆遣ひ追ふ虫の夜
東京 川俣由紀
真言宗の開祖空海諡号弘法大師は、詩文に長じ、わが国三筆の一として、その書の極みは知られるところである。掲出句の作者も追い切れる筈もない空海の書のたましいに傾倒、近付くことを切に願っているのであろう。下五「虫の夜」が一句の感興をよく受けとめ一入である。
秋夕焼軍艦島がうごき出す
千葉 宮山久美子
話題の軍艦島は、先の大戦から戦後の平和へと島の存在には多くの人の関心が集まり、観光地になっているが、単に観るばかりでは済まされないような気がする。掲出句の作者も充分に島の歴史的背景を認識され、どこか淋しさの漂う秋の夕焼の中で、虚と実のあわいを突いている。
今越えし橋の流され秋出水
茨城 羽鳥つねを
茨城県常総市を襲った未曾有の水の災害は映像で見ている限りでも痛ましく目を被うものがあった。今、渡ったばかりの橋が一瞬のうちに流れ去る。その驚怖が理屈抜きで伝わる。日頃から人知では超えられない自然への畏怖の念が、どこかで養われていなければと思う昨今である。
雑詠-山田佳乃・選
無花果を剝くとき小指遊ばせて
神奈川 久里枕流
無花果は庭先に実る身近な果物であった。柔らかいのでそのまま齧り付くこともあるが包丁で剝くのが今どきの無花果なのだろう。しかし優しく丁寧に扱わないと綺麗に剝けない。その時のしぐさが小指を遊ばせているように見えたという。無花果の小ささや柔らかさが感じられる一句。
円相の二つに割れし麻のれん
和歌山 川口 修
「円相」とは禅の一円相の書画のことで仏性や悟りを現したものと言われている。その「麻のれん」を割って入ってきた人を見た瞬間に生まれた句だろう。そこに描かれた映像が面白い。円相の暖簾を掲げる店の佇まい、そして「麻のれん」の軽やかさなど様々なことが想像される一句。
故郷の山の名聞こゆ大相撲
新潟 阿部鯉昇
力士は出身地ゆかりの名勝や山河を四股名にすることが多い。名乗りを聞いていれば、どこの 出身かがだいたいわかる。懐かしい山の名が聞こえて、故郷をふと思い出した作者。遠い昔の日々 のことまで蘇ったのかもしれない。故郷出身の力士をつい応援してしまうのだろう。
兼題
今月の兼題…【山】
兼題-大高霧海・選
併合の百年の恨山椒の実
東京 矢作十志夫
龍太亡きのちも枯山背戸に見ゆ
愛媛 境 公二
秋蝶や嬥歌の山の風に舞ふ
埼玉 橋本遊行
兼題-高橋将夫・選
山粧ふ熱きマグマをふところに
神奈川 鳥海悦子
囲はれて茸の山と知られけり
千葉 塩野谷慎吾
山吹や犬のコースは犬が決め
東京 山形れん
兼題-田島和生・選
白山に雲湧く日なり茄子の花
福井 木津和典
富士山の伏流水や稲の花
埼玉 佐久間清観
山羊鬚に飯粒一つ生身魂
大分 松鷹久古
兼題-田中陽・選
兵卒は死なず山田の稲を刈る
大分 下司正昭
「九条護るぞ」山田の案山子かな
東京 田守三里
いま確か父の声あり冬木山
栃木 大森耀平
兼題-中西夕紀・選
神の山閑かに鷹を放ちけり
大阪 秋山具輝
叡山を焼き払ふかに大夕焼
大阪 石川友之
山勘で選びし夫よ敬老日
東京 渕上信子
兼題-名和未知男・選
遥拝の三輪山けふも霧こめる
神奈川 木村みのる
月山や芭蕉の道に虫すだく
東京 高橋透水
山勘で選びし夫よ敬老日
東京 渕上信子
兼題-能村研三・選
連山の重鎮として秋の富士山
東京 大網健治
ひれ伏して荒ぶる山の芒かな
熊本 石橋みどり
澄みわたる山河に抱かれ大根蒔く
神奈川 大矢恒彦

2017年| 3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
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