●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年11月号 ○
特   集
わが郷土のグルメを詠む
日本各地の実力派俳人が愛される郷土の美味を俳句に読む
特   集
間違いやすい季語の見分け方
間違いやすい季語、違いを知りたい季語を徹底解説
特別作品50句
夏井いつき
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
石井いさお「煌星」
俳句界NOW
島津余史衣「松籟」
甘口でコンニチハ!
小宮 悦子(フリーキャスター)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ゆび一瞬空にならびて阿波踊り
茨城 加藤そ石
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
病む父の入れ歯を洗う遠花火
長崎 久田浩一郎
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
落鮎を狙ふ鴉や夕河原
愛知 加藤鋹夫
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
一灯もなき道をゆき牛蛙
兵庫 大曲富士夫
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
村祭土塀の上に猫二匹
千葉 すみちほ
村祭が盛んに行われている。町の通りもにぎやかで、時に神輿が通ったり、屋台店が並んだり している。それを土塀の上から猫が不思議そうに見下ろしているところが面白い。なんでこんな に人間どもは騒いでいるのだろうと、二匹で話し合っているところである。
父は子に永劫撃たる水鉄砲
埼玉 中村万十郎
父親は誰でも子供に甘い。水鉄砲を買ってやると子供は喜んで何にでも水をかけようとする。 特に人や犬猫に。父親は人にかけてはだめだと教える。すると今度は父親を的にする。だめだと しかってもきかない。でも父親は子供の元気の良いことを喜んでいるのである。
*つりしのぶ人形町のかんざし屋
高知 平井静江
東京都中央区の人形町には、みやげもの、特に人形を売る店が江戸時代から多かった。今もそ その江戸時代の面影が残っている。その人形町にはこれまた江戸的な「かんざし屋」がある。その 店に釣忍が吊るされているのを見つけたのである。人形町らしい風情のある句である。
雑詠-稲畑廣太郎・選
噴水や聞き返されしプロポーズ
新潟 阿部鯉昇
恐らくプロポーズした側は、相当な勇気を出して告白したのだろう。その時噴水が上がり、見 事にその声はかき消されてしまったのである。言われた方は予想もしていなかったので、何を言っ っていたのか聞こえない。何とも俳句の滑稽味が漂う句となった。季題が愉快に作用している。
夜の秋一年ぶりに鳴るピアノ
鹿児島 米原淑子
ピアノを弾ける人が、学校か仕事の関係で、遠く離れて住まなくてはならない状況にあるのだ ろう。丁度夏休みの帰省の時期に帰ってきて、存分にピアノを弾いているのである。晩夏の夜に 着いた光を好む人が多いのではないだろうか。実感として締めの線香花火は大人の雰囲気が漂う。
新神戸過ぎれば姫路天高し
福井 大森弘美
一見何でもない報告のようにも感じるが、このルートを新幹線で通ったことのある方には実感 として納得出来る句である。新大阪を発車して西へ行くと程無く長いトンネルに入り、新神戸だ けは地上、そして又トンネル。西明石辺りで出て白亜の姫路城が見える。季題が何とも爽やかだ。
雑詠-今瀬剛一・選
登山道これより雲の中を行く
千葉 山村自游
登山道をかなり高いところまで登っている情景と考えたい。今まで見えていた辺りの景色は 雲の中に消えてしまった。「これより雲の中を行く」という表現がいかにも大きく力強く響く。 とりわけ「これより」という表現に、今後の嶮しい登山への覚悟がある様に思えてならない。
捕虫網残してみんな帰りけり
神奈川県 後藤勝久
休みを利用して子供がたくさん遊びにきていたのだと思う。蝉を捕ったり、釣りをしたり、花 火をしたり、それは賑やかだった。それが皆帰ってしまった。今は「捕虫網」だけが残っている。 視点が明確なのが先ず好い。また、「みんな」という口語表現から真実の情感を感じた。
合歓の花煙のやうに日暮れ来る
佐賀 大石ひろ女
巧い作品である。とりわけ「煙のやうに」という比喩が効いている。夏の夕暮れの様子を直感 的にその様に感じたのである。この言葉は、直接には「日暮れ来る」にかかる。それとともに微 妙に「合歓の花」とも響き合って、あの紅色に咲く合歓の花を遠望している様も思われて楽しい。
雑詠-大串章・選
熱帯魚揺り籠のごと藻のゆらぐ
神奈川 長浜よしこ
熱帯魚をとりかこんで藻が揺らいでいる。赤や黄の熱帯魚が緑の藻を楽しむように漂っている。 静かに揺れるもを「揺り籠」のようだと言ったところが一句の眼目。私は先日、東京都葛西臨海 水族館でその有様をありありと見ることができた。
遠青嶺厩舎の馬が見てをりぬ
大阪 中家桂子
牧場か競馬学校か、はるか彼方に青嶺が連なっている。その青嶺を厩舎から馬が眺めている。 青嶺の上には雲の嶺が聳えているかも知れない。厩舎の傍には飼葉桶が積まれ、ときどき調教師 がやって来ては馬に餌をやる。馬の嘶きが聞こえてきそうな穏やかな光景である。
尾道の坂を行き交ふ日傘かな
静岡 内久根眞也
尾道は坂の町として知られる。特に市街地から千光寺へ向かう坂道は有名。その坂道を観光客 の日傘が行き交う。私にとって、尾道は個人的にも懐かしい所。すぐ隣りの福山に住んでいた頃、 志賀直哉が『暗夜行路』を書いた旧居や『浮雲』で有名な林芙美子の母校等をしばしば訪ねた。
雑詠-大牧広・選
病む妻のたたふる紺やなすび漬
神奈川  北川 新
夫婦間の情愛が具体的に詠まれている。おそらくは病む妻に代わって主人が漬けたのであろうな すび漬の紺色を、あえて褒めたのであろう。主人に申し訳ないと思う気持ちが、茄子漬の色を讃え る言葉となった。この表現は、病む妻をいたわる表現ともとれる深い一句。
短夜のコインランドリーの無口
埼玉 猪子洋二
コインランドリーも明るい仕事場に変わっていくらしいが、やはり誰とも口をきかないコイン ランドリーが大半を占めているのであろう。街の一点景として詩的に詠まれている。乾いた声調 が都会の雰囲気をたたえている。「無口」が効いている。
望郷や百合の根掘りし敗戦忌
福島 戸田英一
七十余年前の太平洋戦争で、日本にガソリンが無くて松の根を松根油にするという命令があっ て、松の木が次々に倒された。「百合の根」は、やはり軍用か何かに使われたのだろうか。「望郷」 が意味を深くしている。
雑詠-角川春樹・選
晩年へ十冊撰び曝しけり
福岡 川崎山日子
土用の晴れた日に書物を整理し、風入れをしている景である。掲句の眼目は、上五で「晩年へ」 という時間意識を強く打ち出したところにある。また、「十冊」という数詞もリズムを持ち、潔 い一句となった。
ラジオから東証株価青葉風
徳島 蔵本芙美子
取り合わせのおもしろさが際立った作品である。株式市況を伝えるラジオの音声と、清涼感のある 青葉風を結びつけたところが新鮮である。緑蔭など、屋外の景としても味わえる。
帆は固く巻きつけてあり油照り
新潟 美濃部紘三
油照りとは、空が薄く曇って風がなく、太陽が照りつけて蒸し暑い日である。掲句からは、ヨ ットハーバーの景を思い起こした。「帆は固く巻きつけてあり」という措辞が、油照りの一齣を よく捉えている。
雑詠-岸本マチ子・選
汗を拭く兜太元気に白寿かな
東京 佐藤南北
大正八年九月生まれの金子兜太師は、たしかに今年で白寿。丈夫で元気。何より存在感がある。 あの笑顔に魅了されてしまう。一00歳はまだまだです。汗を拭いて頑張って下さいませ。
シリウスや小野田少尉はかく生きし
神奈川 蒲田保子
小野田少尉の現れた時の衝撃。なんといって良いか、あの凛々しさ。敗残兵の惨めさがみじん もなくて、あの敬礼。戦後、たった一人で戦い生きて来た功し。「かく生きし」が非常に効いて いる。
*つりしのぶ人形町のかんざし屋
高知 平井静江
まず釣忍をかな書きぶしたのがいい。「人形町のかんざし屋」と対比している。江戸情緒が残 るかんざし屋。なんとなく江戸にもどった感じがする。
雑詠-古賀雪江・選
滝落ちて男体山の立ち上がる
京都 除門喜柊
日光火山群の主峰・男体山から噴出した溶岩が川を堰き止めてできたのが華厳の滝であって、 この句の滝は正に華厳の滝であろう。轟々と落ちる梅雨明けの滝、そしてその背に立つ美しい男 体山。一枚の絵を見る様な盛夏の景である。「落ちて」「立ち上がる」に滝の力強さがうかがえる。
真直ぐに水吸ひ上げて蓮の花
大阪 宮尾正信
蓮は、その真直ぐに伸びた長柄が特徴であり、その柄が真直ぐに水を吸って、その先に見事な 花を咲かせるのである。以前琵琶湖での船遊びで象鼻杯を体験した事がある。蓮の広葉に日本酒 を注ぎ、長い茎の先で受け回し呑んだ。確かに真直ぐに喉に届いた。
線香花火ぽとりと闇を戻しけり
東京 山形れん
火をつけると花のように閃光を発散する線香花火であるが、その華やぎは一瞬のものであるの で、人生での一時的ですぐに勢いが無くなるものの譬えになることもある。一瞬の明るさに、ぼ とりとそれが尽きてからの闇は一層に濃いものに思えたことであろう。
雑詠-坂口緑志・選
彫ることは影生む仕事夜の秋
鳥取 石渕さゆり
一読、木彫り彫刻を思い描いた。仏像、動物、植物など、鑿や小刀でひと彫りするごとに、新 しい影が次々と生まれる。彫るという行為が影を作り出す行為だと知った作者の感動がよく伝わ ってくる。秋も近い静かな夜なのであろう。
梅を干し星美しき飛騨の空
岐阜 大野徳次郎
飛騨はその周りを北アルプスなど高い山々に囲まれ、生活圏も標高五百メートル前後の高地で ある。梅は日中は紫外線の強い光に曝され、夜は美しい星の光を浴びるのである。強行の高い 分、近くて美しい星か煌めく飛騨の夜空なのである。
応仁の乱知る面お風入り
兵庫 森山久代
応仁の乱は、足利将軍家の跡目争いが元で、一四六七年から一一年間にわたって、京都を中心 に争われた戦乱である。その頃、あるいはそれ以前にに作られた能面が陰干しされているのだ。応 仁の乱の有様を、聞けるものなら聞いてみたいものである。
雑詠-佐藤麻績・選
斑猫のほどよき距離や早池峰山
埼玉 中久保まり子
班猫は碧緑色の光沢に輝き、斑点がある二センチ程の甲虫だが、人が近づくとさっと数歩先に 飛び、振り返るしぐさをし、又飛ぶので道おしえと親しまれている。その距離の程よさがあって 北上山地の最高峰の霊山である早池峰山へと案内されたとはまさに羨ましいことである。
信貴山の空へ飛びたる早苗束
愛媛 境 公二
信貴山寺は生駒山地にあり「信貴山縁起絵巻」で有名だが、この絵巻は貴賎さまざまな人物 の様子が自在に描かれ実に面白い。この句の様に早苗束が空に飛ぶのも有り得るかと思ってし まう。実に生き生きと詠まれた作品である。
夏立つや梁塵秘抄読みおこし
神奈川 髙野知作
緑も滴るほどの立夏の頃、思い立って今様歌謡集でもある梁塵秘抄を読みおこされたという。 現代の私共にとっても読み進めることが可能であるのは魅力的であろう。何事も思い立っては めることは素晴しいことであり、お心掛けに感じ入るばかり。
雑詠-鈴木しげを・選
帰省して校歌の山に登りたり
大阪 田村昶三
作者が帰省して登った山は何処にあるのだろう。しかしそういう詮索は不要である。校歌にう たわれる山は、その地を代表する山にちがいない。山河をたたえ、そこに学ぶ若者たちに誇りと 勇気を与える。帰ればいつでもあたたかく迎えてくれる母郷の山に作者は登るのである。
ダリア咲く八時十五分黙禱す
長野 山口蒼峰
黙禱をささげる八時十五分となれば、それは広島に原子爆弾が投下された昭和二十年八月六日 午前八時十五分である。作者は真夏日の陽光に咲くダリヤを季語にして、七十二年を経たノーモ ア広島を詠む。決して風化させないために。
門の変の御門に蟬の殻
大阪 小畑晴子
「禁門」は皇居の門のこと。この句は京都御所外郭にある「蛤御門」。元治元年(一八六四年) 七月、長州藩の出兵により京都守護職の幕藩側との戦いがあった御門である。この門柱に蟬の脱 け殻が縋りついている。発見の妙である。主観をあらわさないところに、この句の趣がある。
雑詠-辻桃子・選
出稼ぎに明日発つと言ふ盆踊
奈良 能登つくも
盆踊はもともと盆に迎えた霊を送り返すためのもの。明日出稼ぎに発つと言ったのは踊り手か、 作者と一緒に見物をしている人か。盆を家族や先祖とともに過ごし、盆踊を終え出稼ぎに行くの だ。賑やかな太鼓や囃子や唄や人々のさざめきのなか、明日古里を離れる人の気持が胸に沁みる。
診て貰ふ畑帰りの汗を詫び
鹿児島 内藤美づ枝
作者は持病があるのか、普段から病院通いをしているのだろう。その日は畑の仕事が忙しく、 家に帰って着替えたり汗を流すことができず、そのまま病院に行ったのだ。汗の身を詫びながら いつもの先生と対した。診察室でのやりとりが手に取るように伝わり、何とも臨場感のある句だ。
遠泳や波に隠れて波に浮き
愛知 石井雅之
遠泳の人が波のまにまに見え隠れしている。波が寄せて一瞬姿が見えなくなるが、波の動きに したがって波の上に浮く人が見えてくる。波をやりすごしながら、どこまで泳いで行くのだろう。 葛飾北斎の「富嶽三十六景」中、波の彼方に遠く富士が見える「神奈川沖浪裏」を思い出した。
雑詠-夏石番矢・選
ロボットはいつも裸で気取り屋で
大阪 西田唯士
空想俳句ながら、明るいユーモアと情感に富んでいる。なるほどロボットは裸なのだと読者に 気づかせ、裸にもかかわらず気取り屋とは、つまりは裸の王様か。人工知能の冷たさを感じさせ ない、かわいいロボットが私たちの生活に溶け込む日は来るのだろうか。作者はロマンチスト。
渦潮に夏の望月かぶき照る
鹿児島 押 勇次
海と月だけの光景ながら、日本の活気ある夏の豪快で華麗なスペクタクルを展開している。一 句 の響きも、「かぶき」で勇壮に盛り上がっている。島国の活気ある自然が、日々の暮しに疲れ た者にも元気を注入してくれる。この句を読んで、つい絵筆を持って気ままに描きたくなる。
駅の水誰も飲まない原爆忌
東京 大山清美
爆忌の俳句は掃いて捨てるほど作られているが、記憶に残るものがほとんどないのは、原爆 に対しての思いがパターン化され、浅いから。なぜ駅の水を誰も飲まないのか。ペットボトルの 飲料水が手軽に飲めるからか。人々から見捨てられた駅の水道水に、底知れぬ恐ろしさが潜む。
雑詠-西池冬扇・選
水かくも焦げ臭きかな原爆忌
東京 徳原伸吉
水に焦げ臭さを感じたという。嗅覚は記憶と関係があるので、想像が嗅覚を呼び起こすことの できる人もいるかもしれぬ。水を求め彷徨った被爆者達の心を想像するとき、そのイメージが五 感を喚起するのである。原爆忌という季語は俳句における宝物。詠い続けるべき季語である。
昼寝より覚めて積木の城がある
福岡 髙橋春美
昼寝から覚めたら、そばに積木の城が築かれていた。子供と遊んでいて自分だけ寝てしまった のかも。だが、この句の面白さは「積木」という言葉のもつ象徴性にもありそうだ。「積木」は 積んでも壊れていく、この世の仮構的側面を示していると思えば夢と現実の境が分からなくなる。
星涼し靴の踵の反射材
福井 清水山菜子
現代の典型的な光景。半世紀ほど昔、スウェーデンの友人と散歩中、ズボンから紐についた札 状のモノが落ちそうになっていた。注意したら、昼間も薄暗いので自動車から見えるように蛍光 板をぶら下げているということ。反射材の光は日本でも見慣れた夜景になり、奇妙な美しさがある。
雑詠-原 和子・選
親知らず抜かれて寂し草田男忌
静岡 渡邉春生
人間探求派の一人、中村草田男は第二芸術論への反論に始まり、旺盛に俳句論争を繰り広げた 論客。万緑の季語を生んだ〈万緑の中や吾子の歯生え初むる〉からの発想だろうが、反骨精神の 表れのような「親知らず」が「抜かれて寂し」という詠いぶりには草田男への思いが滲む。
納涼の舞台子方の声とほる
神奈川 松原波月
納涼の舞台とは、夏狂言か、薪能の舞台であろうか。シテ家の子供が演じることの多い子方は、 子供の役ばかりでなく、大人の役もある。本来、シテを際立たせるための演出だが、観客の目は おのずと子方に向かう。子方の朗々たる台詞回しが涼感を呼ぶ。
自由てふ懐かしきもの巴里祭
埼玉 中野博夫
巴里祭は七月十四日。フランスの建国記念日である。パリというだけで心浮き立つのは、ファ ッションや音楽はもとより、自由、平等、友愛を掲げる国への憧れがあるからだろう。自由は青 春期の特権。巴里祭とともに懐かしく思えてくる。
雑詠-山田佳乃・選
蜘蛛の糸机上に光る銀鋏
福島 星野満月
「銀鋏」とは、香道に使われる七つ道具の一つで銀葉鋏かと思う。「蜘蛛の糸」という季題で 机や道具の古さと糸の艶やかな怪しい光をイメージさせて雰囲気と美しさが感じられる。「蜘蛛 の糸」と「銀鋏」という雅な物の持つ力の取合せが非常に効いた一句である。
片蔭に入りたる細き踵かな
北海道 藤原冬人
真夏の昼間、建物や木に添って蔭ができる。夕方にかけて段々と広がって来る片蔭を頼りに人 は行き来するのだが、女性は特に片蔭を選んで歩くのだろう。そんな女性の姿を「細き踵」と省 略を効かせた一言で表現した。どこかほんのりとした艶な雰囲気がある。
昼寝覚また同じ顔洗ひけり
大分 金澤諒和
昼寝のあと、冷たい水で顔を洗いすっきりと目覚めさせるのだろう。洗面所に映る顔は見慣れ たいつもの顔である。当たり前のことであるけれども、少々自分の顔にも飽きてこられたのだろ うか。昼寝では別の人物になっておられたのかもしれない。諧謔味が感じられて、ふと笑える句。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【無】
兼題-大高霧海・選
無抵抗に徹しガンジー眼鏡炎ゆ
愛媛 境 公二
初花や刻の止まりし無言館
東京 井坂 宏
原爆忌そは無慈悲なる世の悪夢
広島 別祖満雄
                                                                                                                                                                                                                                           
兼題-高橋将夫・選
青蔦の縦横無礙に意思走る
東京 田守三里
無作為の作為なりけり釣忍
東京 矢作十志夫
すでに無き星の光も天の川
神奈川 小藤博之
兼題-田島和生・選
無人駅降りてふるさと祭笛
愛知 藤本慈子
じやが芋の花活け無人駅舎かな
静岡 渡邊春生
朝日さす無人スタンド初茄子
東京 川俣由紀
兼題-田中陽・選
涼やかにエロス漲る無言館
千葉 上田久美子
炎昼のゆがみ無音のダリの街
神奈川 大矢恒彦
*無抵抗に徹しガンジーの眼鏡炎ゆ
愛媛 境 公二
兼題-中西夕紀・選
漁火は無月の海を照らしけり
北海道 大阪 博
夕端居ひとつ無聊の燐寸擦る
福岡 河瀬周治
背番号無き少年の夏終わる
大分 金澤諒和
兼題-名和未知男・選
ふる里の無上の水や金魚玉
大阪 竹中幹子
飛魚とんで右に左に無人島
福岡 森田和をん
脇道に逸れゆく無言詣の子
京都 除音喜柊
兼題-能村研三・選
虚無僧は地軸の角度にて涼し
東京 矢作十志夫
風無くばどこに肢措く赤とんぼ
神奈川 大矢知順子
山毛欅林の風無尽蔵ねぶた来る
埼玉 吉澤純枝





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2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月| 1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
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