●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年12月号 ○
特   集
平成俳句検証
平成を代表する句、平成を代表する俳人
特   集
川柳〜この鮮烈なる詩型よ
鶴 彬と時実新子
特別作品50句
長谷川 櫂
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
昼間たつお「原人」
俳句界NOW
栗田やすし「伊吹嶺」
甘口でコンニチハ!
萩谷麻衣子(弁護士)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
間引き菜と言ふ名に束ね朝の市く
愛知 多村昇天
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
ため息の後夕焼を胸いつぱい
神奈川 小藤博之
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
かかるもの最早えらばぬ夜釣りかな
大分 天領杉太朗
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
帰省子を待つバス停の耕耘機
北海道 小野恣流
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
磐井の世恋ふ石人に星流れ
福岡 松尾千代子
筑紫国の造磐井が六世紀前半に北九州で叛乱を起こした。その磐井の墓とされる、福岡県八女 市にある岩戸山古墳から数多の石人・石馬が出土した。その一部が古墳に飾ってあるのであろう。 石人達は今も磐井の世を恋うているようにも見える。天には星が流れている。ロマンのある句。
*その中に流人の裔や牛冷す
千葉 原 瞳子
古代日本の刑の一つに流罪があった。配流地には京からの遠近に従って、遠流・中流・近流 があった。遠流の地は伊豆、安房、常陸、佐渡、隠岐、土佐。この句が作られた千葉県あたりに は遠流に遇った人々の子孫が住んでいるのである。その流人の裔が牛を冷やしているとは面白い。
水瓶に目高眠りし良夜かな
京都 佐々 宙
水瓶は細首の水入れである。その水瓶に目高が入れられている。細い首の瓶でも目高であるか ら入れることが出来たのである。その目高が夜になってすっかり眠り込んでいるのである。窓か ら満月の光が差し込んでいる。美しい良夜の光景である。静かな光景が佳く描かれている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
新涼の旅へ自転車折り畳む
神奈川 安室敏江
戦時々、駅等で実際に見る光景であるが、リュックを背負って颯爽と自転車で駅の改札口の前ま で来た人が、 徐 に乗っていた自転車を小さく折りたたんで手に持ち、プラットホームへ歩いて 行く。見ていて何とも爽やかで、旅の醍醐味が季題を通して見事に伝わってくる句である。
ねむり草ねむらせてゐる幼の手
千葉 原田しずか
含羞草である。子供の頃に教わり、葉をつまむとみるみる凋んでしまうのにいたく興味を覚え、 この葉を見ると悉くつまみまくったことを思い出す。子供の好奇心というのは本当に無垢なもの で、この句からはそんな子供の気持が、詩的な表現を通して見事に見てとれるのである。
阪神の順位九月の甲子園
愛媛 武田正
この稿を認めているのは、我が阪神タイガースが、いよいよクライマックスシリーズ出場を決 めようとしている頃だが、毎年このチームにはファンはやきもきさせられ続けてきた。シリーズ 前半で諦めた年もあったが、最近はこの句のように、九月でも応援出来るチームになったようだ。
雑詠-今瀬剛一・選
六百年の塔の風格蟬時雨
鹿児島 米原淑子
蟬時雨の中に立つ古い塔、その塔を「六百年の塔」と表現して古さを具体的にした。しかも、 折からの蟬時雨。蟬時雨と言うからには辺り一帯に木が生い茂っているということになる。恐ら くその木も古木であろう。塔を視覚的、歴史的にとらえ、それを聴覚の中に置く、好い表現だ。
行く雲を映し残暑の潮溜り
兵庫 塩谷忠正
確かに「残暑」の情景把握である。盛夏なら潮溜りがあったにしても余り意に介すまい。人影 もまばらとなった頃だからこそ潮溜りが眼につくのである。しかも作者はそこに映る雲を見逃さ なかった。そしてそれを「行く雲」という言葉で捉えた。次から次へと映り去る雲なのである。
爽やかや大皿に盛る生野菜
島根 東村まさみ
生き生きとした「生野菜」の彩りまでが感じられる。しかもそれは大きな皿に盛られているの である。私は何となく水に濡れた野菜を思った。皿をあふれる様に盛られているのではないか。 まさに爽やかさそのもの、上五を「や」で切り、下五を名詞で止めて格の高い作品としている。
雑詠-大串章・選
遠泳の密着取材ドローン飛ぶ
鹿児島 内藤美づ枝
競泳には100メートル、1500メートルなど色々あるが遠泳はプールではなく海や湖で長 い距離を泳ぐこと。集団で行う場合が多い。その遠泳をドローンが空撮している。遠隔操作で泳 ぐ人に近づいたり離れたり、様々な場面を映しだす。ドローンならではの「密着取材」である。
猫にもの言ひて秋思を払ひけり
滋賀 井上美代子
秋になると、うら悲しくなったり、寂寥感を感じたりすることがある。一人でいるとますます 深みにはまっていく。そんな時、身近に居る猫に声をかける。猫はニャーと鳴いて近づいて来る。 抱き上げると嬉しそうに顔を寄せてくる。こうして秋のさびしさを遠ざける。
*盆帰省反対車線走りたし
大分  金澤諒和
お盆になると故郷に帰る人が多い。飛行機や列車のチケットを買うのも大変だが、車での帰省 も大変である。帰省ラッシュで高速道路は渋滞が続き、普段の何倍も時間がかかる。一方、反対 車線の方はいつもの通りすいすいと走って行く。まさに「反対車線走りたし」である(笑)。
雑詠-大牧広・選
終戦日社説は九条説きにけり
三重 馬場富子
マスコミ自体が右傾化している現在で、この新聞は、誠実で、まっとうな論議を尽くしている のであろう。人口八割が悲惨な戦争の現実を体験していないという現在、九条の存在は重く大切 にしなければならない。掲句はそのことを訴えている。
帰る子と黙つて歩く土用浪
広島 津田和敏
家へ帰るのか、職場へ休暇が終わって帰るのか、または幼子か不明だが、口数すくなく帰る子 と歩いている。夏も終わって土用浪が海の本性を見せている。印象深い一句である。
遠花火近所付き合ひ徐々に減り
神奈川 前田千恵子
昔のような近所付き合いは明らかに減っている。人間関係が打算に走って「助け合う心」が失 われているからである。遠くの空で花火が、むなしく揚がっている。その花火が闇に落ちてゆく ように人間関係が冷え切っている。
雑詠-角川春樹・選
月白や老ジャズ団の息合はせ
神奈川 尾﨑千代一
月のさやけさは秋に極まる。月白は、月が出ようとして空がほのかに明るくなることをいう。 掲句では、「老ジャズ団の息合はせ」ともってきたのがうまい。運河のほとりなど、これから始 まるジャズライブの賑わいが想像される。
こころ今彼の世の人と涼みけり
群馬 一木久子
暑い夏のひととき、海や山へ出掛けたり、水を打つなどして、涼しさを求める。作者は、思い 出の中に生き続ける故人と会話をすることで、安らぎを得ているのだろう。自己の投影のある佳 吟である。
夜濯や最終便の機灯行く
大阪 今村美沙子
夏の夜の洗濯は、夜風に当たりながら干したり、星を眺めたりする情緒がある。掲句では、「最 終便の機灯」との取合せがいい。これにより、作者の旅への憧憬がさりげなく伝わってくる。
雑詠-岸本マチ子・選
蹴上げたる足の艶めく阿波踊
愛媛 野口寿雄
よほど阿波踊に惚れ込んだ人に違いない。かろやかに蹴上げる様子にただほれぼれとするばか り。その艶やかなこと。ただしなやかな舞姿が目の前に彷彿としてくるばかりなのだ。
鬼灯を一鉢提げて日比谷線
埼玉 坪井一男
鬼灯市で買ったのであろうか、ぶら下げた一鉢が、なんとなく周囲に合わず、ひそかな恥ずか しさと、どうだいといった気のないまぜに、日比谷線を鬼灯色に炎えたたせている。
三陸の海膨らます秋刀魚漁
愛知 安井千佳子
三陸とは、東北地方北東部、陸前、陸中、陸奥の総称。暖流の流れが変って今年のサンマは不 漁だといっていたが、三陸の海を膨らますほどの秋刀魚漁は本当に良かった。
雑詠-古賀雪江・選
送り火に広ごる闇の深さかな
東京 岩男澄美雄
盂蘭盆会、七月十三日の夕方、祖霊を迎える為に各家の戸口で芋殻を焚いて、盆の終り十六日 には、霊を彼岸に送る為に送り火を焚く。この慣わしは身近に亡くした人の為であるので、おの ずと心がこもる。特に送り火の時には一同で門に佇み、闇を見据えて惜しむ様子には情感が漂う。
*その中に流人の裔や牛冷す
千葉 原 瞳子
真夏の太陽の下で働いて汗と埃にまみれた牛を川や沼の水で洗い、疲れを癒してやるのである。 此の節余り見かけない光景だが、後鳥羽上皇が配流された隠岐の島では今も残っているらしい。 隠岐の島の私の句友は、下膨れのおっとりした面差し。配流された高貴な方の末裔かも知れない。
稲の香や窓全開にジャガー行く
千葉 大久保 桂
稲は花が咲くとその香りがあたりに漂う。鑑賞に値する香とは言えないが、順調な生育に花盛 りとなった稲田は、豊かで明るい感じがする。そんな中を真赤なジャガーが走り去った。全開の 窓から楽が流れて。その高級な外車は農道には不似合ではあるが、昨今ではよくある景である。
雑詠-坂口緑志・選
耳許に来て秋蝶のささめける
三重 森下充子
秋の蝶が軽やかに舞い来て、耳に触れんばかりの親しさで作者に影を落し、また緩やかに去っ ていったのであろう。その時作者は、何かをささやかれたかのように感じたのである。ただ何を ささやかれたのかは、杳として解らなかったに違いない。秋の蝶ならではの風趣が感じられる。
秋深む子規の机の膝の孔
東京 立松修治
東京根岸の子規庵に残されている、正岡子規の机である。足を悪くしていた子規が片膝を立て て座れるように、中央やや左に四角い切込みが入っているのだ。そんな子規の机の孔(切込み) にも秋の気配の深まりを思うのである。
大いなる涅槃や明けの阿蘇五岳
長崎 池田幸子
阿蘇五岳は、根子岳、高岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳のほぼ東西に並ぶ標高千三百メートルか ら千六百メートルほどの五岳で、北外輪山の大観峰方面から仰ぐと涅槃像を彷彿とさせる。夜明 けに望む阿蘇五岳の荘厳さは、まさに大いなる涅槃というにふさわしい景観なのだろう。
雑詠-佐藤麻績・選
かざす手に祈りつのらせ風の盆
愛媛 野口寿雄
風の盆は、富山県の八尾町で九月一日から三日間行うが、盆の祖霊を祭る行事であり、風害を 防ぎ豊作を祈る祭りでもある。法被、笠をつけ、笛、太鼓、三味線、胡弓に合わせて町中を踊っ て巡る「おわら節」は祈りを込めて踊られるものである。
人混みのひとつの顔や帰省の子
福岡 岡本鞆子
群衆の中にあっても最愛の子の顔は紛れてわからない事はない。まして離れていて久しぶりの 帰省であれば尚更であろう。その顔をやや離した句として「ひとつの顔」と表現し、更に深い思 いが伝わるようだ。
*盆帰省反対車線走りたし
千葉 夏目当代
盆の帰省には一斉に道路事情が混乱する。渋滞になるとまったく動かないまま数キロ止まった ままである。その精神状態は、まさに反対車線を走って行きたいと思うことも理解できるという ものである。経験した人の強みで詠まれた一句である。
雑詠-鈴木しげを・選
火の朱鳥五十回忌の曼珠沙華
福岡 齊藤宗迪
「火の朱鳥」の五文字に作者の野見山朱鳥への熱い思い入れがある。俳誌「菜殻火」を主宰。 第一句集『曼珠沙華』と火の色のイメージ。代表句に〈火を投げし如くに雲や朴の花〉。まさに、 作者の俳人・朱鳥への思いの凝縮した「火の朱鳥」である。
甌穴に渦巻く水や赤蜻蛉
東京 柴田孤岩
甌穴は激流の岩石面に出来る鍋状のへこみ。流される石によって削られた岩穴である。それら に急流が滑り込み渦をなしている。その渦の上空には赤とんぼがいくつも飛んでいる。澄明な秋 の山川の景を力強く捉えた一句である。中七の「や」切れもよく効いている。
凌霄の花くぐり出づ柩かな
兵庫 前田 忍
のうぜんの花は、百日紅や夾竹桃と並んで真夏日を代表する花。蔓性だから他の庭木などに絡 みついては咲きのぼる。独特の赤橙の花の色は印象的で、これがいっぱいに咲き、いつぱいにこ ぼれる。その花の下を舁かれゆく一柩。「くぐり出づ」の描写は適確である。
雑詠-辻桃子・選
蛇過ぎて草ゆつくりと起き上がる
三重 石田ひでお
草叢で出くわした蛇は身をくねらせ草を踏みしだくように前を過ぎていった。蛇が去ったあと、 草はゆっくりと起き上がった。このわずかの時間の経過の中で、見たことだけを淡々と描写した。 「ゆつくりと起き上がる」が臨場感のある写生で、現実を超えた不気味ささえ漂わせている。
伏せ字本曝して恩師偲びけり
東京 尾形和北
曝しているのは、戦前から戦中に反体制的と判断された書物か。または戦後まもなく、ところ どころに墨を塗って使っていた教科書だろうか。作者にとってその本と恩師のかかわりは深いも のがあったのだろう。伏せ字の本を曝して、作者はしみじみとありし日の恩師を偲んでいる。
紙魚出でて澁澤龍彦食はむとす
香川 妹尾 健
紙魚は雲母虫ともいい、体形が魚に似た八、九ミリの虫。紙や糊を好みなめるように食う。凝 った装幀の単行本か古い集成本か。曝書をしようとして本を取り出したらいたのかもしれない。 紙魚が澁澤龍彦の本に出たことを、澁澤龍彦を食おうとしていると詠んだところが面白い。
雑詠-夏石番矢・選
天の川忘却の河かもしれず
千葉 青木 暉
天の川を巡る想像は様々あり、〈荒海や佐渡に横たふ天の川〉も芭蕉俳句の絶頂を誇る。この 句ではギリシャ神話のレテ=忘却と結びつけた。この河の水を飲むと死者はこの世での記憶を失 う。東洋の三途の川にも通じる。天空に此岸と彼岸を幻視し、その境界を天の川に見た奇想俳句。
満月を黒々と産む川がある
福島 呼吸
〈満月を黒々と産む川があるという〉という投句から、不要な「という」を削る。これまた、 不思議な天空幻想の秀句。この「川」は何だろう。銀河ではない。ブラックホールでもない。作 者の独特の直観がとらえた「川」。「黒々」という表現に作者の深い精神的苦悩の反映が窺える。
翼うしなひ鰯は迷子ずつと迷子
福島 斎藤秀雄
「鰯」の失楽園俳句。むろん、「鰯」は人間、ひいては作者自身を暗示する。天空を自由に駆 け回っていた「鰯」は、いまは大海のなかで、方向感覚を喪失したまま。童謡にも似た甘い口調 に、苦さが隠し味となっている。同時投句〈それぞれの抽斗それぞれの月夜〉も非凡で面白い。
雑詠-西池冬扇・選
自転車がパンクいちめん曼珠沙華
千葉 すみちほ
曼珠沙華の中に自転車の傍で呆然とする人の姿が浮かぶ。俳句文型としてはいわゆる「中間切 れ」と呼ばれる形。上の句は一見状況を示す説明ではあるが、巧みな場面変換の面白さがあり成 功している。独立性の強い二つの句をうまく継ぎ接ぎして新しいイメージを創出した句である。
鰯雲縦十五列横五列
福岡 髙橋春美
人や車等の列ではなく鰯雲のありようを表現しているとみたい。鰯が群れ、しかも絵画のパタ ーンのように整然と列になり泳いでいるイメージを雲に与えられた。まさに鰯雲という感じ。無 機質な数値で表現しても物に即していれば活き活きと有機的な像を読者に想出させる。その好例。
厄介な素数なりけり西瓜切る
神奈川 大矢恒彦
作者は数学者でリーマン予想に関する問題でも考えていたのだろうか、それとも生徒で夏休み の宿題の素数を勉強していたのだろうか。何はともあれ厄介なのは素数、どれ一休み、西瓜でも 切るか、という光景。句材に素数を登場させた面白さに惹かれた。無駄を省いた表現も心地よい。
雑詠-原 和子・選
迎へては送る秋燕橋一
岡山 生田恵祐
秋になると燕は群れをなし、頃合の風を見計らって南へ帰って行く。遥かな距離を渡る燕にと って作者の立つ橋は通過点である。橋上の空を見上げて帰る燕を迎えては送る。一夏ともに過ご した燕を送るのとは一味違う、渡る燕に寄せる情がこの句の見所である。
八月や球児の背に見る故郷
埼玉 中島孝允
八月は全国高校野球大会が開催される月である。負ければ後のない一戦一戦に臨む球児の姿は 律々しく、その一挙手一投足に引き込まれる。殊に郷里の出場校の選手の応援には熱がこもる。 郷土の誇りを背負って戦う球児の背に偲ばれる故郷。帰省の思いが募る。
湖も野も草も語り部風は秋
島根 東村まさみ
語り部は、儀式に際して伝承や伝説を語ることを職とした人々で、出雲地方にも多いという。 秋風の到来とともに風土に刻まれた記憶が呼び覚まされ、風土は語り部と化す。季節の巡りとと もに森羅万象の発する声に耳を澄ませる作者の姿がある。
雑詠-山田佳乃・選
影一つ残し人逝く原爆忌
神奈川 浅見咲香衣
原爆の閃光に一瞬で影だけを残し消えてしまった人。原爆の怖ろしくて悲しい歴史に胸が痛む。 作者も広島の地を訪れて、その場所に立ち心を揺さぶられたのだろう。原爆忌という季題を今詠 むのは難しいと思うけれども、原爆の恐ろしさを強く感じさせる句だった。
西瓜種会話とともに吐き出せり
青森 青田士郎
西瓜の種を吐きながら話をする間柄というのは、身内や非常に親しい間柄だけではないかと思 う。多少お行儀が悪いけれども、縁側で世間話をしながらの西瓜の景がよく見えて来る。「会話 とともに」という省略の効いた措辞が巧みである。
ひまはりの黒々と燃え尽きてをり
兵庫  熊岡俊子
向日葵の花が種を付けて枯れ始めた様子を「燃え尽き」ると表現された。向日葵の燃え盛るよ うな花であればこその表現であり、「黒々と」という措辞でその向日葵の様子がイメージされる。 夏の終りの頃の雰囲気まで感じられる句。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【白】
兼題-大高霧海・選
足ばやに過去の遠のく走馬灯
茨城 羽鳥つねを
継ぎ継ぎや戦時くぐりし亡母の足袋
神奈川 新倉文子
炎天の肥後や足場を組む天守
福岡 森田和をん
兼題-高橋将夫・選
八月の六足す九は十五かな
高知 渚みどり
足並の揃はぬ平和原爆忌
大阪 江島照美
子の息に息ひとつ足す紙風船
鹿児島 川路惠子
兼題-田島和生・選
無造作に脱がれし土間の祭足袋
千葉 前畑桂子
雪しまく駅舎の中の足湯かな
埼玉 知念哲夫
*色足して足して夕焼深まりぬ
京都 名村柚香
兼題-田中陽・選
いくさなき浴衣の足跳ねて踊る
広島 甲 康子
少年の跣足に軍靴迫りをり
奈良 貞許泰治
*海好きの夫の裸足に就いて行く
千葉 すみちほ
兼題-中西夕紀・選
くべ足して浴ぶる火の粉や鵜飼舟
兵庫 大曲富士夫
*海好きの夫の裸足に就いて行く
千葉 すみちほ
手花火の足に弾けてあと退り
青森 青田士郎
兼題-名和未知男・選
一弾で足らぬ死のあり田園忌
静岡 渡邉春生
花さびた足尾にあまた坑夫墓
栃木 中村國司
若衆や汚すが華の祭足袋
神奈川 藤田せつ
兼題-能村研三・選
足でつかむ島の伝説夏休み
鹿児島 内藤美づ枝
*色足して足して夕焼深まりぬ
京都 名村柚香
神輿舁く足袋の小鉤を掛け直し
福岡 奥苑靖子





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