●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2019年4月号 ○
特   集
横山白虹
寺井谷子 横山哲夫 宇多喜代子 村田喜代子 三村純也 ほか
特   集
私の桜
西村和子 千田一路 宮田正和 奥名春江 山西雅子 西山 睦 ほか
特別作品50句
茨木和生
俳句界NOW
堀本裕樹
セレクション結社
「栞」
甘口でコンニチハ!
マブソン青眼(俳人)
私の一冊
田中春生『誓子俳句365日』
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
折井紀衣、長嶺千晶(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
兼題選者
大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)


【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】

※印のついた句は、ダブル特選賞もしくはトリプル特選賞です。


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
武者立ちの皆中に沸く小春風
三重 小原 隆
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
探梅の一花に背筋伸しけり
静岡 渡邉春生
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
老い易くはや人日となりにけり
奈良 宮武孝幸
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
うつし世をうべなふとなく日記買ふ
青森 神保と志ゆき
兼題
選者:大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
今月の兼題…【初】
兼題-大高霧海・選
読初やまづは晶子の反戦歌
東京 徳原伸吉
初日受く人工受精の子を抱きて
三重 椿本格三
初日の出浴びゐる宇宙ステーション
大阪 有松洋子
兼題-岸本マチ子・選
始発バス窓に大きな初日乗せ
青森 田端千鼓
梯子乗り反り身で仰ぐ初御空
三重 堀越 毅
御火焚の初火渡りや及び腰
京都 蒲田晧兵
兼題-高橋将夫・選
初雪や一句に納む静と動
愛知 吉見ひで
初霜や白紙に戻る田や畑
埼玉 田坂泰宏
初蝶やひとり遊びの象の鼻
愛知 吉田順子
兼題-名和未知男・選
たたなはる阿蘇の山々初手水
熊本 加藤いろは
初心いつか忘れてをりぬ翁の忌
茨城 田中ゆず
初御空水のゆたかな里に住み
鹿児島 是枝南草
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
椋鳥の天に網打つごとく飛ぶ
埼玉 山本紀昭
椋鳥のうち、北方で繁殖するものは秋から冬にかけて南方に移る。多くは一年中、農耕地や市 街地に住む。昆虫を食べ、特に稲田の害虫をよく食べるので益鳥である。常に群になって飛び、 やかましく鳴き合う。その群れになって飛ぶ様子を天に網打つようだと表現したところが見事。
青魚酢をもて締める真砂女の忌
島根 布野想夕
鈴木真砂女は銀座の「卯波」の女将として生計を立てながら俳人としても活躍していた。毎月 「卯波」でやっていた句会には私も何年か出席したので懐かしい。青魚を酢で締めることから真 砂女を思い出し、真砂女忌を修したのである。真砂女の姿を彷彿とさせてくれるところが佳い。
跳ぶ構へして挿されゐる鵙の贄
愛媛 稲井夏炉
鵙は昆虫や蛙、蜥蜴、蛇、時には鼠まで捕える。獲物や食べ残しを木の枝や針金の先などに刺 す。この句の贄は蝗か飛蝗あるいは蛙であろう。どれも跳び上がることが得意な虫や動物たちで ある。捕えられた瞬間跳び上がろうとした姿のまま、贄として刺された様子がよく描かれている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
短日や猫には猫の日課あり
島根 東村まさみ
猫という動物は、結構毎日同じ時間に同じ場所に居るようで、公園等では猫が集会をしている ような場面に出くわすこともある。本能といえばそれまでであるが、季節が変わっても、猫の生 態はやはりサイクルがあるのだろう。短日という季題が、人間だけではなく自然界にも及ぶのだ。
寒天を飛び赤道を越えゆけり
東京 小泉昭男
避寒の旅として、寒い冬の日本を発ち、南半球のオーストラリア辺りに行かれたのだろう。現 在では飛行機で一っ飛びである。寒い国から赤道という暑い場所を越え、句の表現はここまでだ が、その先には心地良い避寒宿が迎えてくれる。そんな喜びが明るく伝わってくる句なのである。
数へ日の音無く積もる砂時計
千葉 原 瞳子
年末の押し詰まった時期は体も心も忙しくなってくる。正月の用意等で奔走しておられるのだ ろう。料理のタイマー替りにでも使っているのだろうか。その砂時計を見ると、自分の忙しさと は裏腹にゆっくり砂が積もって行く。何か砂時計に焦るなと諭されているような雰囲気が楽しい。
雑詠-茨木和生一・選
懸鳥の鮭に臭ひのなかりけり
奈良 佐藤哲生
懸鳥を季語としためずらしい句である。懸鳥は春日若宮御祭の補助季語である。「掛鳥」とも 表記されるが、現場では「懸鳥」と書かれている。今では鮭、塩鯛などが掛けられているが、塩 鮭が臭っていない。
初夢に母見失ひ泣きにけり
東京 荒井良明
小学生三、四年生くらいの子供だろうか。初夢を見て泣いて起きて来たのである。泣いている わけを聞いてみると、お母さんがどこかに行ってしまったと言って泣いているのである。
鬼やらふ末は独りになるふたり
高知 山本敏子
ふつう「鬼やらい」は男がやるものだが、この句、家でのことだから、仲良く夫婦で豆をまい て鬼を追い払っている。「末は独りになるふたり」という捉え方がおもしろい。
雑詠-今瀬剛一・選
畳替してわが影の新しき
神奈川 北川 新
新年を迎えるにあたって畳替をしたのである。その新しい畳の上に立った時、「わが影の新しき」 という表現を得た。とりわけ「わが影」という言葉で視点を畳の上に置いているところが巧い。 この表現によって畳は一層眩しく輝き、その眩しさの中に立つ作者の姿までよく感じられる。
遠くまで来て茶の花と出会ひけり
東京 川瀬佳穂
あの白く、小さく、控え目に咲く「茶の花」を見た時の驚きがよく表現されている。「出会ひ けり」という親しみをこめた表現がいい。「遠くまで来て」という表現から受ける距離感も見事 である。この距離感にはどこか解放された明るい空気を感じた。
マラソンの折り返し点風花す
愛媛 野口寿雄
遠くから舞い込んでくる風花だろう。どことなく前方に山の存在を感じた。「折り返し点」が はっきりと見えてくる。「風花す」と大胆に動詞化して言い切っているところがいい。この表現で、 遠くから走ってきて去って行く走者の姿まで見える。力強い内容を骨太い形式が支えている。
雑詠-大串章・選
地上にはイルミネーション冬銀河
徳島 田野利明
冬が来ると彼方此方にイルミネーションが輝く。その幻想的な雰囲気は冬の風物詩といった感 じ。一方、夜空を見上げると銀河がなだらかに流れている。特に冬の銀河は身にしみる美しさ。「イ ルミネーション」と「冬銀河」の取合せが見事な俳句を生んだ。
煤逃やひと駅先の喫茶店
東京 矢作十志夫
煤逃げの行先はさまざま。手元の歳時記を開くと、〈煤逃や峠を越えて海辺まで 松林朝蒼〉〈煤 逃げの蕎麦屋には酒ありにけり 小島健〉〈煤逃げの丸善に買ふ糊ひとつ 伊藤三十四〉などが ある。この句、「ひと駅先の喫茶店」がユニーク。行き付けの喫茶店であろう。
夕飯の献立変へる寒さかな
神奈川 日下光代
昼間は比較的暖かかったが、日暮とともに寒さが厳しくなってきた。そこで急遽献立を変える ことにする。厳しい寒気の中、会社や学校から帰ってくる家族を思い、体の温まる料理をつくる のだ。主婦にはこういう思い遣りもある、ということを教えられた一句。
雑詠-櫂 未知子・選
使はざるボタンうつくし一葉忌
鳥取 石渕さゆり
「ボタン」は、どんどんたまる。いつか使うかもしれないものを、特に女性は溜め込んでゆく。 未使用のボタンのうつくしさを見つつ、極貧のうちに生涯を終えた樋口一葉に思いを馳せたのだ ろう。
はまぐりの一つ開かぬ忘年会
栃木 藤本一城
季語が二つあるように見えるが、メインは「忘年会」。鍋なのだろうか、「一つ」だけ開かぬま まのはまぐりが作者は気になって仕方ない。ある瞬間を切り取ってくれた、俳句らしい発見のあ る句。
セーターの父に休日始まりぬ
兵庫 大谷千秋
何を着るのがいちばん「休日」にふさわしいだろう。作者は「セーター」のあたたかさ、くつ ろいだ雰囲気に父親の休みの気分を見出した。肩に力の入っていないよろしさのある作品である。
雑詠-角川春樹・選
きらきらと𠮟 る母なりななかまど
愛知 藤本三根子
「きらきらと𠮟る母」という表現が新鮮である。紅葉期の公園や散策路の景であろうか。未就 学児ほどの子どもを言葉やさしく𠮟っている母親を思い浮かべた。初々しい光景を、作者独自の 言語感覚で言いとめている。
木枯らしや抱き合ふやうに煙草点く
埼玉 内藤 明
「抱き合ふやうに」という直喩を用いて、手のひらで風よけをつくり、ライターで煙草に着火 する様子を描いている。この措辞が魅力的なのは、煙草を吸う作中人物の孤独感をも表現してい る点である。
鯛焼に羽あり少し焦げてをり
愛知 山口 桃
鯛焼きでは、羽と呼ばれるはみ出し部分がついているものがある。掲句の眼目は、「羽あり」 と言葉をもってきて大きく転換・飛躍すると読者に期待させながら、「焦げてをり」と現実的に 着地したところにある。
雑詠-古賀雪江・選
水底の雲ゆつくりと冬残し
神奈川 髙野知作
冬も尽く頃。時折の白雲の輝きには春を思わせる明るさがあるが、水に映る雲は重々しく微動 だに無い。水面は深く澱んで、いるはずの鯉の姿は見えないが、水底には既に春の精気がこもっ ている。「冬残し」という表現が新鮮である。作者の春を待ち遠しく思っている事も想像できる。
立ちこぎの白き靴下霜の朝
神奈川 矢橋航介
女子高生が想像される。霜の朝、坂道を急いでいるのであろうか、一心に立ち漕ぎをしている。 吐く息も白く荒い。「白い靴下」という言葉の措辞に、自転車を漕ぐ少女の姿が克明に見えて来る。 自転車の籠に放り込まれた鞄や、一心に立ち漕ぎをする少女の健康そうな姿までが想像される。
山眠る薪割る音の弾む村
静岡 長谷川尚美
眠る山ふところであろう。三重県と滋賀県の境の木地師の村が思い出される。移動販売車が運 ぶ日用品で、村の生活は支えられている。深雪に閉ざされる冬に備えて薪割りは大事な作業であ る。四方にして天に抜けたる薪割りの音に、村人は来るべき冬への心構えを整えるのである。
雑詠-佐藤麻績・選
裸木のうれさきまで虚飾なし
愛媛 境 公二
裸木の美しさは、何一つつけていないことである。冬の澄んだ空気の中に、その大気の中に溶 け込んでしまうように存在している。それはもちろん、虚飾など何一つない。厳しい寒さに張り 合うでもなく。静かに、しかも確かにそこにある。
秋めくや読まずとも買ふベストセラー
神奈川 吉田洋和
作者は本好きなのである。若い時から、よく読書してきたのである。書肆にすぐ立ち寄る習慣 があった。そして気ままに本の中を楽しんで廻り、気に入った一冊を買う。故にあまり読まなく なった今も、ベストセラーと知ると先ず買うのであろう。
撫で牛やいよよ増す艶梅ふふむ
滋賀 船岡房公
素焼きなどで伏した牛の姿を作り撫でると吉事があるとしたものである。よく撫でられれば艶 が増していくのは当然である。私は湯島天神の撫で牛に何度か会っているが、梅の名所で学問の 神の天神様には梅の頃によく訪ねる。この光景はお馴染みなのである。牛は実に艶やかであった。
雑詠-鈴木しげを・選
捨てし句の数ほどとんで綿虫は
熊本 加藤いろは
作者は句作歴相当のベテランとお見受けするのでこれまで何千という句が反古になったことだ ろう。その捨て去った句数ほど綿虫が湧くが如くに飛んでいる。綿虫も句もはかないものである。 しかし、俳句は多作多捨によって上達することを作者は知っているのである。
雪の磐梯英世の母のカナの文
神奈川 久里枕流
会津磐梯山の麓の猪苗代湖に野口英世の生家が遺されている。そこに英世の母の手紙があった と記憶する。囲炉裏の灰で文字を習った母シカのわが子英世に寄せる手紙はせつせつと胸を打つ。 「はやくかえってくだされ」。雪の故郷の山が目に迫る。
近ごろは近ごろの芋焼いてをり
神奈川 新村草仙
焼き芋といえども進化している。よりよい焼き芋のためにサツマイモの品種の改良がなされて いるわけだろう。「近ごろは近ごろの」という所以である。そのうち焼き芋もブランド化して駅 前でたやすく買えなくなるかも知れない。古新聞に包んでくれた焼き芋がなつかしい。
雑詠-田島和生・選
みどり児の米つぶ程の初涙
愛知 安井千佳子
初冬の穏やかな日、山の畑で大根の収穫を始めたが、大事な大根が食い荒らされている。猪な どのしわざに違いない。裏山の草木が倒れ、獣道も出来ている。山が荒れ、餌が少なくなったた めなのだが、「裏山に獣道あり」とずばりと表現し、現代風景を鮮やかに描いている。
畳替してわが影の新しき
神奈川 北川 新
正月を前に、古びて縁も擦り切れた畳表を新しく取り替える。見違えるように藺草が青々とか ぐわしく匂う畳の上に立てば、まるで自分の影までが新しくなったみたいである。気持の良さを 「わが影の新しき」とずばりと詠み、大変妙味豊かな作である。
寒鰤を関の孫六研いで待つ
富山 清原洋子
関の孫六といえば、美濃の刀工による切れ味のいい刃物を代表する。脂がのっておいしい寒鰤 がまもなく届くため、関の孫六の包丁を研ぎあげる。切れ味のいい包丁で下した寒鰤はさぞやお いしいに違いない。読み手を羨ましがらせるような楽しい作である。
雑詠-辻 桃子・選
乞はるれば酒造歌冬座敷
福岡 市川武子
冬座敷での改まった宴会の席だ。乞われて酒造歌を歌うのは造り酒屋の年輩の杜氏だろうか。 酒造歌は、桶洗い、米洗い、醪仕込みなど酒造りの各工程にあり、杜氏が声をあわせて歌う。こ の宴会の杜氏も興が乗ればこの歌が出るのだ。「乞はるれば」がこの場の雰囲気をよくとらえた。
椋鳥の天に網打つごとく飛ぶ
埼玉 山本紀昭
椋鳥が大群をなしてたちまち空の一角に広がった。それが天に網を打ったかのようだという。 一斉に飛び立ち、黒々と空に広がる椋鳥のさまを詠んで、「天網恢恢てんもうかいかい 疎にして漏らさず(天の網は粗いようだが決して悪人を逃すことはない)」という老子の言葉まで想起させる深い句だ。
銃弾の欠片埋もれ薬喰
福岡 森田寿美子
薬喰いは滋養のため、鹿、猪、兎などの肉を食べること。昔の日本の文化だが、近年になって ジビエ料理が注目されるようになった。狩で捕った肉に猟銃の弾の欠片が埋まっていた。弾の入 った肉に当たった人は運が良いとされる。自慢話などを交わしながら鍋をつつく姿が愉快だ。
雑詠-夏石番矢・選
霜きらら明星きらら一万歩
千葉 三枝青雲
早朝散歩、あるいは未明の散歩を、三つの名詞「霜」「明星」「歩」と、同じオノマトペ「きら ら」の繰り返しで詠んだ読後感のすっきりした秀句。散歩は単なる軽い運動ではない。心身の浄 化をもたらす。「一万」という数も、この世からの超越へと導く。だが、やがて平凡な朝に。
じやんけんで決まる平和や聖菓切る
宮崎 萩原郁美
一見、クリスマスケーキの取り分を「じやんけん」でなごやかに決定した小市民的な生活を詠 んだ俳句のように見える。いや、俳句という短詩のすごさは、さらに別の深読みを可能にする。 世界の「平和」も戦争も特定の人たちが、気まぐれで決めているのだと。陰謀論俳句。
百年を生きてやうやく蜜蜂に
宮城 ましろなぎさ
私は実は人間ではない。なんなのだろうか。蟻か、ゴキブリか、トンボか。どれだけの年月が 過ぎたか、それもわからない。せわしなく背中の羽根が動き、空中を飛び、穴へと吸い込まれ、 顔を粉まみれにして、甘い液を口に含んで穴から離れる。私はそういう生き物らしい。
雑詠-行方克巳・選
リハビリの歩幅大きく石蕗の花
長野 木内博一
もうだいぶ病状も快方に向かってきて、日々の散歩の距離も伸びてきたようです。手をしっか りと握って一歩一歩の歩幅も大きく歩けるようになってきた、そういう喜びが伝わってきますね。 石蕗の花の輝くような黄色が、作者の心の弾みを象徴するかのようです。
着膨れてゼロ番線に始発待つ
千葉 杉野和正
ゼロ番線のホームがある駅といったら、上野駅のような古い大きな駅を想い起こしますね。作 者はそのゼロ番線ホームに始発列車を待っているという。ドラマティックな何かを感じますね。 いかにも寒々とした雰囲気が伝わってきます。着膨れという季語がよく生かされた句作りです。
気難しい人でなさそうおでん酒
埼玉 日下尚子
それまであまり親しくつき合ったことのない人と話をしなければいけないことがあったのでし ょう。はじめは取っ付き難そうな男と思っていたのが、少し酒が入ってくると存外に優しく、お もしろい人物だった。そのうちにおでんの辛子が効き過ぎて涙ぐんだりしたのかも知れませんね。
雑詠-西池冬扇・選
寒卵届けむ火星大接近
東京 工藤順子
中七の途中で切れた二句でパッチワークのモチーフのように二つのイメージが並立している。 俳句としてこの表出法をどのように評価していくべきかが分かれ目。大接近して輝く火星の空を 背景に一人夜道を歩く人、それも誰かに寒卵を届けようとしている人の思いを感じられたら成功。
万物の中に海鼠と生まれたる
広島 津田和敏
輪廻転生は、何に生まれ変わるか判らないところがミソ。万物ある中でも、よりによって海鼠 と生まれてきてしまった。海鼠は自由に動き回るのにはどうするのだろう。嘆いていては他の海 鼠さんが気を悪くするだろう。想像していたら、ぶるぶる寒さを感じてしまったというような句。
半分に切りても長き干菜かな
徳島 大西裕子
大根や蕪の葉を干して保存し、みそ汁の具や漬物にする。干した葉が冬の季語「干菜」である。 軒などに干してあるのをみると結構長い。この句は干菜の長さを讃えて明快だ。俎板で半分にし てもまだはみ出た、とでもいうのだろうか。新鮮ですなおな驚きに生きている楽しさを感じる。
雑詠-能村研三・選
連凧のうねりへ風の笛太鼓
鹿児島 内藤美づ枝
凧揚げはお正月の風物詩の一つ。小さな凧をいくつも連ねて揚げる連凧の長々と大空に高く舞 う姿は圧巻である。風の強さや勢いをかりて揚げるので、そのうなりようも見事で、時には風に うなる音も聞こえてくる。その音を作者は「風の笛太鼓」という賑やかな表現でとらえた。
愛日や玉虫色の鳩の首
千葉 原 瞳子
冬の陽だまりに公園には鳩が餌を啄んでいる。よく観察してみると首から胸にかけて玉虫色に 光ってみえることがある。これは構造色といって、それ自身には色がついていないがその微細な 構造で光が色づいてみえる。平和の象徴としての鳩が帯びる色としてなんとも美しい色である。
楽器ケース背負ふ少女やクリスマス
茨城 西村順子
よく町で、肩に楽器ケースを背負った人を見かける。少年少女のアマチュアオーケストラが演 奏するクリスマスコンサートであろうか。ケースの大きさや形から、あの人はバイオリンだとか、 管楽器なのかいろいろと想像するのも楽しい。これから演奏会に向かう少女の眸は輝いていた。
雑詠-山尾玉藻・選
遠くまで来て茶の花に出会ひけり
東京 川瀬佳穂
白い小さな「茶の花」は人目をひきませんが、生垣に咲くような案外身近な花です。遠出した 作者は改めて茶の花と教わったのでしょうか、それともこれならいつも眺めていた花だと気づい たのでしょうか。いずれにしても温かな思いとなったことでしょう。
おもしろき話も包む焼藷屋
大阪 富田栄子
「焼藷」は昔は新聞紙、今は厚紙に包んで売られますが、いずれも包まれると賑やかな音を立 てます。この「焼藷屋」は何か面白い話をしつつ焼藷を包んだのでしょうが、「おもしろき話も 包む」で紙より伝わる焼藷のぬくぬく感がいや増すようです。
衝動買ひのポインセチアと一つ影
千葉 夏目当代
クリスマス近くになると花舗に必ずポインセチアが並び、その明るい紅色が目を引きます。そ の点で、作者が「衝動買ひ」をしたのもいかにももっともだと頷け、「ポインセチアと一つ影」 の表現で大事そうに花鉢を抱える作者も想像されます。





2019年| 4月3月2月1月
2018年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2017年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2010年| 12月11月10月9月8月7月6月
定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,200円(税込)
半年間 6,500円(700円お得)
1年間 12,500円(1,900円お得)
2年間 24,000円(4,800円お得)
定期購読は送料サービス

※定期購読割引は、直接小社にお申し込み戴いたお客様に限り、適用されます。その際、ホームページでお知りになった事をお伝えください。

※購読期間中に特別価格号が出た場合、 差額は当社で負担致します

・ご質問やご不明な点がございましたら、フリーダイヤル  0120-819-575、または、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。


北斗賞
山本健吉評論賞