| ■ 平成俳人群像 |
「無常」
永田自然 |
八十歳ともなると、否応なく
死と向かい合わざるを得ない年齢である。
生の側からばかり見ていた死を、
こんどは死の側から生を見ることの訓練を
しなければならないのではないかと
思っている。
(「あとがき」より)
|
|
| ■ 文學の森俳句作家選集 |
「花八手」
中里二庵 |
二庵さんは育てることの名人。
生徒も果樹も鈴虫も・・・。
釣りも盆栽も踊りも、達人の域にあろう。
万般をらくらくとこなして
人生を楽しむの境にある。
『樽太鼓』につぐ第二句集『花八手』には
快活な生活がある。愛がある。
暖かい真情を通した写生句は、
諷詠製に富み、発想・視点の新鮮さも格別。
その個性豊かな表現と俳趣が尊ばれる。
「浮野」主宰 落合水尾 |
|
| ■ 文學の森俳句作家選集 |
「箱舟」
辻原晩夏 |
地球てふノアの箱舟銀河濃し
ノアの箱舟のいわくを通した
世界平和の願いが込められている。
この神話を反芻するとき、
この句集名の重さが心に響く。
地球上の乱れを思うとき、
信仰の願望から生まれ、
救世の思いがこめられた一句で
大きなロマンが感じとれる。
大岳水一路 |
|
|
| ■ オリジナル句集 |

「花菜風」
畑佳与 |
曲がる川に沿ふ道のあり花菜風
曲がれば沿う、当然まっすぐであればそれにも沿う。無理のない歩み方は、これまでの人生に幸せを与え、これからの人生に豊かさを与えてくれる。
この風景が、花菜風である。
豊田都峰(「序」より)
|
| |
「花まんだら」
松本歌子 |
自然諷詠が身上であるが、
その平明で穏やかな情景描写には
定評がある。
意識的に作られたものではなくて、
まさに著者のお人柄にも通ずる。
栢尾さく子(「序にかえて」より)
|

「蒲公英」
磯部時枝 |
祝ぎのあり畳紙(たとうし)ひらく春はじめ
現世の寡黙にあらず雪山河
豊田都峰先生に選して頂いた句です。
これまでの俳句を心しずかに自選しておりますと、走馬燈のように当時の景色や心情が浮かんできて心の昂ぶりが蘇ってまいります。
「あとがき」より
|
|

「津軽釜」
石口りんご
|
桜餅ずっと好きです女です
初心の句としては
抜群の秀句であると同時に、
句集を象徴している句とも思える。
「ずっと女」、
それが、りんごさんなのだ。
松田ひろむ
(「序にかえて」より)
|

「渋海川」
石口 榮 |
この句集を還暦、定年の記念と考えられたわけだが、個人の記念としては、内容的にも最上の句集と考えられる。
団塊世代の
希望の星としての
期待がふくらむ
松田ひろむ
(「序にかえて」より)
|
|

「行者道」
門石 寛 |
この作者の作句態度は吟行による作句であり、物を凝視した結果の作品が『行者道』に収録されている。一途に信ずる道を歩むことに迷いのないことは俳句に対する作者の素直な性格でもある。
・・・小路紫峽 (「序」より)
|
|

「未哭微笑」
磯貝碧蹄 |
道なき道に霍乱をした
軍馬を連れてゆく
それ以来の生死一如の
明界を歩む。
全身表現者としての
肉体と精神の律動を
自己の胸奥の鏡に映す。
その三六四句。
|
| |
「星月夜」
小山陽子 |
西行も翁も飲みし苔清水
小山さんは作句のこころ遣いがこまやかにして豊かである。この句集の刊行をこころより喜びたい。
森 澄雄
|

「双炎」
大原祥督 |
明日あるを信じてマフラー二重にす
祥督さんの俳句人生は淡々として奥が深く、滔々と流れる水のように清らかである。
和田照海(「跋」より)
|
|

「にんげん」
井上康秋
|
花冷えやにんげん殺してはならぬ
井上さんは、闘う人である。
個を圧するものを峻拒し、まつろわぬひとりとしての自恃が、句を生む。
その句に、雪がふる。
手袋を脱ぎうつくしきフルネーム
雪にぬれた重い外套を脱ぎ、にんげんの吐息にふれるとき、香り立つエロス。その香気が、この句集には、ある。
|

「山の樹」
花岡 啓 |
山の樹の弾みてゐたり春の雪
ことばのバランスがとれたいい句である。春になってもう密かな芽吹きが始まっているのであろう。雪を冠った山の木が新しい季節を迎えて浮き浮きしているという。これからどっと春になる。その呼び出しのような春の雪。早春は誰もが期待に胸がふくらむ時であるが、歳をとるといっそう一年一年の春がいとしい。自然が際立って美しく見える。『山の樹』は滋味深い句集として愛読されよう。
宮坂静生
|
|

「三光鳥」
福山理正 |
本堂からお庭に歩をすすめたそのとき、ツキ・ヒ・ホシ、という三光鳥の澄んだ声がきこえ、私たちはおもわず空を仰ぎました。三光鳥の声は、まさに弥勒菩薩の励ましのようにきこえ、句集名を『三光鳥』と決めました。
・・・ 「あとがき」より
|
|

「白い秋」
吉岡登美子 |
白い秋もしも時計が止るなら
登美子俳句は多才であるが、その中核をなすものは「白い秋」に象徴される繊細にして純粋な感性であろう。
小橋柳絮(「序」より)
|
|
|
|
| ※漢字が表示できないものに関しては、別の漢字・かなを引用している場合があります。 |
|