新刊情報

秋の蜂

【平成俳人叢書】
句集/秋の蜂
著者/川崎益太郎
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

漂泊の表面張力すすき原

「漂泊の表面張力」という捉え方が魅力的で、「漂泊」という語義を詮索し始めると詰まらなくなりそうだ。風に揺れているような揺れていないような、芒原の広い広がりが見えてくる。その頼りげな広がりの感触を「漂泊の表面張力」と言う。陽光まで感じる。人っ子一人いない。

金子兜太
恋のぶぎぶぎ

【平成俳人叢書】
句集/恋のぶぎぶぎ
著者/川崎千鶴子
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

まんげつの終着駅の海鼠かな

作者の受け取った風景を内面化している句。駅の人間の動きとか置かれているものを総合して、駅全体の印象が海鼠のようだと受け取ったのだと思う。満月に照らされているうらさびしいあまり大きくない駅の風景が見える。譬えというよりも終着駅の風景を感覚しているといった句。

金子兜太
坂の家

【オリジナル句集】
句集/坂の家
著者/松田徳枝
判型/四六判上製/カバー装
価格/2667円(税抜き)

坂の家はるか高きに盆の月

徳枝さんの俳句は、住む坂の家の周辺と生まれ育った最上川の二つを核に、そのきっぱりと言い切る美学で、佳句を詠み継いできている。

松尾隆信
大津

【オリジナル句集】
句集/大津
著者/鈴木弥生子
判型/四六判並製/カバー装
価格/2200円(税抜き)

とほき日の大津が匂ふ初諸子

著者・鈴木弥生子さんは、いつも物静かで心優しい方ながら、内に湛えている詩情は深い。清らかで艶やかなリリシズムに加えて、時に思念的な作風も見せて、ますます新たな句境が拓きつつある。大津は、若い頃、住まわれていた懐かしい地で、折りに触れ、ふと回帰の情が湧くらしい。句集名の所以である。

波戸岡 旭
杖一本

【オリジナル句集】
句集/杖一本
著者/下田千里
判型/四六判上製/カバー装
価格/私家版円(税抜き)

悴みて杖一本に身を托す

俳句は十七音の有季定型の短詩で、自然、人間の生活などを一句に全てを詠みとることはできないが、自然と人間との関わり合いを一句一句詠みつづけ、その累積の中に、そのうえ齢を重ねることにより、作者の心情や人物像が浮かび上がってくる。千里さんの句集『杖一本』を詠み終えて私はその想いを深くした。

小倉英男
青葉木菟

【俳句ライブラリー】
句集/青葉木菟
著者/細井紫幸
判型/四六判並製/カバー装
価格/2095円(税抜き)

山の端の太白星や青葉木菟

俳人には「人事句」が得意な人、「叙景・自然詠」が得意な人がいます。紫幸さんは、どちらかと言えば「人事句派」ですが、自然詠にも良い句が多く、バランスのとれた俳人と言えましょう。しかも自然を詠まれても、自分の行動などを詠み込まれることが多く、ご自分に引き付けた自然詠がお得意です。

名和未知男