●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2018年12月号 ○
特   集
美しい国日本と俳句
●座談会 有馬朗人 大輪靖宏 井上弘美 ●恩田侑布子 ほか
特   集
われら20代俳人
24名の競詠、一挙掲載!
俳句界NOW
安西 篤
セレクション結社
「鴫」髙橋道子
私の一冊
三村純也『石魂』
俳人訪問
落合水尾
特別作品50句
坪内稔典
甘口でコンニチハ!
本城雅人(作家)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
折井紀衣、長嶺千晶(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
兼題選者
大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
銅鐸の線刻トンボ弥生人
福岡 後藤啓之
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
風鈴に届かぬ風の過ぎにけり
栃木 森 加名恵
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
芝刈り機今日の仕事は土手二キロ
埼玉 佐久間清観
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
父の背に負はれ火の海敗戦忌
栃木 三浦昌子
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
打つ音の良き谺あり走り蕎麦
大阪 小畑晴子
まだ十分に熟さない蕎麦を早い時期に刈って粉を作る。それが走り蕎麦である。蕎麦粉はつな ぎとして小麦粉や鶏卵などを入れ、水でこね、薄く伸ばして細切りにする。それを手で行うとき 打ったり切ったりする音がする。その音がする程の勢いがあるところが走り蕎麦らしい。
聖鐘の静かにつよし長崎忌
長崎 岩本千鶴子
一九四五年八月六日には広島、九日には長崎に原子爆弾が投下され、何十万人もの市民が亡く なった。長崎には多くの教会がある。長崎に原爆が投下された時刻に、静かではあるが強く聖鐘 が鳴り響くのである。それは死者の魂を慰めると同時に原爆投下に厳しく抗議しているのである。
足利学校襟を正して曝書せり
栃木 山口 勝
足利学校は中世に下野国足利荘(栃木県足利市)に建てられた学校である。漢学の研究や教育 が行われた。儒学の礼節も教えた学校であるから、曝書も厳かに行われるのである。「襟を正して」 と表現したところが佳い。曝書している人々が作法正しく振る舞う様子が佳く描かれている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
夏座敷堂堂と這ふ蒙古斑
福岡 永田寿美香
○這い這いがやっと出来るようになって嬉しくて仕方のない赤ん坊が、座敷を嬉々として這い回 っている姿が見て取れる。しかも恐らく裸なのである。可愛いお尻には蒙古斑がくっきりと見え ている。涼し気な夏座敷ならではの光景が目の前に繰り広げられ、読者も涼しさを感じるだろう。
手土産の改札通る帰省かな
兵庫 大谷千秋
久しぶりの帰省なのだろうか、家族は勿論暫く会っていない友人、知人の為にも土産を一杯買 い込んだのだろう。最近では宅配などで送る手段もあるが、やはり自ら会ってそれぞれに土産を 手渡して旧交を温め合うのがベストなのだ。帰省という季題の明るく楽しい気持が伝わってくる。
わけあつて今世は蟬に生まれけり
兵庫 国代鶏侍
数年前に、あるドラマで人間が死んで蟬に生まれ変わるというストーリーを実際見たことがあ る。輪廻転生という不思議な考え方を信じるか信じないかは別にして、何か諧謔味を感じる句で ある。前世はこの蟬は人間であったのか。どんなわけがあったのか。想像すると更に面白味が増す。
雑詠-茨木和生一・選
自動車を止めて黙禱原爆忌
兵庫 山尾カツヨ
自動車での出勤途上かも知れない。広島での平和記念式典の時間に合わせて、自動車を止めて 外に出て黙禱をしたのである。この日を忘れてはならぬ日とするために、残しておきたい作品で ある。
死に顔は寝顔とちがふ合歓の花
千葉 岡田春人
当然のこととはいえ、眠っているような顔であっても死者の顔と生きている者の顔は違ってい る。こんな場面を詠んだ句はこれまでに目にしたことはない。季語の合歓の花は自ずと出て来た のである。
御車代別に包めと生身魂
大分 武内政行
日常の暮しの中であれこれと細やかなことに気の付くお方である。この方には御車代を別に包 んで帰ってもらうんやで、などと心遣いがじつに細やかである。こんな生身魂様がおられて、こ の家は安泰である。
雑詠-今瀬剛一・選
開く音しさうな蓮に近寄りぬ
静岡 阿久津明子
あの大きな蓮の花が咲く寸前の様をよく捉えている。遠くまで広がる蓮田。作者はそこに一つ の蕾を見つけ、そのはち切れそうな様を直感的に「音しさうな」と捉えた。危うさのよく感じら れる見事な表現だと思う。作者は静かに、静かにその蓮の蕾に歩み寄っていったに違いない。
蜻蛉の風乗り換へて飛び去れり
新潟 阿部鯉昇
対象の真実をよく捉えている。私は鬼やんまの様な大きな蜻蛉を思った。真っ直ぐに飛んでき てふいと高みに上がり、また飛び続ける、この作品の「風乗り換へて」という表現はその実態を よく捉えている。「飛び去れり」と素直に言い切っている表現も潔い。
青々と雨に濡れゐる茅の輪かな
福岡 紙田幻草
雨の中の、それも作ったばかりの茅の輪であろう、この作品はその存在を確かに捉えている。 「青々と」という表現が存在を明確にしている。それは雨に洗われた「青」。本来の藁の色なので ある。雨は強い雨ではあるまい。そのことは「濡れゐる」という静かな表現からも感じ取れる
雑詠-大串章・選
折鶴に八月の息吹き込めり
神奈川 堀尾笑王
「八月の息」には平和を願う思いが籠っている。昭和二十年八月六日に広島、九日に長崎へ原 子爆弾が投下され、八月十五日にはポツダム宣言を受諾し敗戦国となった。八月は戦争の悲惨を 思い出させ、平和の大切さを再確認させる月なのだ。再び戦争をしてはならない。
瓦礫のなかの花束ひかる天の川
大阪 竹中幹子
瓦礫の中に花束が光っている。豪雨による土砂崩れの犠牲者に捧げられた花束であろう。七月 の西日本豪雨では約二百三十人の犠牲者が出たが、九月の北海道地震では厚真町で三十六人の犠 牲者が出た。掲句を読んで私は、土砂崩れの現場に花束を供える写真(朝日新聞)を思い出した。
父祖の地ぞ祭太鼓を打ちにけり
長野 宮嶋良光
「父祖の地ぞ」が力強い。父祖伝来の地で祭太鼓を叩いているのだ。その祭太鼓も祖父から父 へ、父から子へと受け継がれて来たのかもしれない。高らかに鳴りひびく太鼓の音が聞こえ、太 鼓を打つ人の額の汗も見えてくる。郷土愛みなぎる豪快な一句である。
雑詠-櫂 未知子・選
河童忌のぼんやりとある帽子かな
東京 御戸貴史
「河童忌」は芥川龍之介の忌日。芥川は自死の理由をぼんやりした不安ゆえとした。そういっ た事情を「帽子」というものに託した巧みさが、この句にはある。さりげなく、しかし、かなり うまい。
星合や互ひに水尾を消し合ひて
岐阜 大井公夫
「星合」は年に一度の牽牛と織女の逢瀬である。一度交わった「水尾」が、逢ったがゆえに「消 し合」ってしまうという、これはなかなか切ない作品。「合」の字を二度用いた点も心憎い。
弟に母をゆづりて鳳仙花
福岡 春野ゆき
兄か姉かは定かではないが、とにかく年長者が「母」を譲る。そこには「弟」への愛情と共に、 説明のできぬ寂しさがある。どこか懐かしい季語を配したことも、この句を忘れがたいものにし た。
雑詠-角川春樹・選
英人ウルフ氏逢へば破顔の生身魂
兵庫 松林孝夫
一読して、〈露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す 西東三鬼〉を思い起こした。「英人ウルフ氏」 という字余りに音の急迫があり、「生身魂」により緊張が弛緩する。固有名詞が効いた作品。
木葉木菟抱きしめるべき人はるか
神奈川 沼田樹声
木葉木菟は、鳴き声が「仏・法・僧」と聞こえることから、「声の仏法僧」と呼ばれる。掲句 では、その鳴き声を踏まえつつ、己の心情を述べている。「抱きしめるべき人はるか」とは、故 人を偲んでの絶唱であろう。
打つ音の良き谺あり走り蕎麦
大阪 小畑晴子
食べ物の俳句は、読者に幸福感をもたらすことがある。掲句の走り蕎麦は、人里を離れた山間 の蕎麦屋の立地を想起させる。名人の打つ蕎麦は、「」が違うという。「」は「木霊」へと連 想が広がり、清流を生む一山河を思わせる。
雑詠-古賀雪江・選
花火師の闇よりも濃き影法師
北海道 小野恣流
火薬をさまざまに配合し、木筒または竹筒につめて火薬に火を点じて爆発させ興ずる花火は、 その絢爛たる色彩で人々を魅了する。昨今の仕掛け花火はその進化が著しく、見事なものである。 そしてそれを巧みに操る花火師は黒装束で、一切を闇の中で行う。正に闇よりも濃い動きである。
水底に影のおちつく桐一葉
兵庫 井上徳一郎
秋の初め、風も吹かないのに大きな桐の葉がふわりと散ることがある。これを「桐一葉」や「一 葉」と詠む。これを見て「あ、秋なんだ」と思ったりするものである。「影のおちつく」の措辞 に一葉が池の底の一部となっている事が思われ、秋も深まっている、季節の運行のさまが見える。
今朝秋の旅の枕を裏返す
佐賀 大石ひろ女
秋の初めのころ、暑さはまだ残っているが、いつとなく涼しくなっていて、人はふとした時に それを思うものである。作者は旅先でそれを殊更に思ったのである。「旅の枕を裏返す」という、 旅にあって一層に感じた新秋への何気ない動作は、作者の繊細な感性をも感じさせる。
雑詠-佐藤麻績・選
千羽鶴大夕焼へ放ちけり
大分 後藤南女
紙を小さく折って作る千羽鶴、その千羽には一羽ずつ折りが込められている。例えば原爆忌に 供えられる千羽は深い祈りを負った千羽なのだ。その折鶴はまっ赤に染まって広々とした夕焼け 空に向かって放たれたのである。
妻旅へ翼のごとき夏帽子
佐賀 萩原豊彦
日頃は旅に出ることはあまり多くはない妻。そのため旅を待つ気持は楽しい期待で溢れている。 それは旅ごころを豊かにしていくようだ。帽子は妻の心そのままに旅の空へ飛んでいるらしく、 翼のように見えるのだ。
揚花火湖上に浮かぶ万華鏡
島根 東村まさみ
打ち上げられる花火は、花火師の夢そのままの美しさである。おどろくほどさまざまな形や色 で、つぎつぎと出現する。まさに夢中になってしまう。ふと気づくと湖の上に映って落ちる様子 は万華鏡そのものではないかとの思いに至ったのである。
雑詠-鈴木しげを・選
したたりてしたたりて揚花火かな
福岡 菅野奈都子
夜空を絢爛と彩る打揚げ花火の美しさは見事である。つぎつぎに息つくひまもなく打ち上げら れる大輪の花は、圧巻であると同時に一瞬にして消え去るはかなさをもっている。そうした花火 の風情を「したたりてしたたりて」の表現で巧みに描き出した作である。
落し文僧に掃かれてしまひけり
奈良 佐藤文俊
体長一センチ程の小昆虫。櫟や楢の葉を丸めた中に産卵して地に落とすという。これがいかに も巻き手紙のように見えるので「落し文」。掲句は寺の境内であろうか。作務衣の僧の高箒によ っていとも簡単に掃かれてしまったという。「僧に掃かれて」がなんともいい。
竹生島引き寄す如く投網打つ
兵庫 藤井留里美
竹生島は琵琶湖の北部にある島。湖にはさまざまな魚が生息している。琵琶湖では魞簀を立て てこれらの魚をとる漁法がさかんなようだ。簀に追い込んだ魚は網でとるのだろうが、掲句はこ れとは別に投網漁をしているのだ。「竹生島引き寄す如く」の比喩が力強くまた的確である。
雑詠-田島和生・選
いとし子を胎に育む大暑かな
福岡 有田真理子
大暑は二十四節気の一つ。七月二十三日頃だが、猛暑の頃とみていい。かわいい赤子が今、胎 内に育ち、やがて誕生する。大きなお腹を抱え、大暑で汗を拭いながら、どんな子だろうかと想 像する。生まれる前から「いとし子」と思う優しい気持が素晴しい。大暑の季語も効いている。
英霊の通りたる道稲の花
青森 福士信平
太平洋戦争の戦死者はおびただしい数に上る。村の若者たちにも召集令状が届き、その多くが 死に英霊と呼ばれた。英霊の中には稲の花が咲く頃、稲田道を通って故郷に帰ったものもある。 今も稲の花が咲くと当時の情景を思い出す。戦死者の「英霊」は死語になって欲しいものである。
殊に濃き島の落暉や夏怒濤
長崎 岩本千鶴子
小さな島から眺める夕日は殊にまぶしい。太陽は周りにさえぎるものもなく、沖合にぎらぎら 輝きながら落ちて行く。数日前に吹き荒れた嵐の余波で波頭も高い。波は岩場に打ち寄せて轟き、 夕日を浴びて燃えるばかり。遠い昔と変わらぬ島の落日を鮮やかにとらえ、秀逸な作である。
雑詠-辻 桃子・選
メモをとる習ひいまなほ生身魂
埼玉 中久保まり子
この生身魂は、若いころから何でもメモを取ることが習慣だった。生身魂になってもなお筆記 具を離さず、何かとメモを取っている。「習ひいまなほ」が巧みな措辞で、生身魂の一筋で変わ ることのないまめまめしさを尊敬する気持が出ている。
更くる程踊り上手の踊りの輪
三重 平野 透
盆踊りの句。踊れば踊るほど、夜が更ければ更けるほど、我を忘れ時を忘れて、囃子も歌も先 祖の霊も一緒になって踊っている。まるで全体が踊りそのものに化したような。踊りの輪はそん な上手な人ばかりになり、長い夜を一心不乱に踊り続ける。踊りの本質を言い当てている。
見て廻ることも手入れや庭の秋
高知 西岡晴美
庭は几帳面に手入れするばかりではない。一見無精にみえるが、なまじ手入れをしないで自然 のままにしておくのもまた風情があると思っているのだ。「見て廻ることも手入れや」の措辞から、 庭を愛でるそんな美意識が感じられる。色とりどりの秋草が乱れ咲き、まさに「庭の秋」だ。
雑詠-夏石番矢・選
海おほふ零時の霧を銀の馬
福島 斎藤秀雄
ゆめまぼろしの美しい光景を作り上げた秀句。午前零時という、一日と一日の間隙かんげきの時刻に、 海上は別次元に変貌する。霧が発生し、海上であるかないかもわからない時空となる。「銀の馬」 は、その夢幻舞台を自由自在に駆け回る。この馬を見た人は、きっと銀の馬に変身する。
探偵を招く白夜の湖に
京都 黒金祥一
謎めいた幻想を引き出す秀句。白夜の湖は、一晩中薄明りに包まれる。妖精が出現するか、魔 物が出現するか、わからない怪しい気配が漂う。呼び出された「探偵」は、これから起きる殺人 事件、または失踪事件の解決のため、いまはただ湖畔のホテルか、別荘にでもたたずんでいる。
ただ僕はごめんと言えぬこおろぎだ
東京 菊地雅子
男の側からの女への言い訳のような俳句を、女性が巧みに詠んだ。とにかく相手の女に「ごめ ん」と自分の非を認められない男。それでも自分の卑怯さと頑固さは自覚している。また自分を 「こおろぎ」にたとえるとは、なんとかわいい言い訳だろうか。人間心理の襞をとらえた秀作。
雑詠-行方克巳・選
峰雲より垂れし鉄鎖を攀ぢ登る
愛媛 境 公二
鎖場と称して急峻な岩場などには鉄鎖が備えられています。その鎖が峰雲から真っすぐに垂れ 下がっているという表現で、登るのにいかに難しい所であるかが想像できます。一歩一歩慎重に 登っていくと、やがて素晴しい絶景が作者の目に飛び込んでくるはず。登山の醍醐味ですね。
ほうたるや水車が米を搗きしころ
埼玉 鈴木まさゑ
最近は近くの小川などに自然発生する蛍がほとんど見られなくなりました。農薬などの多用が、 自然界にも大きな影響を与えているのです。のんびりと水車が回って、その水車が米を搗いてい た時代もすでに過去。その頃には蛍が家の近くにもまぎれ飛んできたものです。
バックするダンプがこぼす残暑かな
北海道 伊藤やす
ダンプカーは残暑の厳しい中、フル回転で働いています。そのダンプがバックをしながら「残 暑」をふりこぼした。勿論、本当にこぼれたのは「残土」に違いありません。それをそのまま言 っても俳句になりません。機知を効かせた句ですが残暑という季語がちゃんと働いているのです。
雑詠-西池冬扇・選
折鶴に八月の息吹き込めり
神奈川 堀尾笑王
「原爆の子」が掲げる折鶴は反戦平和の象徴。二歳の時被爆した少女佐々木禎子さんは一九五 五年に白血病で亡くなった。彼女が闘病中に作った折鶴は、その後全世界の人々の反戦平和の思 いが込められた千羽鶴となっていった。この句の折鶴に吹き込んだのは、反戦平和の思いである。
父の髪むんずと佞武多見る児かな
青森 神保と志ゆき
佞武多には原日本人にたぎる情念が込められている。そんなことを感じさせるエネルギッシュ な祭り。父親に肩車をされた子供の佞武多見物の景である。ラッセラーの声に合わせ肩の上でハ ネトのように体を動かしているのかもしれない。「むんず」という表現が佞武多にふさわしい。
どんぐりの回転軸がずれてゐる
茨城 加藤そ石
木の実独楽だろうか。団栗の尻に錐で穴をあけ、小さな軸棒をさしこむとできあがり。上手く 作ると回ってくれるが、たいがいはすぐに倒れてしまう。そんな少年期の手作り玩具の遊びはも うあまり見られない。そんな趣を簡単に回転軸がずれているというコトでうまく表現した。
雑詠-能村研三・選
つくつくし一日終はれば一日老い
東京 関根瑶華
夏も終わり、夕暮に蜩が鳴くころになると何か切ない気持になる。日一日と「老い」の意識が 深くなり、不安も頭の中をよぎる。しかし「一日」「一日」とリフレインの表現を用いたことで、「老 い」に負けずに一日を確かに生きて明日へつないでいこうとする前向きさもうかがえる。
更くる程踊り上手の踊りの輪
三重 平野 透
盆踊りの世界にも前座と真打があるのかも知れない。前座は、初めての人でも踊れるような気 軽な曲で、見様見真似で参加する人もいて賑やかだ。後半になると、ベテランの踊り手が、決ま った振り付けで同じ動きをして踊り全体の美しさを披露してくれる。
きんつばの白き薄膜涼新た
茨城 西村順子
きんつばは江戸時代に刀の鍔のように平たく丸い菓子が京都で売られたのが始まり。餡を寒天 で固めるため、もちもちした薄い膜に包まれて独特の食感が楽しめる。香ばしくて甘さを控えた 上品な味が人々からも好まれた。このお菓子の造りようも何か涼しさを感じさせてくれる。
雑詠-山尾玉藻・選
鮮やかな色の危ふさ熱帯魚
千葉 松本美智子
熱帯魚の種類は大小様々ですが、小さな熱帯魚ほど目が覚めるような強烈な色をしています。 その鮮烈な美しさは本来は熱帯に生息する魚であるが故で、日本人が覚える優雅な色彩とは趣を 異にします。その点を「危ふさ」と捉えて大変説得力があります。
絶叫マシーン八月十五日
東京 曽根新五郎
戦争体験の有無に関わらず「八月十五日」が巡って来ると日本人なら誰もが沈思黙考するもの と思っていた作者です。しかし「絶叫マシーン」に乗り歓喜の叫びをあげる人達も存在するのが 現実です。読み返すうちに「絶叫」の語が恐ろしく胸にのしかかってきます。
野菊咲き大きな空を味方とす
福岡 本郷実津子
地味な趣の野菊に目を止めた作者は、その上に広がる秋天の美しさにもこころ惹かれています。 つつましい野菊だからこそ秋天の広やかさが意識され、秋天の下だからこそ野菊の存在が明らか だったのでしょう。「味方とす」に作者のこころの色を感じます。
兼題
選者:大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
今月の兼題…【実】
兼題-大高霧海・選
蝗喰ひ戦後を忠実まめに生き来たり
愛媛 境 公二
無言館へ木の実降る降る自問坂
埼玉 清水由紀子
文鎮のずしりと重し実朝忌
大分 金澤諒和
兼題-岸本マチ子・選
榠樝の実へんてこりんな面構へ
島根 大島一二三
道成寺絵解き説法蓮は実に
和歌山 川口 修
木の実落つ南ア全山縦走路
東京 宇井偉郎
兼題-高橋将夫・選
真実は月光の降る壺の中
石川 山下水音
後先になりたる違ひ木の実落つ
北海道 花畑くに男
借景を実景とする秋夕焼
大阪 江島照美
兼題-名和未知男・選
浜辺にて椰子の実唄ふ秋夕焼
東京 古谷 力
桐の実や太郎花子は仔牛の名
山形 鈴木花歩
実存もサルトルも去り巴里祭
福岡 河瀬周治





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