●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2016年6月号 ○
特   集
小説と俳句が描いた時代
井原西鶴と元禄時代の俳句、島崎藤村と明治後期の俳句など
特別作品50句
三村 純也
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、「俳句の『読み』を読む」ー岸本尚毅、他
セレクション結社
「若狭」遠藤若狭男
俳句界NOW
田中春生「朱雀」
甘口でコンニチハ!
住友達也(実業家)
特別作品21句
奥名春江 山西雅子 星野光二
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
朝妻力、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串章、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
海明ける氷の唄を残しつつ
千葉 飯田協子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
アンモナイト亀の鳴き声聞いてをり
静 岡 渡邉春生
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
風花や明日のことより今日のこと
福岡 林 壱風
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
恋猫の炎となりてうづくまる
茨城 荒井栗山
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串章、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
*畑を焼く怡土の王墓をけぶらせて
福岡 洞庭かつら
『魏志倭人伝』に邪馬台国へ至る途中の国として対馬国、一支国いきこく(壱岐)、末廬国まつらこく)(松浦)、伊都国、不弥国ふみこく等々と記されている。この伊都国が怡土である。福岡市西方の半島にあった小国であり、現在の糸島郡あたりである。昔も王の墓近く野を焼いたであろう。ロマンのある句である。
四股百回踏んで追儺の鬼となり
北海道 中 悦子
追儺は宮中の行事で大晦日の夜、行われる。近世より民間では節分の夜の行事になった。豆を撒いて鬼を追い祓う。この鬼の役を演ずる人が、四股を百回も踏んで体の調子を調えているのである。その上で、立派に鬼の役をやれるぞと言っている様子が見えて来るところが面白い。
逝く時も満州育ち冴え返る福
福岡 築山妙子
戦前満州で生まれ戦後日本へ引きあげて来た人が、今その生涯を終ろうとしている。朝から寒さがぶり返してきている。満州で生まれた日も冴え返りの厳しい日だったと聞いている。この人の満州への思いが冴え返りを呼んだのではないかと思わせる所が佳い。惜別の念がこもっている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
ぶらんこを降りるやいなや刑事行く
兵庫 井上徳一郎
果たしてぶらんこに乗っていたのが刑事だったのか、又は容疑者がぶらんこから降りたところを後ろから刑事が追いかけたのか、いずれにせよぶらんこに乗っていたのは大人なのである。刑事とすれば張り込んでいたのか、何かユニークな景が緊張感を和らげてくれる不思議な句である。
雛段の裏の凸凹昼の闇
神奈川 神野志季三江
ゴージャスな雛の段飾は、正面から見ることしかなかなか発想出来ないのではないかと思うが、確かに赤い布で覆われた段の後ろは結構骨組みだけのことも多く、あまり立派なものではないだろう。そんな裏の視点に着目して闇を描き出したところが却って新鮮な発想である。
風落ちて凧一枚の紙と化す
三重 圦山勝英
最近では圧倒的に正月に遊ばれることが多いが、俳句では「凧」は春の季題である。春風を一杯に孕んで大空に揚がる勇壮な姿がよく描かれているが、こちらはその風が止んで、凧は地上に落ちてしまったのである。それを「一枚の紙」と表現して、凧の存在感を反対に引き出している。
雑詠-茨木和生・選
吉野郡野迫川村の軒氷柱
奈良 能登つくも
地名と季語と助詞「の」で詠まれた句で調べがよい。野迫川のせがわ村は奈良県にあるが、自動車を持たない私がここに行こうとすると、大阪府、和歌山県を経ることになる。寒冷地でも知られ、軒氷柱はもちろん崖氷柱も見られる。私の好きな地で、私の第三句集は『野迫川』である。
鶴立ちし大きさに皆驚きぬ
兵庫 小坪ひろ子
おそらく丹頂鶴だろうが、動物園で飼育されているものではない。野生に近い状態で飼われている丹頂鶴を私も見たが、確かに大きかったという記憶がある。この句の作者、丹頂鶴を見るツアーに参加していたのだ。間近で立ち上がった鶴の大きさに参加者は皆驚きの声を上げた。
卒業歌手話で唄つてをりにけり
大阪 秋山具輝
聴覚特別支援学校か聴覚支援学校での卒業式である。おそらく作者はその学校の卒業式に関係者の一人として出席されたに違いないと思う。校長の式辞はもちろん、来賓の祝辞も手話で行われた。手話を重んじる校風のこの学校、校歌も卒業歌も手話で行われたに違いない。
雑詠-今瀬剛一・選
堆き畦より雪解はじまりぬ
青森 田端千鼓
作品の視点が明確なので、大景がひきしまって見える。広々とした雪解けの野の情景を「堆き畦」に焦点を置いて表現したところがいいのである。しかも一気にいい下したリズムが快い。「雪解はじまりぬ」という表現には雪解けの喜びを素直に表現した作者の思いもあるように思う。
電柱の無くなりし街鳥帰る
東京 竹田吉明
言うまでもなく、「無くなりし」という表現の背後には「かつてはあった」という思いがある。つまり過去と重ね合わせることによって現在の情景に膨らみを加えたのだ。その大きな情景の広がりの中を鳥は帰っていくのである。生き生きと生命観に満ちて感じられるのは当然である。
湯の宿の前は渓流春の雪
岐阜 廣瀬あや子
読者にとっては作品に強い臨場感があることが嬉しい。作品の中の、「湯の宿」「前」「渓流」、こうした言葉が緊密に結びついて隙が無いのである。したがって場面がよく見える。そこに降る「春の雪」である。その降っては消えてゆく様が眼前にはっきりと浮かんでくる様に思える。
雑詠-大串章・選
*紙めくる音のさざ波大試験
東京 松尾正晴
大試験は紙をめくる音から始まる。大勢の受験生が一斉にめくる紙の音は教室中にひびきわたる。その音の中に受験生の真剣な顔が浮かぶ。大試験が紙をめくる音から始まる、という句は外にもあるが、その音を「さざ波」と言ったところがこの句の眼目。静かな緊張感が伝わってくる。
梅が香の忙しき吾をたしなむる
東京 小田美惠子
清楚な梅の花の香りを嗅いでいると、いつしか心が静まり穏やかになる。そして日頃の自分の暮しぶりが反省させられる。毎日慌しく過ごしている自分が恥ずかしくなる。忙しい身は忙しいなりに余裕を持って暮らしていかねばならない。「忙しき吾をたしなむる」が言い得て妙。
巣箱掛け課外授業の声弾む
北海道 山田壽美子
課外授業で近くの公園か森へ行き、鳥の巣箱を掛けている。どの木にしようかどの位の高さにしようかなどと、話しながら木に取りつけている。その声が弾むように聞こえてくるのである。やがてその巣箱からは、可愛らしい雛鳥の声が聞こえてくるに違いない。明るく健やかな句。
雑詠-角川春樹・選
クローバーに腹這いて宿題を解く
埼玉 本多和子
清々しい光景が想起される作品である。青春の一齣を表す、郷愁の景とも、理想の景とも思われる。クローバーの瑞々しさと、晴れやかな天地に、学生の負う未来の広がりがある。
とんかつをざくざくと切り春隣
大阪 三木蒼生
取合せの妙と素材の目新しさを感じた一句。揚げたてのとんかつに包丁を入れたときの聴覚と触感がオノマトペにより表現されて小気味よい。寒中を乗り切る、生活実感に溢れた作品。
カーテンをきりりと絞る春の朝
岩手 高橋 貢
中七の「きりりと絞る」という措辞からは、普段行っている何気ない動作を捉えつつ、自ずと表れた一日への期待と意気込みが描かれている。作者の住まいを合わせると、「春の朝」を迎えた喜びがいっそう強く感じられてくる。
雑詠-岸本マチ子・選
春駒の疾駆地球をかたぶけて
兵庫 井上徳一郎
春駒とは、春に生まれた若い馬たちで、それらが集団で疾駆している様は、まさに春一番を思わせる。馬達の若い息吹、そして疾駆は地球をかたぶけさせているというのだが、その発想が現代的で凄い。
繭雛のひと息に引く一重の目
愛知 匂坂まちこ
繭玉に描く繭雛というのはひどく小さい。その一つ一つに、息を詰め、ひと息に引く一重の目。それまでになるにはかなりの修業を積まなければと思うのだが、いとも簡単に画いて居られる。一重の刻んだような目に唇の赤いぽっち、なんとも穏やかで美しい。
節分や妻の小声の鬼は外
神奈川 浜岡健次
「妻の小声」がいい。ご近所を憚るというより、すぐ目の前の夫を憚る声がユーモラスで笑ってしまう。亭主関白が思いやられるが、案外奥さんの方が上手かも知れない。仲よく末長くと祈りたい。
雑詠-古賀雪江・選
妹は二月礼者や病告ぐ
神奈川 尾㟢千代一
二月礼者は、正月に年始の挨拶が出来なかった人が、二月一日に回礼に行くこと。そんな二月に、毎年正月には顔を出す妹がやって来た。体調が悪そうだ。「検査をしたら癌だった」と告げられたかも知れない。「病告ぐ」の簡潔な表現が病の重大さを思わせる。
花かたかご耐ふる風向き揃へけり
東京 山形れん
かたかご、つまり片栗の花は、早春、平地の斜面などに生える。まだまだ風には棘のある頃、一斉に同じ向きに吹かれている様が、風に耐えている様に見える。「風向き揃へ」とよく見ている写生の巧みさ、そして、浅春の風に揉まれているかたかごの花への慈愛の心を感じる。
大寒の一燭弥陀に影を生む
福岡 池上佳子
寒中の詣でに一燭を奉った。底冷の堂に弥陀仏の影が生まれた。それは堂の冷を一層に募らせるものであった。見えざるものの気配に心象が加わって、句に奥行が生まれた。寒中の弥陀堂は底冷えが足下から這い上がるようで、み仏の前に居る昂ぶりが辛うじて支えてくれるのである。
雑詠-坂口緑志・選
*畑を焼く怡土の王墓をけぶらせて
福岡 洞庭かつら
福岡県糸島市に二世紀ごろ存在し、『魏志倭人伝』にその名が記されているという邪馬台国の小国、伊都( 怡土いと)土と)の国。その国の王の墓を煙らせて畑を焼いている。卑弥呼の時代に思いを馳せながら早春の野に遊ぶ作者。伊都国の王は女王であったとも言われている。
寒鯉の水の重さに沈みをり
東京 木村力男
寒中の鯉である。日頃は軽やかに泳ぎまわる鯉だが、寒中はさすがに動きも鈍く、身じろぎひとつしないでいる様を見かけることも多い。鯉の密度は水とほぼ同じなのであろう。水と同じ重さを持って沈んでいるのである。
その他は墨絵の如し寒椿
福岡 鋤柄治子
寒中に咲く赤い椿である。鮮やかな赤い花びらの他は、葉も枝も、その他の樹木も背景も墨で描かれた絵のように、赤い花びらを際立たせている。あたかも、花びらのみが彩色されている水墨画を見るようである。
雑詠-佐藤麻績・選
下萌やかつて軍馬の放牧地
東京 萩原純子
春の野には気づかぬ間に若草が芽生えている。このような自然の恵みには心が休まる。だがここは、かつて軍馬を放牧していたのだったと思い出された。こうして平和が続いていくことを願わずにはおれないと作者は訴えてもいるようだ。
父さんの背中だけ見た梅見かな
東京 田島映子
まさに子どもは親の背中を見て育つ、を具体的に詠まれている句である。それが探梅の場であったことを、梅見をしながら思い出されたのであろう。作者は父の背を見て育ち、素敵な人生を送っておられるだろうことまで思い及び、微笑ましい。俳諧的な作品とも思える。
天井の涅槃図見るは寝ころべよ
三重  藤原 紅
涅槃図を見る機会は時折あるが、多くの弟子はもとより鬼畜までが悲しむさまには、緊張感のなか対することになる。かつて寝ころんでゆったりと対したことがあった。それが己との対話になると思ったのだった。涅槃図は寝ころんでみるべし、その通りである。
雑詠-鈴木しげを・選
浦寺に海女集ひくる七日かな
三重 池田緑人
さざえや鮑などを採取する海女さん達にも、正月松の内の休みはあると思われる。掲句は磯近くにある浦寺に正月七日の初顔合せに集って賀詞を交し、また一年の作業安全を祈るのであろう。古くからの慣わしにちがいない。「七日」の季語が見事に効いている。
枯木立意志を固めて戻りけり
栃木 森 加名恵
なにか自分の岐路に立たされての決意であろう。家にあって逡巡する気持を整理するために、外に出て枯木立の林の道を歩く。空の色、風の音にいつか心が一つに澄んで作者の心は定まってきた。葉をすっかり落とした枯木立のあるべき姿がもたらしたものである。
うすらひの鳥の水場に日当り来
長野 岩本隆子
自然の趣をそのまま残す葦辺の景が見える。春立って間もない枯色の水辺の、水鳥や野鳥の集まってくる水場が薄氷におおわれている。そうした水場に遅い朝日が当りはじめて殺伐たる景は一転眩しさにつつまれる。的確な写生眼に裏打ちされた一句である
雑詠-辻桃子・選
奔流の縺れに縺れ雪解川
青森 田端千鼓
急に春めき、水が温み雪も氷も解けた。その雪解けの水が川へ流れ込んだのが雪解川。ときには山肌を削り倒木を巻きこみ猛るように流れ下る。掲句でも全山の雪解けの水が溢れ、幾本もの奔流となった流れが縺れながら流れ下ってゆく。「縺れに縺れ」で雪解け時の荒々しさが伝わる。
持ち歩くうちに咲きけり桃の花
東京 川瀬佳穂
雛祭に飾るため花屋から蕾のたくさんついた桃の木を買ってきたのだろう。まっすぐ帰宅せず、桃の木を抱えたままどこかに用事を足してきたのだ。気がつくと、蕾だった桃が二輪三輪と花を開いていた。雅な梅や桜とは異なり、華やかだがどこか鄙びた感じのする桃の花にふさわしい。
水温む棹しならせて出る渡し
神奈川 磯村昌子
春になり水もあたたまってきた頃、客を乗せた渡し守が、さあ出発と棹を突き立て棹もしならんばかりに突いたのだ。舟は岸を離れ春の水の上を滑り出す。与謝蕪村に〈水ぬるむ頃や女のわたし守〉があるが、掲句では「棹しならせて」と渡し守の動作を描写、力動感のある句になった。
雑詠-夏石番矢・選
耕して世に争ひの始まりぬ
神奈川 宮島流星
「田返し」から「たがやし」ということばが生まれた。農耕は人類に生活の安定をもたらしたが、争いの種ともなった。旧約聖書に出てくる初めての耕作者カインは、弟アベルを殺した。日本神話の高天原の水田でスサノオは狼藉をはたらいた。「耕し」にはめでたさと不吉さが同居する。
残雪や漢の精の一しずく
東京  悠
他の投句〈老侠の身をほとばしる雪解水〉と読み合わせて、任侠に生きた男の作だろうか。「雪」と精液だけしか登場しない一句ながら、緊張感ある人生、老境、それにもかかわらず男気が潔く感じられる。「残雪」ということばの響きが効いており、作者の心境と呼応している。
復員の父の揚げたる狂ひ凧
静岡 宮田久常
いまは忘れられた梅崎春生の小説『狂ひ凧』(一九六三年)が連想される。戦地から生還した父親は、戦争について家族には何も語らない。寡黙な父が子供のために揚げた凧の乱れは、偶然のようでいて決して偶然ではない。人生の厳しい機微を、「狂ひ凧」がそれとなく暗示している。
雑詠-西池冬扇・選
一鍬に朦朦と湯気寒堆肥
福島 坂本節子
堆肥は落葉や野菜の生くずを発酵させて作るので熱を発する。寒堆肥という言葉は造語だろうか、寒い時に作ったので鍬を入れてひっくり返すと湯気が出る。「一鍬入れると朦朦と湯気が出る寒の堆肥」を省略技法で句にしただけだが平明なところが好ましい。朦朦という表現も面白い。
大寒の下から通す畳針
東京 佐々木いつき
畳針は太くて長い。独特の作業動作、そして木枠の作業台や縁を切る包丁等の道具。学校の往き帰りに店先で飽かずに見ていたことを思い出す。寒い時はガラス戸が閉じてあり畳の匂いが強く籠っていた。焦点のシャープな表現からはイメージが豊富に生まれる。今は機械で縫うようだ。
春暁や牛乳瓶のあをき影
神奈川 山口せうこ
暁は古くは夜明け前、まだ暗いとき。牛乳瓶の中に白い牛乳が入っているのであろう。物の形はまだ周囲に溶け込んでおり、白い瓶が青い影のように見えたのである。現代では暁・曙・朝ぼらけなどあまり区別して用いなくなっている。「春は曙」的な趣に牛乳瓶を引きこんだのが新味。
雑詠-原 和子・選
カピバラの顔は浮世絵春うらら
愛媛 松岡かをり
カピバラは南アメリカの東部の森林が生息地と云われているが、地球上の珍しい生き物を紹介する映像で見る限り、実に親しみを覚える愛敬のある顔で一度実際に会ってみたいものだと思う。その顔が浮世絵のようだったと自在な取合せを楽しんでいるが、「春うらら」が絶妙である。
国防の島の日の丸冴返る
東京 矢作十志夫
沖縄での句。「国防の島」「日の丸」と沖縄への思いが詠まれている。時事俳句はとかく難しいものであるが、詠まずにはいられない衝動に駆られることは否めない。季語「冴返る」には、どこか光や音の敏感さが捉えられていて感情がうまく表現されている。
燭足して余寒深めし閻魔寺
神奈川 佐藤好惠
鎌倉の閻魔堂を訪ねたことがあるが、いかめしい閻魔の前はどこか薄暗く人間の弱さが隠せない。ここでの余寒は一入身に染みたことであろう。この句の面白さは燭を足していささかの明るさを取り戻したと思いきや却って余寒を深めてしまったというところ。俳句ならではの味わいだ。
雑詠-山田佳乃・選
歪みつつ生まれて来たるしやぼん玉
広島 谷口一好
ストローの先に息を吹き込み、静かに静かにしゃぼん玉を膨らませる。勢いがあると弾けてしまう。風にゆらぐせいなのか、息が荒いせいなのか、ゆらぎながら大きくなっていくのである。しゃぼん玉の命とともに、人間の歪みまでふと感じさせる一句。
杣を継ぐ家系細りし菊根分
石川 浅田希瑛
山の奥深くまで点々と村が続いている。こんなところにまで人は耕し暮らして来たのかと思うと感慨深い。しかし若いものたちは町を出て過疎となってしまう。菊の根分けと細っていく家系の対比が面白い。どちらかといえば、社会的、時事的な問題を詩的に言われたところが巧いと思う。
*紙めくる音のさざ波大試験
東京 松尾正晴
一斉に試験が始まって問題の表紙を開くときの紙の音。たいていは先々まで問題に目を通してからとりかかるのでしばらくは紙の音が続く。さざ波と感じる余裕のある作者は試験を仕切っている立場だろうか。静かな緊張を感じさせる大試験の一景で「さざ波」の表現が印象的である。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【銀】
兼題-大高霧海・選
銀翼の兄は還らず彼岸かな
埼玉 大熊三郎
銀鼠の春雨テロの無き静寂
大阪 西田唯士
敗戦日伯父の遺せし銀時計
福岡 田中一とく
兼題-高橋将夫・選
氷に上る魚銀盤に舞ふ少女
岐阜 廣瀬あや子
薄氷のなかに沈金銀杏の葉
埼玉 田坂泰宏
銀蘭は金蘭の美と競はざる
大阪 江島照美
兼題-田島和生・選
校長の塵取に乗る銀杏の実
宮崎 堀内サキ子
囀りや父の匂ひの銀煙管
栃木 山口 勝
キャラメルの銀紙仕舞ふ春コート
京都 名村柚香
兼題-田中陽・選
銀舎利に寒卵かけ出勤す
千葉 村越靖弘
銀輪を駆つて春までたどりつく
東京 川瀬佳穂
銀巴里の跡や憲法記念の日
東京 菅沼里江
兼題-中西夕紀・選
銀行の消えしわが町麦青む
大分 森田里華
銀ぶらの鯛焼冷えて荷となりぬ
栃木 中村國司
銀の鈴ころがるやうに春きたる
兵庫 堀江節子
兼題-名和未知男・選
麦うずらおくれ気味なる銀時計
東京 田島映子
*波郷忌や銀座卯浪の隅の客
愛媛 境 公二
銀閣へ抜けられる路地濃紫陽花
大阪 西向聡志
兼題-能村研三・選
*波郷忌や銀座卯浪の隅の客
愛媛 境 公二
フルートの銀のきらめき春兆す
神奈川 大矢恒彦
農具市銀杏明りを寸借し
鹿児島 内藤美づ枝





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2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
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