●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,500円

○ 月刊 俳句界 2019年1月号 ○
特   集
「ホトトギス」は永遠に不滅です
●座談会「前衛俳句を語る」藤原龍一郎 秦 夕美 福本弘明
特別作品50句
稲畑汀子
俳句界NOW
宮坂静生
セレクション結社
「今日の花」小川晴子
甘口でコンニチハ!
西村京太郎(作家)
私の一冊
堀切克洋『山本健吉全集(第12巻)』
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
折井紀衣、長嶺千晶(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
兼題選者
大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
火焰土器に満たしてみたき曼珠沙華
和歌山 川口 修
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
星飛んで荒川にある宇宙かな
東京 芥川登史子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
若夫婦うつり来し村稲の秋
東京 川俣由紀
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
思ひつきり怠けて行きぬ帰省の子
山形 鈴木花歩
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、大串 章、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
次の世は目明きでゐたき良夜かな
滋賀 北村和久
北村和久さんは目が不自由な方と聞いている。にもかかわらず一生懸命作句に励まれ、佳句を 作っておられる。目が不自由でも良夜の明るさを感じられるのである。でも次の世は目明きにな ってこの満月を直接見たいと望まれたのである。しみじみとした気持が佳く詠われている。
白樺派集ひしサロン小鳥来る
東京 徳原伸吉
白樺派とは雑誌「白樺」で活躍した文人達で武者小路実篤、志賀直哉や里見弴などがその中心 であった。どこかにこの白樺派の人々が集ったサロンが残っているのであろう。そのサロンに行 くと小鳥たちが飛んで来たのである。理想主義的な文人たちに、優しい小鳥達の姿はふさわしい。
ふはふはの蒲の穂絮にある神話
福岡 中城幸枝
水辺に生える蒲は、夏に花穂を出し、それが実になって穂絮が飛ぶ。その花粉は止血の漢方薬。 皮をはがれた因幡の白兎に大国主命が、蒲の穂にくるまれば良いと教えたと古事記に書かれてい る。穂絮がふわふわでいかにも血止めにききそうだ。因幡の白兎を思い出したところが面白い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
曼珠沙華野の花束となり群るる
福岡 鮫島成子
秋彼岸の頃になると、殆ど時期を違えずに咲くので、彼岸花とも言われる曼珠沙華である。咲 く場所も毎年同じように感じる不思議な魅力がある花である。白や黄色も最近見掛けるが、厳密 には別種とのこと。何れにせよこの花の咲き様を花束と捉えたところに的確な写生の力を感じる。
噴き上がる飯屋の羽釜豊の秋
徳島 生島春江
薪を使って羽釜で御飯を炊くのは、かなりの技術を要するため、家庭ではとんと見掛けなくな ったが、やはり美味しい御飯が炊ける方法としては一番であるそうだ。今でも料理店では羽釜を 使っている所があるのだろう。新米を手練れの技で炊いている姿が、季題を通して伝わってくる。
露の玉呼び合ふやうに繫がれり
兵庫 稲谷有記
秋の朝寒の時間などに露が様々な場所に一面に広がっている景色が見て取れることがある。 木々の葉などを見ていると、その傾斜や動きによって露と露が段々結合し合って大きな露の玉を 結ぶ景となって美しい。まるで露に命が宿っているような表現が、句を引き立てている。
雑詠-茨木和生一・選
桐一葉落ちてゆつくり流れけり
千葉 塩野谷慎吾
季語の桐一葉は「落ちて」とまでいう必要がないと思われるが、どうしても言わねばならない と作者が思ったのは、流れの上に落ちて行き、さらに水面に落ちて、そのあとゆっくりと流れて 行ったからである。見止め、見届けた所がよい。
停電の二夜満天の星明かり
北海道 井上映子
台風二十一号による停電は北海道、特に札幌市では二晩続いたと聞いている。それでも俳人は したたかな精神の持ち主である。空を仰いで過ごした二晩、満天の星明りを滅多にないチャンス ととらえて、一句を詠んでいる。
ずぶ濡れの方が勝者の水鉄砲
東京 戸井田英之
水鉄砲の勝者の判定の見方が面白い。たしかに勝者の判定はどれだけ水鉄砲の玉が当たったか、 すなわちどれだけ水を浴びせられたかによって判断している。余すところなく水鉄砲を浴びせら れたほうが勝者であるとは。
雑詠-今瀬剛一・選
大阿蘇に雲の湧く日や吾亦紅
福岡 森田和をん
堂々たる内容を格調高く詠っている。遠く阿蘇山に湧く雲。作者はしばらくの間、その情景に 心奪われていたに違いない。そのことは「雲の湧く日や」という表現から充分感じられる。そし て眼を落とすとそこには「吾亦紅」が咲いていた。この遠近、大小の対比は見事だ。 れる見事な表現だと思う。作者は静かに、静かにその蓮の蕾に歩み寄っていったに違いない。
稲の花大きな雲の通りけり
福井 木津和典
稲の花は決して目立つ花ではない。水の上に散って初めて咲いていたことに気がつくほどの花 だ。従ってこの作品は情景的には稲の花の咲く頃の稲自体、もっと言えばその頃の稲田の広がり を感じさせる。その上を雲が通りすぎ、稲田には翳りと日向が出来たであろう。大きい情景句。
梨を剝くこの山のこの風に住み
熊本 荒尾かのこ
住み慣れた山峡の里であろうか。ふと快い風を感じて顔を上げる、眼前には大きく山が聳えて いた。その時作者の口を突いて出てきた言葉が「この山のこの風に住み」という言葉だろう。快 いリズムで快い思いを表現している。半分剝かれている梨がいかにも白く瑞々しく感じられる。
雑詠-大串章・選
曼珠沙華燃やす大地の力かな
宮城 髙宮義治
秋彼岸の頃になると曼珠沙華が真っ赤に咲きほこる。まるで大地が燃やしているようである。 冒頭に「曼珠沙華」と据え、「燃やす大地」と端的に言い、「力かな」と力強く言い納めたところ が良い。曼珠沙華の美しさと大地の底力を感じさせる句である。
童謡の色に染まりし赤とんぼ
東京 佐藤多美子
赤蜻蛉というと童謡「赤とんぼ」を思い出す。「夕やけ小やけの 赤とんぼ 負われて見たの は いつの日か」(三木露風作詞、山田耕筰作曲)を知らない人はいないだろう。この句、「赤と んぼ」が「童謡の色に染ま」っている、と言ったところにポエジーがある。
明り洩るファドの酒場や霧深し
神奈川 後藤勝久
酒場の窓から明かりが漏れ、ファドのメロディーが流れてくる。夜霧ただよう路地裏の酒場な どを想像する。因みに「ファド」は、「十九世紀前半、リスボンに起こった哀調を帯びた民衆歌謡」 (『広辞苑』)である。
雑詠-櫂 未知子・選
風呂敷に残る西瓜の丸みかな
静岡 鈴木剛一
客が土産として持ってきた「西瓜」。それを「風呂敷」に包んできたこと自体が懐かしく、また、 奥ゆかしい。包みをほどいた後もその布に残る大きな果実の丸い跡が、何ともいえぬ味わいをも たらしている。
投函に少しの悔いや秋黴雨
東京 川原瀞秋
おそらくは、思い切って書いた手紙、それもけっして楽しくはない内容だったのだろう。それ をポストに入れた後、にわかに訪れた後悔。誰もが経験したであろうことを、無理のない形で一 句になし得た。
一片の雲も良夜の過客かな
神奈川 髙野知作
まことに品のよい一句である。名月をよぎる「一片の雲」を忌むのではなく、『おくのほそ道』 の冒頭を踏まえつつ、美しい作品にした。ことばの選び方も構成も、よく考えられた一句だとい える。
雑詠-角川春樹・選
螻蛄鳴くや人には読めぬバーコード
大分 小田祥子
バーコードは、ものの識別、管理のために用いられている。今日では二次元バーコードも普及 している。バーコードリーダーで読み取り情報を収集するが、確かに人間の目では情報を読み解 くことは困難である。「螻蛄鳴く」を配合することで、アイロニーの一句となった。
恐竜の糞の化石や星月夜
兵庫 田麦かつ江
恐竜の糞が腐敗をまぬがれて化石したものを、博物館などで見てきたのだろう。恐竜のほとん どは約六六〇〇万年前に絶滅したというが、糞化石が作者の眼前に現れるまでには、途方もない 歳月が流れたことになる。感動とロマンが「星月夜」に託されている。
新豆腐身に静けさのもどりたる
大阪 有松洋子
新豆腐は、今年とれた新しい大豆で作った豆腐で滋味深いという。掲句では、新豆腐を味わい ながら、このごろの身辺の平穏に思いをいたしている。上半期は、あわただしく過ごされたのか もしれない。つぶやきのような実感のこもった作品。
雑詠-古賀雪江・選
サーカスの猛獣移送星月夜
東京 長尾 博
サーカスは今ではあまり一般的ではないようにも思うが、横浜のみなとみらいなどには時折来 ている。次の巡業地への出発は夜。毎々の事で、動物とて移動には慣れているかもしれないが、 檻の中で眠ってはいないようだ。時折荒々しい息が聞こえて来る。星の降るような夜であった。
旅のこと語るも看取り林檎剝く
三重 森田敏昭
誰を看取って居られるのだろうか。ご主人かもしれない。旅の土産の林檎を剝きながら、弘前 の林檎街道の話などしているのかもしれない。「次は一緒に行きましょうね」などと言っておら れることであろう。早採りの林檎は甘酸っぱいが、季節の運行を確と感じるものである。
ほたる草小石つまるる瞽女の塚
愛媛 野口寿雄
三味線を弾き、歌を歌って門付をしながら山里を巡行して暮しを立てた盲目の女性芸人を瞽女 といった。「瞽女屋敷」を与えて保護をした藩もあるというが、恵まれない瞽女の世界。そんな 切ない瞽女の墓は小石を積まれただけの侘しいもので、供花は傍らに咲くほたる草であった。
雑詠-佐藤麻績・選
葛の蔓引けば一山動き出す
兵庫 小幡酔歩
葛の蔦は十メートル以上もある。花は紫紅色でなかなか目につく美しさだが、鬱蒼と葉が茂っ て総てを覆ってしまう。この句が訴えるように蔓を引けば山が動くだろうというのは実感である。 この葛の根は漢方薬に用いられる。
湧水の絶えぬ忍野や新豆腐
東京 古谷 力
忍野八海は湧き水と富士信仰で知られるところである。富士山の伏流水による八つの池があり、 豊かな池を巡ることと同時に、その水を生かした豆腐を食することも忘れられないことだ。水が 豊かだというのは何にもまして印象に残る。
鶏頭を数へてみたり子規の庭
福岡 松本ゆきこ
〈鶏頭の十四五本もありぬべし 正岡子規〉。この句を携えて、子規の庭を訪ねられたのであ ろう。そして案の定鶏頭があった。そこで何本かと数えてみた。実にストレートな作品であるが、 この様な機会を作り実行された作者自身が俳諧と言えるようだ。
雑詠-鈴木しげを・選
瓢の笛貰ひし妻と老にけり
北海道 江田三峰
瓢(ひょん)の実は、蚊母樹(いすのき)の葉に出来る虫こぶである。虫が出たあと空洞にな った穴を吹くと音を発する。作者は若き日、この「瓢の笛」を一人の女性から貰ったのである。 そしてその人は作者の妻となり、歳月を共にして今日に至った。俳諧味とロマンと。
剝製に見詰められゐる湯ざめかな
長野 中里 凜
この剝製は鳥だろうか獣だろうか。具体的に示さなかったことで読み手の方はいろいろ想像出 来る。湯ざめしたのは自宅であるかも知れないが旅先の宿の床の間に飾ってある鷹のような眼光 鋭い鳥を思ってみるのもいい。生きている時と同じ精悍な目で見詰められたら身も心もひるむ。
粟餅や小降りにかはる雨の音
東京 御戸貴史
米、麦、黍、豆、粟、これを古来五穀という。このうち黍、豆、粟は今は主食に用いない。け れども黍餅や粟餅はある。ぼくは阿佐ヶ谷に古くからある餅屋でこれを求める。やや強い雨音が 小雨になって雨音が消えていく。粟餅を焙っている静謐な時間がいい。
雑詠-田島和生・選
みんなに舵切る船や鳳作忌
熊本 加藤いろは
篠原鳳作は鹿児島に住み、戦前の新興俳句運動で、〈しんしんと肺碧きまで海のたび〉など無 季俳句を中心に詠み、明るい南方性の作品が注目された。九月十七日(昭和十一年)の忌日、大 海原を航行中の船はその南に向かい、大きく舵を切る。鳳作を悼み、ロマンにあふれた句である。
りんご箱香り残して書架となり
青森 飯田知克
若い頃の回想かもしれない。貧しくて本を買うのは一苦労で、まして本棚なども手が出ない。 りんごを出荷するのに使われた箱を重ねて書架にする。箱からは甘いりんごの匂いが漂う。青森 在住の作者なら真っ赤な津軽りんごだろうか。「香り残して」の表現がさわやかである。
小刻みに踊る湯豆腐一人酒
兵庫 藤井留里美
湯豆腐が土鍋で動く様子はいろいろ詠まれているが、「小刻みに踊る」は絶妙である。昆布を 敷いた鍋に入れた豆腐は、しばらく待つうちに動き出す。その動きが大きくなり、まさに小刻み に踊りだすのである。酒の相手はおらず、今夜は一人酒。時には一人もいい。気持のいい作品。
雑詠-辻 桃子・選
弁慶が眼鏡で立ちし村芝居
大阪 髙島一由岐
収穫の後、村人が集まって演じる村芝居だ。『勧進帳』だろう。安宅の関の関守、富樫の前で 弁慶が勧進帳を読み上げる場面だろうか。立っているのは眼鏡をかけた弁慶だ。弁慶役の役者は ひどい近視なのだろう。眼鏡をとったら演技どころではないのだ。いかにも村芝居らしい。
右の雲が台風ですと機長言ふ
東京 萩原純子
今年は、多くの台風に見舞われた年だった。掲句は、台風が通過した後に飛び立った旅客機だ ろうか。雲を突き抜けてしばらくすると、機長からのアナウンスがあった。右側に見えるのが台 風の雲だという。上空から台風を見下ろしていて、台風の句としては珍しい。
豊の秋老ジャズ団の音合はせ
大阪 やまぐち若葉
昔はかっこよかったジャズ団。何十年かたって、またやろうということになり、豊年の舞台に 立つのだろう。音合わせに余念がない。老いているが、みな生き生きとしてうれしそうな様子が 伝わってくる。上五は、「豊年の」「出来秋の」と、「の」で中七につなげるとより良くなる。
雑詠-夏石番矢・選
姉妹羽化の気配虫籠のあはひ
福島 斎藤秀雄
一読後は失敗作と思えたが、読み込んでいくうちに面白さがわかった。こういう俳句は誰も作 らないだろうし、誰も採らないだろう。虫籠が並んでいるその間の狭い空間で、幼い姉妹が、脱 皮し、今にも羽化して、美しい蝶になって飛び立ちそうな妖しい幻想を詠んだ奇抜な一句。
信貴山に銀河の絵巻懸かりけり
愛媛 境 公二
常連の投句者の秀句。他の句では発想が見え透いているが、この句ではそうではない。「信貴 山縁起絵巻」には銀河はたぶん登場しないだろうが、この山に「銀河」を配した美しい虚構が成 功している。松尾芭蕉の「荒海や」に比べれば、虚構の弱さが目立つが、それなりの趣がある。
霧の街 まぼろしの街 わが住所
福島 呼吸
この作者の実存的不安感は、貴重。一字空けも、発語のたどたどしさを生みだして効果的。自 分の住む根拠地が、「霧」が立ちこめた「まぼろし」であるのは、虚構ではなく、作者の現実。 愚痴はあっても、芯から痛ましい俳句はほとんどない。その痛ましさが美を放つのも希少。
雑詠-行方克巳・選
母の忌や土の匂へる衣被
静岡 渡邉春生
掘り出したばかりの里芋の子に土の匂いがするのは当然でしょうが、よく洗ってゆでた、いわ ゆる衣被にも土の香りが残ります。母上の好物だったのか、またその季節にはよく食べさせてく れたのか、お母さんの忌日にはきっとそのなつかしい衣被が食卓にのぼるのでしょうね。
旅のこと語るも看取り林檎剝く
三重 森田敏昭
もうどこにも出掛けることもなく、病床に伏すばかりの人に、あれこれと旅の経験を語って聞 かせているのでしょう。今日も林檎を剝きながら最近の旅のエピソードを話すと楽しそうに聞い てくれる。きっと元気な頃は作者と一緒に色々な所に旅行したこともあるのでしょう。
味も何ンにもうらなりのまくはうり
大分 松鷹久子
「味もンにも」のあとには「無い」という語が省略されています。 一種の強調表現ともいうべき修辞法です。 まくわうりはメロンなどの味を知っている現代人から見ればそれほどの果物で はないでしょうし、ましてうらなりとあればなおさらのことでしょう。
雑詠-西池冬扇・選
雑草もたんと伸びをり稲の秋
神奈川 松原波月
稲の収穫を詠う句は、どれを読んでも人々の心を満ち足りた思いで幸せにしてくれる。この句 の雑草は、否定的には捉えられていないと解釈する。民謡「相馬盆歌」の一節「道の小草にもコ メなるよ」的な捉え方をすると、雑草の「たんと」生えているのも豊年を寿いでいる句となる。
新涼や天元に打つ石の音
兵庫 上岡あきら
天元は碁盤の三百六十一ある目の内のど真ん中。最初の石を天元に打つことは極まれで歴史的 には江戸時代の棋士安井算哲(天文学者の渋川晴海)が打ったことで知られる。この句も最初に 天元にピシと打ち相手を驚かせたのであろう。季語「新涼や」と響きあい、場の雰囲気が伝わる。
小鳥来て植木屋の来て上天気
茨城 加藤そ石
上天気というのは上機嫌で作者の上機嫌でもあるのだろう。この句は「小鳥来て」と「植木屋 の来て」と並列的にごたごたと並べたことが逆に躁的な楽しい雰囲気を表現することに成功して いる。俳句には伝統的に形成してきた端正な形の美しさがあるが、時にはこのような表現もよい。
雑詠-能村研三・選
鵙なくや白虎の掟ならぬもの
山形 佐々木次雄
昔、会津藩の白虎隊には「じゅう 」という集まりがあった。会津武士の「心構え」を身につけさせ るための幼児教育の場で、子どもたちが自らを律する「什の掟」があった。そして最後に「なら ぬことはならぬ」と厳格に教戒して終わった。会津藩士の揺るがぬ「義」への信念を育てたのだ。
十六夜漆絞りの月明り
岐阜 大野徳次郎
十六夜は前日の満月よりも出が少し遅れるので、これを「ためらう」つまり「いざよう(いさ よふ)」と表現し、これが名詞化してできた言葉。名月を待ち仰ぐ思いよりは一抹の淋しさがある。 漆器などで絞漆という塗り方があるそうだが、光沢のある月明りが地面に差しこんだのだろう。
擱筆の闇たちまちに虫の闇
石川 燕北人空
擱筆とは筆を置いて書くことをやめることだが、作者にとって単なる普通の文章ではなく特別 な思いを込めて書いた文章なのだろう。一文を書き上げた達成感と充実感に包まれ、その闇はた ちまち虫がすだく闇へと変わった。
雑詠-山尾玉藻・選
一本の包帯干され秋高し
東京 結城節子
「秋高し」「天高し」の季語は秋の広やかな清澄さを実感させる季語ですが、干されている「一 本の包帯」というごく小さな対象がその趣を絶対のものにしています。このように日常的で瑣末さまつ な一景にもこころ動かされるのが誠の俳人です。
鈴虫のレジ通されて売られける
東京 鶴巻貴代美
ペットショップでの嘱目詠でしょう。レジ係が小さな容器の中の鈴虫を数え、単価と数のキー を打ち、その上で消費税を加算するのが想像されます。命あるものを商う店では日常茶飯事の光 景でしょうが、作者には不自然さと哀れさを覚えるものだったのでしょう。
螻蛄鳴くや人には読めぬバーコード
大分 小田祥子
前掲句のようなレジでの一齣か、それとも作者自身がスマホでバーコードリーダーを操作して いるのでしょうか。全く、「バーコード」なるものは肉眼では意味不明で不可思議、それでいて とても気掛かり。その感応を判然としない「螻蛄鳴く」に語らせました。
兼題
選者:大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
今月の兼題…【空】
兼題-大高霧海・選
原爆忌かの日空哭き黒雨こくう降る
愛媛 境 公二
夕映えの空をみていた敗戦日
大分 下司正昭
終戦忌空腹ばかりの思ひ濃し
京都 西村滋子
兼題-岸本マチ子・選
新米や真空パックの鮭届く
東京 堤 萌
平成の空へ最後の初紅葉
山口 田中賢治
空腹の記憶はるかやふかし藷
宮崎 岡本和子
兼題-高橋将夫・選
月の空秋の地球を浮かべをり
高知 𠮷倉紳一
空蟬といふ前生の終りかな
愛知 伴在虹村
空と海心に抱く秋遍路
神奈川 長谷川如空
兼題-名和未知男・選
空海の幼名は真魚うろこ雲
神奈川 三枝清司
空つぽの腹を並べて吊るし鮭
新潟 矢萩邦子
天地の不穏な兆し空也の忌
茨城 加藤そ石





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