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○ 月刊 俳句界 2015年2月号 ○
特   集
社会と俳句
〜敗戦から70年、戦後、復興、バブル、不況、震災など
俳句は社会をどう表現してきたか
特別作品21句競詠
岡田日郎、諸角せつ子、石 寒太
俳句界NOW
松本 旭「橘」
大人のエッセイ
川島なお美、枝元なほみ
魅惑の俳人 76
吉田鴻司
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俳句ボクシング・今月のチャンピオン
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
見せ合へり敬老の日の力瘤
福岡 松尾信也
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
山姥になりきり聞かす炉辺話
大阪 岸田尚美
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
金と言ひ無色と言ひて秋の風
愛媛 堀本芳子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
吐く息に星の生まるる夜寒かな
石川 山下水音
雑詠
雑詠-有馬朗人・選
銀漢や机上に積みし三国志
埼玉 中島孝允
『史記』、『春秋左氏伝』や『三国志演義』は、何度読んでも面白い。特に『三国志演義』の孔 明にまつわる話は評判が高い。私は悪玉曹操が好きで、もう一寸良く書いてやればよいのにと同 情しながら読む。その分冊何巻かを積み上げ、空を仰ぐと銀漢が輝いている。ロマンのある佳句。
貝割菜ひらひら畝の長きこと
愛媛 玉井玲子
この句は川端茅舎の名句〈ひらひらと月光降りぬ貝割菜〉の本歌取りである。ひらひらしているのは茅舎の句では月光であるが、この句では貝割菜が長い畝にひらひらと伸びている様子を詠っている。芽が出て間のない頃の二枚の葉の風に舞う姿が良く描かれている。
よく回る民話の里の木の実独楽
岩手 草花一泉
作者は岩手の人であるから、この民話の里は遠野であろうか。子供達が木の実独楽を作って遊んでいる。その木の実独楽が実によく回るのである。回し方が上手なのであろう。何となく座敷わらしか、河童の子が交ざって、木の実独楽で楽しんでいるように思えるところが佳い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
冷やかに風呂敷包み閉廷す
東京 高橋透水
おそらく裁判所の法廷での様子ではないだろうか。筆者は経験したことはないが、最近の裁判制度でひょっとして将来参加するかも知れない。弁護士か検察官が書類を風呂敷に包んでいるのを映像で見た記憶があるが、正にその情景が見て取れる。弥が上にも季題が雄弁に語っている。
案山子立つ瑞穂の国の真ん中に
佐賀 萩原豊彦
一時期はあまり案山子を見かけないかと思っていたのだが、最近はユニークなものを含めて結構田圃には季節になると案山子が立っている。日本が稲作文化の国であることの誇りに満ち溢れているような詠み方をしているところに好感が持てる。
手術待つ窓に花野の風入れて
長崎 青木のり子
これから手術を受けられるという逆境にありながら、一生懸命にそれに立ち向かう雄々しさが感じられる。近くに花野がある病院なのだろう。窓を開けると実際その花野を見ることも出来るのだろう。そして花野から吹いてくる風を一杯に浴びて、前向きな心持も感じる句である。
雑詠-茨木和生・選
召されたるあの日のままに冬の駅
大分 下司正昭
召集を受けて、町のみんなに「出征兵士を送る歌」の歓呼の声で送り出された地方の単線の駅。今もそのときとあまり変わることなく古びた駅舎のままである。当時と変わっていると言えば無人駅になったことぐらいだろうか。
コスモスの田も棄てられて了ひけり
奈良 貞許泰治
稲作を続けていけなくなった田、ご先祖に申し訳ないと語り合ってコスモスの田にして、人々の目を楽しませてきた。それも叶わなくなった現在、その田も耕作放棄してしまうことになった。そんな見るのもつらい田が多くある。地方創生というけれど。
この猫も手袋を隠すのが好き
東京 藤森荘吉
いたずら好きの猫、飼い主は困っているようでも、そんな猫の癖を見抜いて楽しんでいるようである。皮手袋だろうか、またお前の仕業だなあ、と言いながらも、この猫がどこに手袋を隠しているのか、飼い主はよく知っているのである。
雑詠-大串章・選
日向ぼこ修羅を経し貌並びをり
神奈川 盛田 墾
修羅場を潜り抜けてきた老人たちが日向ぼこをしている。かつて商売敵と競い合い、熾烈な戦 いを繰り返してきた人たちである。「修羅を経し貌」には、企業戦士と言われ、働き蜂と言われ た頃の面影が残っているが、今は静かに日向ぼこをしている。歳月の流れを感じさせる句。
鰯雲島の教師として残る
福岡 鶴田独狐
島で育った子供たちは、卒業と同時に島を離れる。都会の大学に進学したり会社に就職したり して、思い思いの道を歩き始める。一方、生徒を導いてきた先生は、島に残って教鞭をとり続け る。「島の教師として」と言ったところに、島への愛着と教育者としての責任感が感じられる。
亡き母が林檎をすつてくれしこと
東京 中川 肇
亡くなった母にはさまざまな思い出がある。病気で熱が出たとき、冷たいタオルを額に載せてくれたこと、寒い冬の夜に湯たんぽを入れてくれたことなど。そしてしばしば、林檎をすって食べさせてくれたことも忘れられない。母に対する感謝の思いは年とともに強くなってくる。
雑詠-角川春樹・選
クッキーの抜き跡あまた鳥渡る
鳥取 石渕さゆり
掲句では、「鳥渡る」という季語との取合せに、現代的な生活実感を添えたところが新鮮である。 クッキーそのものではなく、型で抜いた生地の穴のほうに着目した点もいい。飛来する小鳥の賑 わいが想起される佳吟。
鉦叩だけは聞き分け母老いぬ
大阪 吉田 喬
秋の夜にはさまざまな虫声が聞こえるものである。蟋蟀や鈴虫など、よく親しまれた虫の音ではなく、作者は鉦叩に焦点を当てている。掲句からは、体力の落ちた老母をいたわる作者の慈愛がせつせつと伝わってくる。
鳥渡る子等のつくれる指眼鏡
北海道 髙畠テル子
掲句では、子どもたちのつくる「指眼鏡」と季語「鳥渡る」を合わせたことで、時間軸のある 郷愁が立ち現われてくる。作中の「指眼鏡」が捉えているものは、幼少期の作者が思い描いた、 自分の将来像であるかもしれない。
雑詠-坂口緑志・選
水澄むや未来を望むマララの眼
千葉 立花 洸
銃弾を浴びながらも女性の教育を受ける権利を訴え、十七歳でノーベル平和賞を受賞したパキスタン出身の少女マララ・ユスフザイ。その未来を望む大きな瞳が水のように澄んでいる。少女マララの思いと勇気ある行動を世界の多くの人々が賞賛し、感動したのだ。
無言館出で秋風に躓きぬ
埼玉 福本直子
第二次世界大戦で戦死した画学生の作品を集めた戦没画学生慰霊美術館無言館は長野県上田市にある。画学生の遺族を訪ね歩いては作品を集めたという。そんな作品群を見終えて秋風の中に躓く作者。母の絵、恋人の絵、自画像。作者の心を大きく揺さぶったに違いない。
霜柱とけぬ一日多喜二の忌
神奈川 安藤 斉
プロレタリア文学で知られる小林多喜二は、昭和八年二月二十日拷問を受け死去した。二十九歳であった。亡くなった日、霜柱は解けず、一日中寒い日であった。一日中解けずに立つ霜柱は拷問にも屈しなかった多喜二を象徴している。作者の多喜二へ寄せる思いが切々と伝わってくる。
雑詠-高野ムツオ・選
空に触れコスモスに触れ車椅子
三重 鈴木智子
車椅子の生活が日常となってしまった人であろう。散策といっても座ったままで周囲を眺めるしかないのだが、その心のありどころは、次元を異にしている。手はコスモスばかりでなく空深くまで届いているのだ。不遇をものともせぬ精神の自由にあふれている。
飛びさうな鏝絵の鳥や雁渡し
山口 笠ののか
鏝絵は左官職人が漆喰で作る、いわゆるレリーフ。かつては豪商や網元が母屋や土蔵などに競って飾った。今も古い町並みなどに残っている。その描かれた鳥の一羽がまるで飛び出しそうに見えたというのだ。折しも雁を渡す北風が吹く時期。飛べない鳥の願望は作者の思いそのもの。
毬藻より気泡離るる星月夜
東京 海野弘子
毬藻は阿寒湖が有名。毬藻が気泡を放つのは光合成によるものだが、毬藻の息づかいそのものでもある。星月夜のそれは、ロマンあふれるが、水質汚染のため減少著しく、今や絶滅危惧種に加えられていることを念頭にすれば、毬藻に対する作者の慈しみの思いが一層深く感じられる。
雑詠-辻桃子・選
たつぷりと木の実を入れてパンを焼く
埼玉 田村みどり
一読、久保田万太郎の〈パンにバタたつぷりつけて春惜しむ〉を思い出した。自家製のパンである。好きなだけ木の実を入れて焼く。この「たつぷりと」に、いかにもこのパンを愛でる気持が表れている。焼き上がったパンもさぞ美味しいことだろう。
二三歩を下がりまた寄る菊師かな
滋賀 北村和久
歌舞伎役者か武者か姫か、出来上がったばかりの菊人形である。その菊人形をじっと見て、二、 三歩下がったりまた近づいたりということを繰り返している菊師。「二三歩を」の「を」のはた らきが絶妙。菊師の動作や表情が目に見えるようだ。
みなし栗寄せある畑の湿りかな
高知 池 蘭子
「みなし栗」は「実無し栗」。「虚栗」とも書き、殻ばかりで実がない栗のこと。その虚栗が畑 の一方に寄せられてあるのだろう。取り入れも済み、秋耕も終わった畑であろうか。作者は、そ の畑のしっとりとした土の湿りに注目している。
雑詠-豊田都峰・選
石庭の落款ほどに散紅葉
埼玉 田坂泰宏
石庭に紅葉が一、二枚散っている。その状態を、石庭を色紙に、散紅葉を「落款」にたとえた措辞は抜群である。そして「落款ほど」の程度も効果的であり、全般として印象的に、一、二枚の紅葉を表出した結果になった。
城内に井戸百二十鳥渡る
熊本 白井さと
実際は熊本城か、それは作者の地名からの推察。しかしこの解釈は前書的となり避けるべきである。どの城であっても籠城の気構えと考えれば理解できる。それらの大景を把握するに「鳥渡る」を組み合わせた点を評価。
秋の蝶前略ひらり飛び立ちぬ
京都 西村滋子
先ず「秋の」に注目すると、それなりの命の時間を考える。やはり、急いているような素振り。 「前略」で飛び立ち、羽を振りつつ「中略」、「後略」とばかりに消える。「ひらり」の措辞も効 果的にひとつの命の姿が描けている。
雑詠-夏石番矢・選
闇喰うて月は真つ赤になりにけり
東京 矢作十志夫
赤い月についての、作者の神話的起源論の作。古代的というよりは近世的な口調ながら、おお らかに堂々としている。どうして「月」が「闇」を喰ったのかなどは、私たちが楽しく想像を許 される。また、「真つ赤」な「月」がこれからどうなるかなども目をつむって予想したくなる。
夏の野に黄金の疲労置き忘る
香川 磯崎啓三
新興俳句の名句〈頭の中で白い夏野となつてゐる 高屋窓秋〉が連想されるが、この句にはも っと男性的なたくましさがある。「黄金の疲労」からは、一夏の体験に対する大きな満足感がに じむ。そのような「疲労」を「置き忘」れて、すがすがしく前へ進もうとする意志も感じられる。
麦の芽や職なく敵なく味方なし
埼玉 高橋まさお
孤立無援のようでいて、決して暗くない心情を、「なく」三回のリフレインで軽やかに詠んだ ところがいい。この句の場合、「麦の芽」という季語が、季節感とともに、作者の踏まれ強い精 神をも暗示している。心の芯にあるおだやかで安定した活気を、虚飾なく快く届けてくれる一句。
雑詠-西池冬扇・選
掃除ロボットの立ち往生や冬隣
神奈川 山口せうこ
掃除ロボットという新鮮な句材に惹かれた。新しい句材をいち早く趣として定着化していくのは極めて俳人の俳人たる役割と認識している。掃除ロボットが薄く陽の入り込む部屋で立ち往生する姿には手塚治虫ならずとも現代のモノノアワレを誘われる。機械は決して非人情ではない。
掛稲に雲の触れ行く棚田かな
福岡 秋山かつみ
日本の古典的原風景の醸し出す趣といえる。だが今の棚田は原風景ではなく現代人の造りあげた擬古典的原風景だともいえる。ここは遠景としての棚田ではなく作者の眼前の光景と思いたい。稲架ではなく掛稲としたこと、雲にも感情があるがごとく触れ行くとしたことで臨場感がある。
アイロンのシャツの温みや冬隣
神奈川 久里枕流
アイロンをかけて、すぐそれを着て出かけたことが昔は良くあった。冬が近づき肌寒さが感じられる頃はひとしお心に残る生活の一齣だ。平明な句であるが季節感が豊か。それにノスタルジアを感じるのは、自分でワイシャツにアイロンをかける人が少なくなったからであろうか。
雑詠-保坂リエ・選
闇夜にも空はありけり虫すだく
東京 大野眞幸美
改めて闇夜の空を見上げたことはないが、恐らく空は見えない。作者は一人で虫の音を聞いて いる。たくさんの虫が鳴いている。そんな神秘的な夜、物思いに耽る作者。「闇夜にも空はあり けり」の上五音中七音に諸々の思いを籠めている作者。そんな作者が彷彿と見えてくる。
花野行くときをり声を掛け合ふて
神奈川 三田ちづ子
三、三、五、五、に道成りに添って花野を歩く。ときおり昼の虫の鳴き声等聞いて一人の世界を各々楽しんでいる。ときおり人と会う。見知らぬ同士だが何故か懐かしく初対面の人とは思え ない笑顔で声を掛け合う。「ときをり声を掛け合ふて」花野でなければならない十二音。
柿たわわいつかどこでも見た景色
東京 髙木すみこ
「いつかどこでも見た景色」言えそうで言えない。商店街を一本横道に入れば日当たりのよい庭が並ぶ。よくある景だ。誰もが見ていながら作品にはならなかった。どこの家となく柿がたわわになっている。見るつもりはないのだが目に入ってしまう。言えそうで成らなかった秀吟。
雑詠-宮坂静生・選
天の川逝きたる友を叱りたる
神奈川 髙橋俊彦
どうしてこんなに早く逝ってしまったのかと亡骸に慟哭したのである。「叱る」というから親 友であろう。通り一遍の言葉ではこみあげる思いを表現できない。どうしてと同じ語を繰り返す 以外悲しみから逃れられない思いつめた状況が伝わる。「天の川」の下でという深更の場も巧み。
信濃路に海の俤かたつむり
神奈川 沼田樹声
山国の信濃には海に因んだ地名が多い。太古は海底であったことから峠から貝殻も出る。安曇族は北九州から日本海沿いに北上し糸魚川から姫川伝いに国中に入ってきた。本来海洋族だ。山中にいて、深海を想像する。雨上がりのかたつむりを想像するのも面白い。豊かな作。
一人より独りにかへる秋の夜
島根 東村まさみ
「一人」と「独り」はどう違うか。一人は複数の中の一人。何人かの人といて、一人になり家に帰るような場面を想像すればよい。独りは自分自身の孤独な姿に向き合うこと。秋の夜にしみじみと自分に向き合い自問自答しているのである。簡単な表現であるが、知的な明快な作。
兼題
今月の兼題…【日】
兼題-大高霧海・選
なおも舞う凍蝶となるその日まで
埼玉 成田淑美
天つ日へ梯子立てかけ松手入
茨城 羽鳥つねを
玄海の瀬戸の逆波秋日濃し
福岡 洞庭かつら
兼題-佐藤麻績・選
漱石も登りし坂や百日紅
東京 内藤潮南
短日の一気に下るエレベーター
滋賀 北村和久
キリストのステンドグラス秋日射
神奈川 小原紀香
兼題-田中陽・選
遠き日の夢つづくかにいてふ散る
京都 山口美栄子
股引の父の日本の愛し方
東京 伏見芳村
沼さん忌スーパー台風日本指す
鹿児島 押 勇次
兼題-名和未知男・選
毎日を謫居の気分小鳥来る
神奈川 佐藤蘭子
穏やかな日よかいつぶりよく鳴いて
大阪 春名 勲
日記よりはみ出す思ひ星月夜
東京 曽根新五郎
兼題-能村研三・選
鰤漁の沖より父の忌日来る
北海道 小野恣流
日本海育ちの強情もがり笛
神奈川 安田直子
音楽のやうな一日葡萄熟れ
鳥取 石渕さゆり
兼題-森 潮・選
どの子にも日の遍しや一位の実
青森 今田花林
小鳥屋の小鳥睦まし秋日和
神奈川 小原紀香
十二月八日謐かに口漱ぐ
福岡 鶴田独狐
兼題-山下美典・選
貧しさを共に競ひて日向ぼこ
福岡 岡本鞆子
母の手のうすさに触れし母の日よ
愛知 小笠原玲子
金婚の一歩踏み出す初日記
三重 川村かほる

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