●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年7月号 ○
特   集
加藤楸邨
昭和俳句の巨星・楸邨と「寒雷」山脈
特   集
「群青」の挑戦
なぜ、「群青」には様々な世代が集うのか?
特別作品50句
伊藤敬子
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
古田紀一「夏爐」
俳句界NOW
角川春樹「河」
甘口でコンニチハ!
ガッツ石松(俳優)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
雪解水束ねて太き木曾三川
愛知 安井千佳子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
みづうみは大地の瞳ほととぎす
埼玉 高橋まさお
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
葱坊主みんな一旗あげたさう
埼玉 橋本遊行
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
葱坊主みんな一旗あげたさう
埼玉 橋本遊行
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
ひた泳ぐ引く日の近き沼の鴨
福岡 洞庭かつら
春になって鴨や白鳥たちが北へ帰る日が近づいてきた。沼で鴨が一生懸命泳いでいるが、もうこの沼とも当分お別れだと思っているに違いないと想像したところが佳い。鴨だって半年近く過ごした土地を去るのは残念なのである。
飛島の潮目きらめき海猫渡る
山形 横道輝久子
飛島は山形県酒田市に属し、日本海の沖にある。十一月になるとそこへ海猫が渡って来て、八月北方へ去る。十一月頃飛島の周囲の潮目が濃くきらめいている。それを見つつ海猫が渡って来るようである。
声そろふ三人の九九木木芽吹く
兵庫 井上徳一郎
三人の小学生が学校で習ったばかりの九九を、帰校の途中声を揃えて唱えている。その道のまわりの木々も一斉に芽吹いている。子供達が成長してゆく姿と、木々が勢いよく芽吹く様子が一致して、気持のいい力強い句である。
雑詠-稲畑廣太郎・選
春灯レコード針で聴く昭和
大阪 鈴木みのり
一九八〇年代頃から、それまでのLPレコードに取って代ってCD時代になり、現在に至っているが、そのレコード盤に復活の兆しがあるということも聞く。昭和時代の歌謡曲を聞いておられるのだろうか。針をトレースする独特の音色が季題を通して懐かしく伝わってくる句である。
燕来る南の空を伴ひて
埼玉 中村万十郎
春になると、冬鳥は日本から北の国へ帰って行くが、反対に夏を日本で越す渡り鳥は南の国から日本へ渡って来る。その代表とも言えるのが燕であろう。俄かに賑やかになる日本の空であるが、ただ燕だけではなく、南の空を「伴ひて」と少し大げさな表現が季題を引き立てている。
湯豆腐にそよそよかつを節揺るる
静岡 内藤小夜子
お好み焼でもこの光景を見ることは出来るが、熱い料理の上に鰹節を載せると、まるで生きて踊っているようにひらひらと揺れて、余計に美味しそうに感じる。この句は季題の湯豆腐である。冬の寒い中で程良く煮立った豆腐の上に鰹節を載せ、醬油で食べる。酒が進むことだろう。
雑詠-今瀬剛一・選
耕して土の匂ひの中にゐる
愛知 小木曽みえ子
耕し続けて、一休みした時の作品ではないだろうか。「土の匂ひの中にゐる」という表現が心 に強く響いた。耕していくにしたがって黒々とした土が現れてくるのである。そして気がつくと 自分はその黒土に囲まれている。「耕し」を通して作者は確かに春を実感していると思った。
掃き終へて箒の重き春の雪
愛知 匂坂まちこ
春の雪は水分を含んでいて重たい。さらに言えばそれほど積もる印象もない。恐らくはうっすらと地面に積もった程度の雪ではないだろうか。それでも気になるので掃いた。掃き終わってみると箒が妙に重たかった。雪を含んで濡れていたのであろう。いかにも春の雪そのものだと思う。
子に返す球ゆるやかに草青む
埼玉 田村みどり
親子でキャッチボールをしているのだ。子は父へ全力で投げる、それを受け取った父はゆるや かに山なりのボールを返す、その様子がいかにも微笑ましい。「ゆるやかに」という言葉が快く 響いて、辺り一帯の野原が明るく感じられる。何となく親子の会話する声まで聞こえるようだ。
雑詠-大串章・選
苗木市百歳目差し買ひにけり
千葉 三木星音子
苗木市で苗木を買った。「百歳目差し」と言ったところが良い。百歳まで生き抜いて、苗木に 花が咲くのを(または実がなるのを)見ようというのだ。この前向きの姿勢は、作者の心意気を 端的に示している。ぜひ百歳まで生き抜いてほしい。
忘れ得ぬスターまた逝き春寒し
東京 島埜朱蘭
今年になってから松方弘樹・渡瀬恒彦・ペギー葉山など懐かしいスターが亡くなった。「春寒し」 とあるから、三月に亡くなった渡瀬恒彦のことであろう。因みに、松方弘樹は一月、ペギー葉山 は四月に逝った。どこからか、ペギー葉山の「南国土佐を後にして♪......」が聞こえてくる。
名を問へば一年生と答へけり
東京 河合すえこ
一読、笑いが込み上げてきた。楽しい句である。春四月、学校から帰ってくる子に出あったの であろう。大きなランドセルを背負って歩いてくる。ふと立ち止って、「お名前は?」と聞くと、 間髪を容れず「一年生」と答えたのだ。こういう句には理屈抜きのおもしろさがある。
雑詠-大牧広・選
*団結は死語となりしか蝌蚪の紐
神奈川 渡辺正剛
この「団結」とは、かつて労働運動盛んだった頃の働く人達の団結であろう。かの日から労働感の違い、上からの切り崩し、懐柔などによって人々の意識も変わっていった。ゆえに労働者達の「団結」は風化していった。が、民主主義の本質までは死語にはなっていない筈である。
卒業を知らざる画布や無言館
神奈川 劔物劔二
「無言館」は戦中戦地へ狩り出された画学生達の未完の絵が収められている館。その館に入ると、学生達の無念の思いが、ひえびえと体をつつむ。不条理な戦の側面が、書きかけの絵筆などに表われていて声を失くす。さぞ堂々と卒業をしたかっただろうと思うと涙を禁じ得ない。
白椿末期の水はいらないと
広島 甲 康子
人生のいよいよの刻、病んでいる人は、さんざん病苦にさいなまれてきた。せめて人生が終る ときぐらいしずかに眠らせてくれと。ありきたりの形式は、もう沢山だ。病者は、そう訴えたか ったのであろう。「白椿」がそれらを象徴的に現している。
雑詠-角川春樹・選
初蝶のメビウスの輪をひと巡り
神奈川 石原日月
「メビウスの輪」とは、細長い帯を一回ひねって両端を貼り合わせたもので、表裏の区別がつかない連続面となる図形である。初蝶と取り合わせることで、蝶の飛ぶ様子、いのちの連続性を感じさせる。
かげろふや人体といふ一遺跡
静岡 宮田久常
「人体といふ一遺跡」という措辞に魅力がある。季語の「かげろふ」が、作中の人体の負う歴史、人生を読者に感じさせてくれる。あるいは、人類史のようなもっと大きい歩みをも想起させる。
土筆摘むコンビナートをまなかひに
三重 佐藤 径
近景と遠景を描きわけることで、復元される映像に奥行きがある一句となっている。自然と人 工の対比もあり、「土筆」と「コンビナート」が見事に照応している。
雑詠-岸本マチ子・選
漁師の子一人で歌ふ卒業歌
長崎 福山和枝
とうとうここまで来たかという感じ。たった一人の卒業式というのがどうにも胸に痛い。どんな気持で校歌や卒業の歌を歌ったのであろう。きっとご両親や村の人達全員が祝福して下さったと思う。たった一人ではない。漁師の子は強いのだ。ガンバレ!!
火照りたる男ら無口野焼あと
神奈川 神野志季三江
野焼きというのは見ている人達にはとても勇壮で意気さかんな事のように思えるが、火というのは思わぬ事故を起こしやすい。だから直接関係のある人達は終わるまで油断できない。男たちは無口なのではない。全身全霊で火と戦っているのだ。太古の男たちのように。
家号にて呼び合ふ一村葱坊主
埼玉 田村みどり
もしかすると同じ名字ばかりだったり、いくつかに分かれていたりという事で、一村全部家号 で呼び合っているのかもしれない。「柿の木の下の長兵衛さん」とか「大岩の金さん」とか、な んとなくのどかで、一村全部家号というのがいい。きっと葱坊主の似合う村なのであろう。
雑詠-古賀雪江・選
一生を赤城山みて芋植うる
群馬 石原玲子
前年にとれた種芋を保存し、三月から四月に植えるのである。作者は、上毛三山の一つと言わ れる赤城山を朝夕に見る所に住んでおられる。この地に生まれ、嫁がれたのであろう。昔から「か かあ天下と空っ風」と言われ、野を吹きっ晒す風と、働き者でしっかり者の女子の地である。
バレンタインデーの夫白髪を整ふる
大阪 余田はるみ
近年、チョコレートを贈ることばかりがクローズアップされているこの季語で、詩情を深めた句をあまり見たことがないが、この句、バレンタインの日に夫婦で食事にでも行かれたのだろうか。共白髪の夫婦、白髪を整える夫を見る妻の目が優しい。こういうバレンタインの句も嬉しい。
草萌や地の動くごと群雀
東京 森下直子
「草萌」は下萌と同じ意味であって、季節的な意味を持った言葉かと思う。春気が動いて地底から草の芽が頭を擡げる。しかし緑の絨毯のように地上を青一色にするには間があり、まだまだ土の色である。そんな地を啄んでいた雀の群れが一斉に発った時は、地が鳴り動くようであった。
雑詠-坂口緑志・選
*黙祷の間に初音あり津波の日
愛知 山口 桃
東日本大震災のあった三月十一日。午後二時四十六分に犠牲者を悼み、各地で黙祷が捧げられたが、その最中に鶯の初音を聞いたという。復興は少しずつ進んでいるのであろうが、被災者にとっては歯痒い思いであろう。そんな中、鶯の初音は大きな励ましの一声であり、希望なのだ。
忍び寄る軍靴に怯え亀鳴けり
埼玉 橋本遊行
最近の政治情勢や世相から、軍靴の忍び寄る音を感じているのは、作者のみならず、多くの良識のある人々であろう。戦前のいまわしい記憶を忘れた筈は無いのだが、悲しいことである。本来鳴かないという亀が怯えて鳴く今日この頃なのである。
*団結は死語となりしか蝌蚪の紐
神奈川 渡辺正剛
団結と言えば、労働者がその地位の向上を図るための、憲法にも明記された権利であった。相対的に労働組合は弱体化し、団結という言葉も最近聞かれなくなったと感じる作者。あたかも団結しているかのような蝌蚪の紐を前にして、思いは複雑である。
雑詠-佐藤麻績・選
きりもなきラヴェルのボレロ春愁
千葉 山村自游
ラヴェルのボレロほど単調な名曲を私は他に知らない。その上、いつ聴いてもその度に魅了さ れる例も他にない。この曲は母から幼い時に聞かされた事がきっかけになっている。確かに「きりもなき」。この曲が俳句に詠まれたことを私は殊更喜んでいる。
かげろひの巨石に触るる飛鳥村
静岡 内藤小夜子
奈良の飛鳥はかつては都であり、種々の歴史に溢れた地である。その上、謎めいた遺跡も残さ れている。よく知られた石舞台をはじめ、橘寺近くには亀石、鬼の俎、雪隠、猿石等々と数え上 げられるものも多い。「かげろひの巨石に触るる」とはまさにこの地に叶った把握の作品である。
すこし腰ひねりし仏桃の花
兵庫 木村美智子
仏像には多くの表現がなされている。恐れや畏れ、あるいは救いの姿であったりと多くの思いを人に抱かせるのである。それ故に表された型は一体一体異なる。中の腰をひねった仏像に作者は目を止められた。そこに抱いた気持を「桃の花」に託することで納得されたのであろう。
雑詠-鈴木しげを・選
*黙祷の間に初音あり津波の日
愛知 山口 桃
一読、三・一一を詠んでいるのがわかる。悪夢のかの日から六年が経つ。復興未だしの上に、 大臣の不謹慎な発言があったりして困ったことだ。多くの尊い命に黙祷を捧げているその静けさ に初音を聴いたという。沈みがちな背中を後押しするように。
紙めくる音のさざなみ大試験
福岡 森田和をん
この節は進級や卒業をかけた試験というのはあっても大試験という緊迫した雰囲気は薄れてい るのではないか。それでも試験会場の静寂の中、いっせいに問題用紙をめくる音は誰もが記憶に ある。「音のさざなみ」と捉えたところにこの句のよさがある。
み吉野の此度の旅は花の雨
三重 馬場富子
吉野の雪、吉野の月、そして就中、吉野の花。西行や芭蕉ならずとも、み吉野への旅ごころは尽きることがない。さくらに埋めつくされた山々が雨にけぶっている。夢かと思うばかりである。
雑詠-辻桃子・選
曾孫までをみな続きてあたたかし
兵庫 高橋純子
何人かいる作者の孫はみな「をみな(女)」で、この春に産まれた曾孫も「をみな」だった。 季語の「暖か」は、寒い冬を越えて来て感じる心地よいあたたかさをいう。男の子を望んでいた のかな、とも感じさせるが、この季語によって読者までほんわりとした気持にさせられる。
堅雪を足場に枝を伐りにけり
秋田 清水けん一
「堅雪」は春になって日中の日差しに解けた雪が夜間の寒さにまた凍りついてざらざらになっ たもの。スコップがささらないほど堅く、人が歩いても沈むことがない。その堅雪を足場にして 作者は枝を伐っている。「堅雪を足場に」が、春の遅い北国に住む人の暮しを端的に伝える。
引き潮にみるみる崩れ鴨の陣
千葉 芦立みさ子
「鴨の陣」は、湖沼や川に整然と群れる鴨を兵の陣列になぞらえた言葉。この句では、河口近くに群れている鴨が引き潮によって海のほうに流され、その陣形が崩れたという。引き潮の流れの激しさや、群が乱れたり、あるものは飛び立ったりしている鴨の様子が思い浮かぶ。
雑詠-夏石番矢・選
灰色の桜僕にはさう見える
京都 黒金祥一
先月に続き特選第一位で好調。たいていは美しく華やかなさまが詠まれているのに対して、独自でリアリティーのある桜を詠んだ秀句である。桜の花はときには濁って沈んで見える。そう見えたのはなぜか。気候のせいか。時代の雰囲気か。あるいは作者の心境のためか。俳諧精神旺盛。
空磨く仕事よ今日は果てしなく
福島 呼吸
独特の作風の作者。空を磨く仕事ができるのは、いかなる人か。すぐれた俳句は、受け取り手に大きな疑問を投げかけ、考えさせる。空を磨くには、自分の魂の浄化も同時に必要だ。今日という一日も、終りがなく長い。この一句は、季節を超えた精神舞台という時空で展開している。
のどけしや君は蛸壺僕は蛸
宮崎 早川たから
一読ほんとうにのどかな風情の俳句に見えるが、なかなかどうして、さまざまな連想が働くしたたかな一句。相手と自分の関係が、蛸壺と蛸とは奇抜ながら、性的行為そのものさえも喚起され、割れ鍋に綴じ蓋的なカップルの落ち着いた幸福な和合が目に浮かび、とてもユーモラスだ。
雑詠-西池冬扇・選
ごうごうと風は空ゆく初蕨
奈良 能登つくも
初燕に出あった日の空にはごうごうと風が吹いていたという。心を騒がすような景であり、「ご うごうと」いうオノマトペが弛みを感じさせない。初燕という季題と、背景となっている空との 組合せがとても新鮮かつリアル。まるで風の又三郎が飛んでいそうな日だったのではあるまいか。
薫風や野飼の鶏の跳び上る
東京 渋谷 遥
上五の季語の切れで下五を終止形にした古典的で端正な句。しかし句材は新鮮、動的で意外感があり面白い。芝不器男の〈永き日のにはとり柵を越えにけり〉を彷彿とさせる。不器男の句は助動詞「けり」で切ったが、掲句は動詞の終止形で止めており薫風と響き、より躍動感が増した。
着膨れて幽霊飴を買うており
徳島 蔵本芙美子
幽霊飴は幽霊子育て伝説に因む京都の名物菓子。幽界に通じるといわれる六道の辻にも売って いる。「まんが日本昔ばなし」にもあり、桑名の身重だった女の幽霊が赤子に飴を買いに来る哀 れな話で全国にある。この句は幽霊のイメージと対極の着膨れの客という俳味がポイントの句。
雑詠-原 和子・選
登り来て瀬戸内眩し菜の花忌
東京 南北ひろし
「菜の花忌」は二月十二日、小説家・司馬遼太郎の忌日。生前、菜の花を好み、『菜の花の沖』 を始め、瀬戸内を舞台にした小説を幾つも残している。島国日本にとって内海の水運は要。高台 からの眺めはまさに瀬戸内の歴史を俯瞰するもの。「眩し」の一語に作者の思いが集約される。
*黙祷の間に初音あり津波の日
愛知 山口 桃
東日本大震災から六年経つが、「津波の日」は被災地に重くのしかかる。黙祷を捧げていると、 鶯の初音が聞かれた。春を告げて鳴く鶯の声は救いであり、希望である。天変地異には抗うすべ もないが、四季の巡りの約束が癒やしをもたらしてくれる。
封じ手を落花のごとく開きをり
千葉 都丸浩美
「封じ手」は、一局の将棋が二日に渡るとき、一日目の最後の指し手を盤上に指す代わりに紙に書いて密封しておくもので、翌日、再開されるとき、封印が解かれて一手が示される。それは天から降る落花のようなもの。花は刹那に勝負を賭ける棋士にふさわしい。
雑詠-山田佳乃・選
園児らの爪立ち注ぐ甘茶かな
大阪 渡辺美紀代
四月八日の花祭には、花御堂に安置してある小さな誕生仏に甘茶を注ぐ。仏教系の幼稚園などでもよく行われている。子供達は仏様の姿をよく見たいのであろうし、てらてらと光る甘茶に興味しんしんである。伸びあがって甘茶を注ぐ様子が可愛らしい。
突くたびに音をたがへる紙風船
兵庫 𠮷田光代
紙風船は息を吹き込む穴があきっぱなしなので突くたびに空気が抜けていく。凹めばまた息を吹き込むのだから、大らかな遊びである。一突き、二突きとその度に音が違ってくる。言われるとなるほどと思うけれども、なかなか音をしっかりと捉えることは少ないのではないだろうか。
ふらここやもつと遠くが見えた筈
神奈川 前田千恵子
公園のブランコに久しぶりに乗ってみたのだろう。子育ての時期なのかもしれない。ブランコ から見えた景色がどこか違う。子供のときは遥か遠くまで見えたような気がしたのに、今は見え ない。大人になって小さくなってしまった夢のことかもしれない。さまざまなことを感じさせる句。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【面】
兼題-大高霧海・選
震災に耐へきし人の面涼し
東京 井坂 宏
面影の西施桜や澄江の忌
愛媛 境 公二
面作り死相打ち消す朧月
静岡 内藤小夜子
兼題-高橋将夫・選
三面鏡すずしき風を手折りけり
愛媛 武田 正
ぴいひよろろ海の面の長閑なり
愛知 近藤喜子
水遊危なきことが面白く
兵庫 稲谷有記
兼題-田島和生・選
風光る地面に船を描く子かな
神奈川 大矢恒彦
おぼろ夜やこゑ出しさうな伎楽面
熊本 加藤いろは
船の名の川面に映る遅日かな
青森 田端千鼓
兼題-田中陽・選
三島忌や誰も世に処す仮面持つ
愛媛 境 公二
面白き人生と言ひ友逝く・春
神奈川 劔物劔二
すんなりと座席譲られ面喰ふ
大阪 金子さと
兼題-中西夕紀・選
勝鶏に面魂といふがあり
熊本 加藤いろは
白鳥の水面凹みて飛ぶけはひ
宮崎 岡本和子
わが生活もはやB面霾ぐもり
福井 木津和典
兼題-名和未知男・選
おもかげの名の小面や業平忌
広島 甲 康子
妊りの面立ちやさし桃の花
富山 青木和枝
かいつぶり消えて水面は雲ばかり
茨城 加藤そ石
兼題-能村研三・選
春愁の顔が三枚三面鏡
岐阜 七種年男
能面の裏しつとりと朧の夜
東京 関根瑶華
面倒も生き抜く業や蛇穴を出づ
熊本 石橋みどり





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