●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2017年9月号 ○
特   集
俳句のユネスコ無形文化遺産登録って何?
有馬朗人インタビュー、素朴なQ&A、国内登録団体アンケート
特   集
菅原真澄と美しき東北
『遊覧記』抜粋、錦 仁、石井正己、松山 修
特別作品50句
三村純也
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
浅井陽子「鳳」
俳句界NOW
井上弘美「汀」
甘口でコンニチハ!
大谷昭宏(ジャーナリスト)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
虹二重その輪に帝陵女帝陵
大阪 木村良昭
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
夏草の中に錆ゆくもののあり
宮崎 安食哲朗
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
更衣スマホをどこに入れようか
東京 中川肇
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
母の日や又出して見る妣の文
愛知 鳥取博子
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
籠の蛍庭の蛍に応へけり
東京 渕上信子
蛍は雄も雌も発光する。光を発して雄は雌を呼び、雌は雄をさそうのである。夜になり、庭にたくさんの蛍が発光しながら飛んでいる。 ふと見ると籠に飼っている蛍も光っている。「ここにもいるぞ、私も忘れないでくれ」と言ってるようである。その様子を描いたところが面白い。
ひさびさに島に一本鯉幟
兵庫 井上徳一郎
小さな島で住む人も少ない。その上に少子化と過疎化の時代であるから、子供の数も少なくなっている。そのような小集落に珍しく鯉幟が一本翻った。何ともめでたい明るい光景。 島がよみがえったかのような元気が出る光景である。島としても大ニュースであろう。明るい句である。
河鹿笛熊野の国の闇深め
福岡 森田和をん
熊野の国は山が深く、森林に覆われている。夜の闇はまことに深い。河鹿が鳴くと闇が一層深くなるようである。河鹿は山間の清流に棲息する。 山の深い闇が濃いような谷川が好きである。河鹿笛が闇を深めると感じたところが好い。熊野の美しい光景が佳く描かれている。
雑詠-稲畑廣太郎・選
ホームラン俄かにビール売れはじむ
神奈川 松浦泰子
それまでは贔屓チームが負けていて、なんとなく暗い雰囲気が漂い、スタンド内での飲み物の売れ行きもかんばしくなかったところが、逆転ホームランで沸き立っている場面が想像できる。 ビールが見事に主役になっている。願わくば、阪神タイガースがこのようであって欲しいものである。
闇の幕引きて一笛薪能
山形 横道輝久子
現在季題としての「薪能」は五月十一、十二日に行われる興福寺南大門の般若之芝で行われるものである。筆者も能を鑑賞するのは楽しみであるが、 始まりに能管が鋭い音を響かせるとき、何とも言えぬ幽玄の世界に引き込まれたように思う。薪能の不思議な闇と光の世界が心地よい。
振り向きて吾の歩幅に道をしへ
大阪 中家桂子
筆者は六甲山でよく経験したが、山道を歩いていると、ある程度の距離を保ってまるで道を先導して案内してくれているような虫に出会う。斑猫というのが名前であるが、 季題としては「道をしへ」が馴染みがあるのだろう。この虫のユニークな動きが的確に、愉快に描写されている。
雑詠-今瀬剛一・選
蠅帳やすべて見ゆるを湊とす
青森 神保と志ゆき
「蠅帳」を起点として「すべて見ゆるを湊とす」という大きな把握がよく生きている。蠅帳の置かれているのは室内、しかも高台だと思う。 そこから見える輝く海、出入りする船。そうした湾の情景を「すべて見ゆる」と言った。作品の格がしっかりしているので大きな情景が快く響く。
獣らも筍食うてゐる頃か
埼玉 鈴木まさゑ
筍料理を作者も食べているのである。食べながらふと心を過った「獣らも」。その心の飛躍が面白い。筍であるだけに荒々しい獣の姿を思う。表現から言うと「も」の一字が見事に生きている。 ここでは人間と獣と同等に描かれている。一気に言い下した荒々しい表現も的確である。
入港の客船白し聖五月
福岡 松尾信也
この作品を持つ「白」の一字は印象に強く残る。もちろんそれは背景に青い海があるからである。ただ「聖五月」という季語の持つ力を忘れてはならない。 この季語にはそれ自体が清らかで明るく、初々しさを感じさせるところがある。五月は生き生きとした若葉の輝く月でもあるのだ。
雑詠-大串章・選
曝書して父の青春垣間見る
千葉 三山 九
父の蔵書を曝書していると、父の青春時代を垣間見る思いがする。例えば、その本がマルクスの『資本論』やレーニンの『国家と革命』であれば、 若き日の父はマルキストではなかったかと思い、サルトルの『実存主義とはなにか』であれば、実存哲学に嵌っていたのではないかと思う。
青田風上総を名告る駅いくつ
三重 菊田真佐
JR外房戦には上総一ノ宮駅・上総興津駅があり、JR内房戦には上総湊駅がある。 又、小湊鉄道には上総村上駅・上総山田駅。上総牛久駅を冠した駅が数多くある。 青田風の吹く中、「上総を名告る駅」は一体幾つあるのだろう。鉄道マニアに聞いてみたい。
錐揉みも遊泳もあり竹落葉
大阪 村上直子
竹落葉の散り方は風の速さや風向きの違いによって千差万別。きりきりと錐揉み状態で落ちてゆくものもあれば、 ふわふわと宙を泳ぐように飛んでゆくものもある。更に、一枚ずつひらひらと散ってゆくものもあれば、一挙にどっと舞い散るのもある。 なんだか人生の散り際を見るようである。
雑詠-大牧広・選
居酒屋の狭き階段荷風の忌
愛知 井村妟通
永井荷風の晩年は、浅草の踊り子達と自由な日々を過ごした。当然ちいさな居酒屋などで自由な時間を過ごしたのであろう。 その居酒屋は狭く、ようやく人の通れる状態の居酒屋であった。永井荷風の晩年の生きざまがわかりやすく詠まれている。
麦藁帽の純粋失せて被爆国
神奈川 安田直子
言葉の構成力が巧み。麦藁帽のイメージは、本来純粋。それが被爆国の人が被るとそのように見えない。 つまり、この国自体が汚染されているように見える。悲しいことだ。にも拘らず原発の再稼働をつぎつぎと認めている。 「純粋失せて」は心まで純粋性が失せていく日本国である。
飢えし日の校庭狭しと芋畑
大分 下司正昭
七十四年前の戦争中の校庭を想い出す。コンクリートが剝されて、痩せた稲畑になっていた。戦争はまず食糧がなくなる。 米類がお上に取り上げられるのだ。荒涼とした校庭、微用された人たちが力なく働いていた。街路脇の土の部分に痩せた稲がうなだれて立っていた姿が忘れられない。
雑詠-角川春樹・選
葛切りやはらから遠き人となり
長崎 福山和枝
「はらから遠き人となり」というのは、家族の来し方にたいする作者の実感なのであろう。 暑い昼下がりに食べる葛切りは、ことさら涼味を感じるものである。景も見え、取合せの効いた佳吟である。
仔燕をふりかへるとき若返る
熊本 荒尾かのこ
感覚的なところが強い作品であるが、仔燕を見あげた誰もがいだく生命への共感が、一句の中心にある。 大らかな生命賛歌となっている。
葉桜や放つて渡す缶コーヒー
東京 杉本とらを
小説やドラマの一シーンが思い浮かぶ作品である。葉桜をもってきたのも、実にすがすがしい。 「放つて渡す」というところから、親しい友人なども連想される。
雑詠-岸本マチ子・選
大ニュース村に嫁きた燕きた
大阪 田村昶三
たしかに村に嫁さんがきたといえば、大ニュースに違いない。村中の人が見に来るだろう。 そして、しばらく来なかった燕が花嫁さんにつられて、これはこれはようこそなのだ。幸いは幸いを呼ぶ。 村にもようやく活気がやって来たのかも知れない。
糶市の気合で勝負初鰹
兵庫 西村宏
一度早朝の魚のせり市を見たことがあるが、まごまごしていると人間まで売りかねない。 そんな勢いなのだ。その上初鰹。目の色かえてどちらさんも気合で勝負。 ここ一番と張り込んだことであろう。
百点のテスト金魚へ見せにけり
大分 金澤諒和
多分、久々の百点のテストであろう。誰も信用しない。くやしい。 そんなやるせない気持ちを「金魚よお、お前だけは味方だよね」とそっと金魚へ見せた百点のテスト、とてもいい。
雑詠-古賀雪江・選
田水張る音ひそやかや余呉百戸
兵庫 増田恵美子
余呉湖は、滋賀県の北部、長浜市の北、琵琶湖北方にある湖。小さな断層による陥没湖で、冬にここを旅すると水鳥しか見ない。 小さな村に田水を張る田植支度の時期がきた。ひたひたと田水を張る音を「ひそやか」の言葉の斡旋。過疎にも近い余呉の周辺の描写にも繋がっている。
陽炎や都電が宙に浮いてくる
埼玉 矢作永尾
今や全国的にも少なくなっている路面電車。春、天気の良い日、直射日光で地面が熱くなり、空気の低層に温度差が生じて光が屈折して、 遠方の者が揺らいで見える現象が陽炎である。その陽炎により、カーブをしてくる都電が宙を浮いて来るように見えた。春の麗かな季節感が見える。
古里は闇に声あり牛蛙
愛知 伴在虹村
作者の古里はどこであるか分からないが、多分夜になると漆黒の闇となるような山深いところであろう。 数十年前、明日香の香具山の裾でとてつもない牛蛙の声を聞いたことがあった。 大和三山は漆黒の中にあり、その裾の村も鈍い灯がひと屯ずつであった様な記憶である。
雑詠-坂口緑志・選
折鶴の影うつくしき原爆忌
栃木 長谷川洋児
昭和二十年、八月六日には広島へ、八月九日には長崎へ原爆が投下された。多くの犠牲者に沢山の折鶴が捧げられるが、その影の美しさに心を動かされたのである。 悲しみの深ければ深い程、折鶴の影は美しいのかも知れない。
吹いてみる伊賀の苞なる水鶏笛
三重 森下充子
伊賀(三重県)に生まれた俳聖芭蕉。その芭蕉の遺品の中から出てきたという水鶏笛。頭陀袋に入れて持ち歩いたとも言われる。 そんな陶製の一輪挿しとも見える水鶏笛を土産に貰ったのだ。芭蕉に思いを馳せ、吹いてみる作者。柔らかくあたたかい音色がしたことであろう。
尼僧撞く寂光院の鐘朧
兵庫 本村幸子
京都飯原の寂光院は尼寺で、その第三代が建礼門院徳子(平清盛の息女、安徳天皇の国母)である。 壇ノ浦に撲滅した平家いあって吾子安徳天皇は入水、建礼門院は助けられ、寂光院に平家一門と安徳天皇の菩薩を弔ったという。 尼僧が撞くのは夕鐘であろうか。無常の響きも朧である。
雑詠-佐藤麻績・選
芋銭掛け待ち人の来ぬ夏座敷
静岡 山崎ふみこ
芋銭とは小川芋銭の事。茨城県の牛久に虚を構え河童を書いていた日本美術院の同人である。 彼の描く河童の掛軸を掛けて、涼し気な夏座敷となっているのだが、招かれた客は現れない。 所在なく待っているという雰囲気ある一句。
玄奘一行乗つてゐるさうな雲の峰
埼玉 橋本遊行
雲は見る人の心を自在に楽しませる。ここでは彼の玄奘三蔵の一行が乗っていると見たのである。三蔵法師の一行となれば西遊記で知られた孫悟空や猪八戒、沙悟浄らのことであろう。 誠に雲はどこまでも人の心を遊ばせてくれる存在なのである。大きな句である。
桜蘂降る放課後の逆上がり
栃木 大渕久幸
桜が咲き切って散り、やがて蘂が地に散り敷く頃と言えばもう晩春である。学校は新学期から一段落落ち着いた頃であろう。 放課後に一人逆上がりを練習する生徒がいるのである。どこか孤独感の漂う奥行きのある句である。
雑詠-鈴木しげを・選
青竹の箸の切り口夏料理
東京 伊藤たか子
夏料理は第一に三田根が涼やかでうつくしくなければならない。器や盛り付けや料理の配所なども重要であろう。 掲句は青竹の箸の切り口に焦点をあてて詠んでいる。この清々しい竹箸にかかる食材はいかなものか。想像すると楽しい。
花咲かば鞍馬天狗を謡ひけり
大分 江藤清彦
京都の鞍馬山の桜は有名であるが、それ以上に鞍馬といえば牛若丸である。能楽の「鞍馬天狗」は鞍馬山の大天狗が 逆境の少年沙那王(牛若丸)に同乗して兵法を授ける。作者は鞍馬の桜の下で謡曲「鞍馬天狗」を朗々と歌ったことであろう。格調高い一句である。
*祭髪結ひ終へしかばもう居らず
京都 笹下蟷螂子
作者が京都の人となれば、「祭」は祇園祭であろうか。山鉾巡行にぎわいを見たことがある。掲句の祭髪は女の子であろう。 「早く祭りの場に行きたい、早く結うて」というところか。さっきから「コンチキチン」がきこえて心がはやる。 「結ひ終へしかばもう居らず」とは言い得て妙。
雑詠-辻桃子・選
*祭髪結ひ終へしかばもう居らず
京都 笹下蟷螂子
若い女性か、それとも子どもだろうか。神妙な顔で祭髪を結ってもらっていたが、結い終わったとたんもういないという。 祭を見に駆け出して行ったのだろう。はやる心を押さえかねてせっかくの髪を見ようともしないのだ。 古語を交えた臨場感のある表現で言い止められている。
余苗水口に根を降ろしけり
島根 三原白鴉
余苗は田植をしたあとに余った苗。田の隅に置かれたりする。水口は田の水を落とすところだろうが、そんなところに余苗がいくつか捨てられていたのだ。 こんなところに根を降ろしたのかというおどろきと、稲まで育つだろうかという余苗への気持ちが綯い交ぜになって、あわれをさそう。
黒板に完璧な円夏来る
東京 渕上信子
黒板に字を書くのは難しい。なかなかバランスよく書けない。ましてや円となると、難しさは字の比ではない。それが今日は完璧に書けた。 そのときふっときびきびした夏の到来を感じたのだ。窓の外には強い日差しの太陽がのぼり、もくもくと夏雲が立っていたことだろう。
雑詠-夏石番矢・選
雨を呼ぶ大樹の側に立っている
福島 呼吸
作風が固まり始めた作者。童子投句の<父は鯉、母は海蛇となる黄昏>も奇柞ながら独特。 選出句は、波乱含みながら、心身の安定が詠まれている。民族問わず大樹を崇拝していた人間の想念が単純な現代語で書かれている。 雨の神と意を通じる木の神の側にいれば畏敬の念が湧く。
羽衣を奪ふをとこや菖蒲酒
三重 伊藤衒叟
天女の羽衣を盗んで隠すのは、女ではなく決まって男。古来よりの男の業の深さがとらえられている。 この句の場合の、「菖蒲酒」の効果が絶妙。また「菖蒲」の花が天女の飛ぶ姿を彷彿とさせる。
出棺と共に仔猫の鳴きにけり
東京 曽根新五郎
作り事のようでいて、そうではない一句。仔猫が飼い主の死を悟り、永訣を悲しんで鳴きだした。 私の場合、父の遺体が自宅に帰ってきたときに、猫が突然大声で叫んだ経験がある。<母の日の薔薇の形の角砂糖>などと地味で着実な句を作る作者。 そういう作者の傑出した日常詠。
雑詠-西池冬扇・選
夕立ちや何も見えない聞こえない
京都 西村滋子
バケツをひっくりかえしたような夕立。そのまっただ中に突っ立っている作者の心境だ。 このごろ降る表現されているといってもよいし、心理描写だと思ってもよい。 口語体で、かつ古典的切れ字「や」の効果を巧みに活かしている現代ならではの俳句文体と評価できよう。
飯粒を押すや引くやの蟻の脚
神奈川 小泉輝子
活動中の蟻のクローズアップで元気のでる句である。「押すや引くや」という同じフレーズの並列でリズミカルな効果を出したことが元気のでる仕掛けだ。 さらに下五で脚に焦点をあてたことで、作者の視点は蟻の世界にまで同化している。蟻の世界では脚ばかりが目立つのかも。
八月や防空壕を覗きみる
千葉 小池成功
「八月」という季語が背景に持つ言語空間には、あの忌まわしい戦争の思いがある。私たちはそのことを風化させてはならない。 そしてこのあとを俳句の中に表山し、思いを込めていくことでもある。この句の上五の「や」はそのことを語る。「覗き見る」が句のポイントとなる表現だ。
雑詠-原 和子・選
坐してすぐ読書の人やみどりの日
東京 田守三里
みどりの日は五月四日。植物に造詣が深く、自然をこよなく愛した昭和天皇に因む祝日である。 端的に言い留められており、緑蔭で読書に没頭する様子が生き生きと浮かぶ。 「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」というみどりの日に敵う景である。
冷やし酒今日一日の黙を解く
埼玉 鈴木良二
晩酌のひととき。酒は温めて飲むべしといわれるが、冷し酒には冷し酒ならではのよろしさがある。 今日一日がいかなる日であったのか余計な詮索は無用であろう。 ただ、作者にとって重い一日であったことが「黙を解く」の一言に集約されている。
目覚めたる蚕蛾この世を眩しめる
愛知 山口こひな
蚕は四眠四起して成長し、透明な蒼白色となって繭を作る。蛹のうちに羽化することが許されたのが蚕蛾である。 太古から連綿と続く蚕飼は、信仰と結びついており、白い蚕蛾の目覚めには神秘的なものがある。まさに「この世を眩しめる」というところか。
雑詠-山田佳乃・選
夕焼や旅の終りの時刻表
北海道 中場源二
夕焼けの美しい旅の終り。帰り道の電車の時間を調べているのだから、気ままな旅だったのだろう。時刻表を見ているだけで心は旅をするような気がする。 「夕焼けや」という切れ字と「夕焼」という季題の斡旋が巧み。あまりあれこれ言わず「時刻表」という具体的な物で景を語らせた。
ホームラン俄かにビール売れはじむ
神奈川 松浦泰子
「ホームラン」の体言で軽く切れる。ホームランのあと皆気分が良くなってビールがよく売れ始めた。 観客の気持ちがビールの売れ具合で語られるという着眼点が面白い。「売れはじむ」という言葉で観客席が想像され、 作者は野球だけでなくスタンドも見ておられたようだ。
空蝉にいのちの湿りありにけり
群馬 小暮駿一郎
羽化したばかりの脱け殻は柔らかく湿っている。普段我々がよく見る空蝉は乾いているので、 作者はその湿りに驚きを感じたのだ。ついさっきまで動いていた姿を脱ぎ捨てたという不思議さ。 ふれてみてはじめて出来る句ではないかと思う。「けり」という切れ字が効いている。
兼題
選者:大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)
今月の兼題…【角】
兼題-大高霧海・選
虎が雨かつて角帽の壮行式
長崎 梅野ヤエ
蘆の角根こそぎ浚う津波かな
秋田 野越三雄
漱石忌兎角この世は住みにくし
群馬 庭野純一
兼題-高橋将夫・選
三角のどこも頂点聖五月
兵庫 中塚つかな
母の日や角の辺りに白髪出て
福岡 池上桂子
若葉風親の死角で子は育つ
神奈川 鳥海悦子
兼題-田島和生・選
角帽の叔父の遺影や吊忍
千葉 岩瀬孝雄
椎落葉角過ぎるまで母立てり
長野 中井雪江
対岸は君の住む町蘆の角
愛媛 堀本芳子
兼題-田中陽・選
角帽で向日葵畑走り切る
千葉 小林 稔
そこの角より戦闘機昭和の日
福岡 有田真理子
街角に監視カメラや不死男の忌
東京 徳原伸吉
兼題-中西夕紀・選
夏空へ四角く乾く柔道着
愛媛 堀本芳子
八月や四角き紙は鶴に折り
神奈川 大矢知順子
ひと箸に崩れし角煮宵祭り
神奈川 長濱藤樹
兼題-名和未知男・選
御田植えや雄牛の角の飾り紐
岡山 生田恵裕
夕涼み三角函数など忘れ
愛知 石川公子
袋角あはれ人語を聞き分けて
東京 棚木金剛
兼題-能村研三・選
だんじりの見せ場は角の大曲り
東京 関根瑶華
得心のゆかぬ方角道をへし
神奈川 大矢知順子
矢狭間の三角四角青嵐
千葉 原 瞳子





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