●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2018年2月号 ○
特   集
代表句と年齢
あの名句は何歳の時、生まれたのか?
高濱虚子 水原秋櫻子 芝不器男 能村登四郎 澤木欣一
特   集
この"季語"動く?動かない?
特別作品50句
伊丹三樹彦
充実の連載陣!
「牡丹と怒濤ー加藤楸邨伝」石寒太、他
セレクション結社
高橋悦男「海」
俳句界NOW
大野鵠士「獅子吼」
甘口でコンニチハ!
前川喜平(元文科省事務次官)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
河内静魚、山尾玉藻(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、角川春樹、岸本マチ子、古賀雪江、坂口緑志、佐藤麻績、鈴木しげを、辻桃子、夏石番矢、西池冬扇、原和子、山田佳乃(敬称略)
兼題選者
大高霧海、高橋将夫、田島和生、田中陽、中西夕紀、名和未知男、能村研三(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
とんぼ群れ数に力のありにけり
長野 神戸千寛
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
病床に月光満ちて手をかざす
滋賀 山本章裕
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
長雨や晴れ間に大根蒔き直す
富山 そうけ島紀代子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
酸素マスクはづして桃の一滴
千葉 飯田協子
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、櫂 未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、原和子、山尾玉藻(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
渦潮の空悠揚と鷹渡る
兵庫 熊岡俊子
渦潮と言えば鳴門海峡を思い出す。四国と淡路島の間の海峡で、潮の干満の際に生じる大渦が 有名である。この渦潮の上を鷹がゆったりと渡って行く。渦潮の雄大さと、悠揚と空高く渡って 行く鷹を描いて、自然の美しさを詠ったところが優れている。
雁の棹一番星の空渡る
愛知 伴在虹村
雁が棹になって飛んで行く。はるばると北から南へ飛んで行く雁たちの姿は美しい。一日飛ん で夕暮れになってきた。そろそろその日の宿を探しながら飛んでいるのであろうか。そう思って 見ていると、一番星が東の空に輝いてきた。平穏な秋の夕暮れの光景が佳く描かれている。
百歳をきちんと生きて菊枕
長崎 田上喜和
近年は高年齢の人々が多くなってきた。しかも矍鑠なる人が多くなったことはめでたい。百歳 になっても丈夫で日々の生活をきちんと送っている人が、菊枕をして休んでいる姿はまことに美 しい。更に百二十歳を目指して健康を大切に生きて行かれることを祈念する。
雑詠-稲畑廣太郎・選
すでに亡き星の光も天の川
東京 御戸貴史
夜空を見ると、一見雲のように見える天の川である。これが一つ一つの星の集まりであること は御存知の通りであるが、何万光年という距離で、正に今見ているのは何万年前の光である。確 かに現在は活動を終えた星もあるだろう。人間の寿命では測りかねる壮大なロマンが感じられる。
露けしや城址と記す小さき石
大阪 春名 勲
姫路城や大阪城等、現在でも天守閣等が改修されながらも残っている城もあれば、石垣の一部 が残っているだけの城址も多く日本には存在している。多くは合戦に負けた側の城として、敵に 破壊されてしまったものだろう。そんな哀史が季題を通して語られていて、情深く伝わってくる。
電柱に手向けし菊の白さかな
神奈川 うちだしんいち
この場所で交通事故が発生して、犠牲者が出た凄惨な事故だったのだろう。身内の方が手向け たのだろうか、菊の花束が電柱に供えられている。筆者もこのような場所を何度か見た記憶があ るが、遺族にとってはいたたまれない出来事である。菊の白さが、大いなる悲しみを伝えている。
雑詠-今瀬剛一・選
どこよりの風の中なる瓢の笛
兵庫 竹内信子
瓢の笛は私も時々吹く。あの澄み切っていてどこか淋しい音色が好きなのである。この作品は それを「風の中なる」と捉えているところが面白い。しかもその風を「どこよりの風」という、 作者は顔を上げてその音のする方を捜しているのだ。あるかなしかの風、あるかなしかの笛の音。
大花野穂高連峰正面に
福岡 松尾千代子
峨々たる山容と花野の広がりとの対比が見事である。「穂高連峰」という言葉が効果的である。 この言葉は奥穂高、前穂高など多くの山並みを想像させる。そして作者の周辺からは大きな花野 が広がっているのだ。見事な大景描写であると思った。
人声のことに紅葉の濃きところ
兵庫 森山久代
紅葉山の濃淡を「人声」によって捉えているところが面白い。特に、「ことに」という言葉の 使い方が巧い。この言葉は「人声」とともに「紅葉の濃きところ」にもかかっている。つまり人 が沢山集い賑やかなところは紅葉もまた濃いという。紅葉山の真実を巧みに表現している。
雑詠-大串章・選・選
古代米稔る傍へに道祖神
岩手 高橋 貢
古代米は古い時代から食されてきた米で、赤米・黒米などがある。古代米の産地は各地にある が、岩手県では一関市が有名。私の住む千葉県にも古代米を産する土地があり、時々吟行に出か ける。黒米・赤米を間近に見ると古代に思いを誘われる。「古代米」と「道祖神」の取合せがいい。
運動会ゴールは母の腕のなか
大阪 隠岐灌木
幼稚園か小学校の運動会であろう。懸命に走ってきた子がゴールラインを走り抜け、一気に見 物席の母の方へと走り寄る。母の胸に飛びつくと母はしっかり抱きしめる。ほほえましい光景で ある。「ゴール」は「母の腕のなか」と端的に言ったところがいい。
愛犬に好きな道あり曼珠沙華
兵庫 幸野蒲公英
毎日愛犬と散歩をする。別れ道や三叉路に来ると、愛犬はいつも決まった方向へ進もうとする。 たまには違う道をと思ってリードを引いても言うことを聞かない。幸い曼珠沙華の咲く土手の道 は愛犬の好きな道なので、今年も間近に真っ赤な花を楽しむことができた。
雑詠-大牧広・選
物忘れ日ごとに増して山眠る
千葉 八川信也
高齢ゆえの避けがたい悩みと、冬に入り眠っていく山。この取合せによる人間と自然のかかわ りが、下五の「山眠る」で納得させられる。
*進化して進化して栗鎧ひたる
東京 田中靖人
ああそうか、と思わせる力がある発見がある。あの栗は、自らを守るため、あのようないがい がの殻をつけたのであろう。植物の進化力につくづく敬服している。
*風の盆指の先まで人を恋ふ
東京 関根瑶華
たしかに風の盆の踊りの所作の本然は、人恋いにあると感じられる。嫋々とした楽器に合わせ て踊るさまは、「人恋い」のさまである。
雑詠-櫂 未知子・選
仮縫の鏡の中を秋祭
埼玉 諏訪一郎
懐かしく、また鄙びた趣のある内容なのに、ごく洗練された一句となった。それは、「鏡」と いうものの使い方のうまさによるのだろう。「映った」「列が通った」などと言わない、ほどよい 省略の仕方も好感が持てる。
子があらば手をつなぎたき花野かな
熊本 加藤いろは
春や夏の野とは違った、秋の野の寂しげな華やぎを感じさせてくれる作品である。ただし、原 句は「子があれば」だった。あまりにも惜しいので「あらば」にして特選にしたが、その違いを よく検討していただきたい。
風紋のはたてに秋を惜しみけり
佐賀 大石ひろ女
旅先でだろうか、「風紋」の著き地に立って、作者は過ぎ行く季節を惜しんでいる。「果(はた て)」という古風なことばを用いることによって、声に出して読んだ時に、まことに美しく響く 作品になった。
雑詠-角川春樹・選
ふかし藷つぎの時代がもうそこに
富山 清原洋子
「つぎの時代がもうそこに」という措辞が、現代の情勢を的確に捉えている。また、「ふかし藷」 をもってくることで、食糧難の時代の記憶も呼び込まれ、重層的な「時代」というものが一句か ら立ち上がってきた。
自分史の途中書きをる十三夜
京都 𠮷田裕志
人間は誰しも未完のままに人生を終える。したがって、作者の書く「自分史」も絶えず加筆さ れ、完成することはないのだろう。この自分史の途上にこそ、作者の人生の充足が存在し得るこ とを、「十三夜」が物語っている。
こめかみに三角定規当て秋思
静岡 原田幸次
作者の「秋思」が表れた動作として、「こめかみに三角定規」を当てているのだ。三角定規の 形状からピストルなども連想できる。このふとした戯れの動作を描いたところが軽妙でユーモア がある。
雑詠-古賀雪江・選
山茶花や日毎に未知の老いありて
福井 木津和典
年を重ねると昨日出来たことが難しくなったり、思い出せない事があったりして不安に駆られ る。それを「未知の老い」と詠んだ。ポジティブ思考の言葉に、それは怖いものではないように 思えてくる。はらはらと風のままに散る、寂しいながらも風情を感じる山茶花を季語に捉えた。
太陽を歪に受けし榠樝の実
京都 奥田まゆみ
榠樝は球形または楕円形で香気の強い果実である。なめらかな球形であることはなく、歪であ ることが普通である。その歪に実っている榠樝を「太陽を歪に受けた」と思う遊び心が詩人であ るかと。榠樝は生食が出来ないので、砂糖漬、果実酒などにして咳止め薬として重宝される。
眼にいまだ憤怒のひかり鵙の贄
岐阜 大井公夫
鵙には、昆虫や蛙などの獲物を捕らえて木の枝や刺などに突き刺しておく習性がある。しかし そのまま放っておかれることが多く、何のために刺しておくのか解らない。理不尽に捕えられて、 干からびた贄の眼に尚も残る光を憤怒と感じた。日常生活の中での象徴的な事をも感じさせる。
雑詠-佐藤麻績・選
天空のどこか裂きたる鵙の声
福岡 鮫島成子
鵙高音と詠まれるほど、鋭い声で高鳴きをするのが鵙である。また昆虫などを木に刺して贄と するため、「鵙の贄」も季語となっている。こちらの作品は、秋の天のどこかを裂くほどの鋭い 高鳴きを捉えての作品である。
一言のあなどりがたき生身魂
千葉 塩野谷慎吾
生身魂とは、本来生きている御魂、即ち両親など。その魂に対し拝み、その威力を分かち与え てもらうという意味であったという。この作品は、生身魂を崇める本来の心を詠まれて「あなど りがたき」と静かに訴えられたのであろう。
青鷺の孤島の如く立てりけり
愛媛 野澤 均
鷺の中でも青鷺は全長約一メートルほどで背は灰色、翼は青黒色、後頭に青黒い飾り羽がある。 あまり群れは見ない孤高の鳥のようで、一処に長く佇み、一人もの思う風でもある。この作品の 様に孤島と言えば、そのような存在にも思えてくる。まるで哲学をしているように私には思える。
雑詠-鈴木しげを・選
かぼちゃ切る一口大は父のため
千葉 小笠原啓太
作者の父は南瓜の煮物が好物なのだろう。高齢の父の食べやすいように、箸にかかりやすいよ うに一口大に切っている。そのことが父に対して押しつけがましくなく自然の手の動きになって いるのがいい。「やわらかく甘みも丁度いいよ」、父の声が聞こえてきそうである。
*かくれんぼみなこすもすとなりにけり
山形 横道輝久子
俳句では擬人法は成功しにくいので、なるべくさけたいとよく口にしている。しかし「かくれ んぼ」しているのは子供たちであるから、この場合は逆になろうか。コスモスの花野に隠れた子 供たちを「みなこすもすとなりにけり」とひらがなで表記。やさしい風が吹いている。
*石舞台あきつは空を奪ひ合ひ
奈良 髙畑美江子
蘇我馬子の墓と伝える明日香の墳墓。いつの頃か墳土が削られて石室が天日にさらされている。 以前は出入り自由であったが、近年はしっかり入園規制がかけられている。明日香の秋天にとん ぼの群れがよく似合う。「とんぼ」といわず、「あきつ」と表現したところに作者の美意識がある。
雑詠-田島和生・選
堂塔のすぎゆく影や草紅葉
東京 勝田 繁
秋日和の一日、寺に参拝する。本堂や塔の影は時間とともに動く。周辺の草紅葉は影になった り、日を浴びたりしている。仏塔の影を通じて悠久の時間を美しく詠み上げている。
教卓に野の花活ける児童かな
千葉 仁藤輝男
小学校の教室で登校児が教卓に、通学途中に摘んできた草花を活けている。野菊や赤まんま、 露草かもしれない。爽やかな子どもの表情も目に浮かび、明るくていい作品である。
竪穴の闇に一閃いなびかり
愛知 坂倉公子
竪穴とは昔、地面に穴を掘り、簡単な屋根を葺いた竪穴住居のことだが、その住居跡に稲光が 走る。「竪穴の闇」と詠み、暗闇の世の人たちも稲光を浴びたのを想像させ、秀逸である。
雑詠-辻 桃子・選
鷹渡るそのしんがりは誰れも見ず
広島 津田和敏
鷹は越冬のため南方へ渡る。特に差羽の渡りは有名。渡りの様子は「鷹柱」と呼ばれ、群をな して柱状、筒状に昇ってゆく壮観な景だ。掲句は、渡りの景に圧倒されて、しんがりをゆく鷹を 誰も見ることがないと詠む。しんがりを言うことで逆に先頭をゆく鷹の雄壮さを感じさせる。
菊雛の間に盆栽の実ものかな
大阪 北山日路地
菊雛は「のちの雛」ともいい、 三月三日の雛祭に対して九月九日の重陽の日に飾る雛。菊の絵櫃 に赤飯や草餅を入れた。大阪や伊勢などでは、菊雛を飾った部屋に実の付いた盆栽を置くという。 花を飾るよりも実付きの盆栽がよく似合って、いかにも後の雛の間らしさを醸し出している。
末葉までつぶやくやうに露くだる
青森 東舘勝男
「末葉」は、茎または幹の方にある「本葉」と対になる、先の方の葉のこと。掲句の葉は末の 方が下がっていて、露が本葉から末葉へ向かって動く様子を描写した。少し動いては止まり、ま たくだるという静かな動き。この露の表情が何かをつぶやいているようだと捉えた。これも写生。
雑詠-夏石番矢・選
リモコンで月を呼び出すゾンビの子
岐阜 佐久間 鮎
いまは、誰が生者で、誰がゾンビで、誰が死者かわからない時代。コンゴで神を指す単語が、 映画を通じてはるか日本まで伝わり、このような俳句が日本語で生まれた。このゾンビの子は、 腐ったからだながら、しおらしい魂を保持して月を操る。この月は死神の鎌に似た三日月だろう。
*進化して進化して栗鎧ひたる
東京 田中靖人
「鎧」うのは、攻撃よりは防御が目的。まったく無防備で、すぐに実を動物にむさぼられてい た栗は、幾世代もの進化を経てようやく、針だらけの毬を獲得した。しかし、狡猾な人間は、素 手ではなく、さまざまな手段で、その針だらけの毬を破壊して、甘い実を奪う。悲喜劇の一句。
月夜の橋貂が渡つて来たりける
福岡 志帆
私は貂の生態を知らない。それでも以下の想像を楽しんだ。月光に静かに照らされた人の気配 のない木の橋を、可憐で神秘性を帯びた夜行性の小動物が、山側から里側へと、そそくさと小走 りでやって来る。長い背中の毛並みは整い、月下に光っている。さて人里では何をするのだろう。
雑詠-行方克巳・選
納棺や読みかけの書も新米も
兵庫 井上徳一郎
お棺の中に、亡くなる直前まで読んでいた本と、届いたばかりの新米を入れてさしあげた。故 人に対する思いのこもった句ですね。
なかなかに丸くはなれず榠樝の実
神奈川 湯川洋子
榠樝の実は、強い芳香をもった果実ですが、きれいな形にはならず、無骨なままに黄色く熟し ます。木質化した実なので生食はできません。人間もまた然り、という意味が句の向こう側にあ る一句ですね。
*石舞台あきつは空を奪ひ合ひ
奈良 髙畑美江子
石舞台は蘇我馬子の墓といわれる古墳。そのあたりにひしめき合うように蜻蛉が群れ飛んでい る。「空を奪ひ合」うようにという表現に工夫がありますね。
雑詠-西池冬扇・選
深海の魚浮き上る十三夜
東京 井坂 宏
季語の本意は時代とともに豊かさを加えていくべきと考える。十三夜は元々「後の月」、日本 固有の習慣として発祥したようである。少し艶なる趣を感じる人も多いのは遊里の「裏を返す」 という習慣のためだろうか。この句は十三夜の趣を更に妖異の世界にまで押し広げたといえる。
書割の裏は空つぽ冬に入る
東京 矢作十志夫
書割は舞台の背景となる大道具。舞台装置は時限的に出現する幻想世界を演出する。句は中七 で句が切れる、いわゆる二句一章の構造を有する。だが「冬に入る」は季語的趣、冬に入った時 に感じる寒々とした気候の感覚を演出しながらも、上の句が持つ精神的空白感を醸しだしている。
蟬の声がらがらと岩崩れたり
神奈川 妹尾茂喜
「蟬の声」と「岩」は俳句の世界ではすでに縁語である。松尾芭蕉の〈閑さや岩にしみ入る蟬 の声〉があるからである。この句の面白さは、蟬の声が染み入って岩を崩したのだな、と想像さ せるところにあるが、芭蕉の句を知らなくても石切り場の光景を写生したようなリアル感もある。
雑詠-能村研三・選
*風の盆指の先まで人を恋ふ
東京  関根瑶華
髙橋治の『風の盆恋歌』という小説が出てから、富山県越中八尾の「風の盆」は一躍有名な行 事となった。三味線と胡弓が奏でる哀調の調べにあわせ、編みがさ姿の若い男女が街を踊る「お わら風の盆」。男女息を合わせた夫婦踊りには、観客もすっかり魅了されてしまう。
*かくれんぼみなこすもすとなりにけり
山形 横道輝久子
身の丈を越えるほどの鮮やかなピンクや真っ白なコスモスで覆われた迷路で、子どもたちがか くれんぼ遊びをしている。背丈の低い子どもを皆包み込んでしまいそうなのである。すべてをひ らがな表記として、コスモスに包まれた幸福感が表現された。
翼得て懸崖菊の発つ構へ
埼玉 吉澤純枝
菊花展などで展示される懸崖菊は盆栽仕立てにして茎が根よりも低く崖のように垂れさがった ように見せることで、鉢からの流れるような空間の美しさを演出する。横から見ると今にも翼を もって飛び出しそうな構えを感じる。
雑詠-原 和子・選
安達太良の空あるかぎり赤とんぼ
東京 竹田吉明
『智恵子抄』で有名な安達太良山は、福島県を代表する山の一つで、その名は『万葉集』にも 見られる。秋の空は大気が澄み、さわやかな「高き天」。その空を謳歌するかのように赤とんぼ の群れが舞う。「安達太良の空あるかぎり」は作者の福島への心情の現れととりたい。
摘み足してみても淋しき野菊かな
東京 棚木金剛
原石鼎に〈頂上や殊に野菊の吹かれ居り〉があり、どこに咲いていても野菊にはそこはかとな く淋しさがある。中国から渡ってきた大輪であでやかさを競う菊とは違い、摘み足してみても淋 しいところに野生の菊本来の美しさがある。
時雨来る端正なりし猿の顔
東京 笹間 茂
冬の到来を思わせる時雨には、俳句ならではの情緒がある。動物の表情には驚かされることが あるが、時雨の中で出会った猿の顔が端正であったと捉えたところが見所であろう。「時雨」と「猿」 というと松尾芭蕉の句が浮かぶが、それを離れても十分評価できる。
雑詠-山尾玉藻・選
闇汁にはさみしものを疑はず
大阪 小畑晴子
灯を消した部屋の暗がりで、持ち寄りの品々が何であるかを明かさぬまま鍋に放り込むのが「闇 汁」。俳人らしい物好きな行為だが、何を食べさせられるか判らぬ所がスリリング。さて、作者 の箸が挟んだものは何だったのか、「疑はず」が潔くて愉快だ。
味付けは男に任す芋煮会
山形 鈴木花歩
河原など屋外で里芋、野菜、肉を煮て食べる集まりが「芋煮会」。秋冷の候、膝を突き合わせ て熱々のものを食するのは実に楽しい。今日ばかりは味付けを男性陣に任せ、大らかに笑い合う 女性陣たちの様子が思われる。野趣豊かな明るい一景である。
秋気澄む二つ向かうの町の空
群馬 石原百合子
作者は少し高みから隣接する町々の様子を眺めている。「二つ向かうの」より一つ一つの町は さほど大きくないことが窺い知れ、また「町の空」と結んだ点より、その空の下の町に思いを馳 せているのも想像される。誰か知人が住んでいる町なのだろうか。
兼題
選者:大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
今月の兼題…【指】
兼題-大高霧海・選
指ふれし大糸瓜より子規のこゑ
福岡 鮫島成子
不戦てふ指針ぶれたる秋の暮
東京 徳原伸吉
指笛が戦跡で聞こゆ終戦日
沖縄 真喜志康陽
兼題-岸本マチ子・選
握りては指よりこぼす今年米
埼玉 関田独鈷
五指ちがふ爪化粧して秋まつり
千葉 宮山久美子
虫も鳥も指で鳴き分け秋の寄席
群馬 武藤洋一
兼題-高橋将夫・選
光り合う指の振り子やさくらんぼ
神奈川 磯村昌子
指編みのマフラー歌を編み込みぬ
大分 堀田毬子
広島のドームを目指す白日傘
愛知 浅井清比古
兼題-名和未知男・選
触れて知る弥勒の指のあたたかさ
大阪 髙野昌代
牡蠣割女の指の速さと口の黙
兵庫 中水大介
轆轤回す指に陶土の秋の冷え
東京 関根瑶華





2018年| 9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2017年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2016年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2015年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2014年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2013年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2012年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2011年| 12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月
2010年| 12月11月10月9月8月7月6月
定期購読のご案内
・毎月25日発売
・A5判
・定価1,200円(税込)
半年間 6,500円(700円お得)
1年間 12,500円(1,900円お得)
2年間 24,000円(4,800円お得)
定期購読は送料サービス

※定期購読割引は、直接小社にお申し込み戴いたお客様に限り、適用されます。その際、ホームページでお知りになった事をお伝えください。

※購読期間中に特別価格号が出た場合、 差額は当社で負担致します

・ご質問やご不明な点がございましたら、フリーダイヤル  0120-819-575、または、お問い合わせフォームからお問い合わせ下さい。