●毎月25日発売
●A5判  ●定価1,200円

○ 月刊 俳句界 2018年11月号 ○
特   集
初『句集』挑戦
辻桃子 井上弘美 大石悦子 岸本尚毅 仁平勝 山西雅子 ほか
特   集
天地異変
安西篤 伊丹三樹彦 今井聖 岩淵喜代子 加藤耕子 澤井洋子 塩川雄三 鈴木太郎 宮谷昌代 村上喜代子 森田純一郎 ほか
俳句界NOW
谷中隆子
セレクション結社
「なると」」福島せいぎ
私の一冊
安原 葉『虚子俳話』
俳人訪問
橋本幸明
特別作品50句
黒田杏子
甘口でコンニチハ!
桜井淑敏(RCI代表)
amazonでもご購入いただけます→
○ 別冊付録 / 投稿 俳句界 ○
質量とも類を見ない、圧倒的に充実した総勢29名の選者陣!

添削教室選者
折井紀衣、長嶺千晶(敬称略)
俳句トーナメント選者
石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
雑詠選者
有馬朗人、稲畑廣太郎、茨木和生、今瀬剛一、櫂未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
兼題選者
大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)


  【下の各画像をクリックしますと、今月の各コーナーの授賞作品がご覧いただけます。】


俳句ボクシング・今月のチャンピオン
選者:石井いさお、五島高資、佐久間慧子、堀本裕樹(敬称略)
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
浅間嶺のスケッチ添へて避暑便り
兵庫 内田あさ子
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
秋蝶の絡み虚空へ消えゆけり
福井 中井一雄
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
母はみな非戦反戦稲の花
茨城 黒沢弘行
俳句ボクシング・今月のチャンピオン
踏切の我が影轢かれ大西日
神奈川 北川新
雑詠
選者:有馬朗人、稲畑廣太郎、今瀬剛一、大串章、大牧広、櫂 未知子、角川春樹、古賀雪江、佐藤麻績、鈴木しげを、田島和生、辻桃子、夏石番矢、行方克巳、西池冬扇、能村研三、山尾玉藻(敬称略)
雑詠-有馬朗人・選
蛍火や遠流の島の神楽笛
大阪 鵜川久子
律令制による流罪のうち、最も重いものが遠流であった。 その遠流の地とは伊豆、安房、常陸、佐渡、隠岐、土佐。この句では後鳥羽上皇が流された隠岐島であろう。 上皇を祀る神社の裏では沢山の蛍火が飛びかう。 神楽笛の響きの中で飛ぶ蛍火の幻想的な美しさを描いたところが佳い。
燠のごと火星の見ゆる花火果て
神奈川 三枝清司
今年の七月には、何年振りかで火星が地球に大接近した。 花火大会で打ち上げられた花火が終わった後の空に、火星が輝いていたのである。 その火星を、花火の燠のようだと見立てたところが面白い。花火が燃え残って火星になったようである。
臍の緒を見つけし簞笥うけら焼き
兵庫 百目鬼強
松尾芭蕉の名句の一つに〈ふるさとや臍の緒に泣く年の暮〉がある。 久し振りに故郷へ帰った芭蕉が自分の臍の緒を見て、父母の恩に泣いた句である。 百目鬼強さんのこの句は、蒼朮を焚いて湿気を払おうとしたとき、臍の緒を見つけ出したところが面白い。
雑詠-稲畑廣太郎・選
肝試し一歩が出ないキャンプかな
石川 市川登美江
夏のキャンプの楽しみ、というより試練にも感じる肝試しの経験のある方は多いだろう。 オカルトが苦手な人の気持が実感として伝わってくる。 因みに幽霊役の人が五人であったとすると、必ず六人の「幽霊」が出て来るというのが、 肝試しの常であるということだ。
ワイン倉出て六月の風の中
島根 八嶋昭男
ワイン倉の中で試飲会でも行われていたのだろうか。 ワイン倉の中はワインの品質を保つために一定の温度と湿度に保たれており、 人間の感覚からすると少しじめじめしていることも確かであるが、 その中から出て六月の所謂薫風に出会った時の心地良さが何とも明るく表現されている。
夏場所やジョージアといふ国はどこ
香川 妹尾健
平成三十年夏場所で、優勝こそ逃したが、場所後大関に昇進した栃ノ心である。 実は筆者も恥ずかしながら彼は米国ジョージア州出身の力士と思い込んでおり、 なぜここだけ国名ではないのか不思議であった。グルジア共和国の呼称が変わったそうだ。 少し諧謔味のある楽しい句である。
雑詠-茨木和生一・選
うるかことに伊丹の下り酒
東京 宇井偉郎
「苦うるか」は、「にがうるか」と読んで、鮎の内臓を塩漬けにしたもので、 特に酒の当てとして珍重されている。「伊丹の下り酒」は伊丹で生産された酒で江戸に運ばれ、 「下り酒」と呼ばれて重宝された。よい当てによい酒、何よりである。
玄海の波音迫る茅の輪かな
福岡 大平由希子
玄界灘に面したところに神社がある、その景を詠んだ句である。 「波音迫る」が、実に現場にいて波音を胸に受けている感じがする、波音は茅の輪を潜り、 人もまた波音とともに茅の輪を潜る。
峰雲やスコアボードの手書きなる
大分 金澤諒和
一見素人が作ったと思われるようなスコアボードである。 「峰雲や」の上五が青空や日差しや峰雲の輝きを拡げてくれる。 野球場と言っても、白線を引くのもみんなが協力して引いたに違いない。
雑詠-今瀬剛一・選
北山の杉より直き夕立かな
東京 竹田吉明
「杉より直き夕立」という表現に注目した。対象を確かに見て、確かに表現している。 ここで作者は夕立の雨筋を強調しているが、杉の直ぐなることは言わずもがな。 この夕立を強調した表現によって太い雨筋は勿論のこと、その雨の貫く杉山の杉の色合いまで見える様になった。
目の前の雲太りゆく夏休み
愛知 中西滋子
この作品の「夏休み」という季語は静かに、大らかに作品の中で働いている。 雲は峰雲の類であろうか。それが見る間に伸びて、厚みを増してゆく。 「目の前の雲」という表現からは、作者と雲との距離感を、 また「太りゆく」という表現からは雲自体の持つ力の様なものを感じた。
富士山の湧き水迅し蟬時雨
東京 梅村芳恵
眼前を流れてゆく水、それが富士山の湧き水であるという、先ずその輝きを思う。 次に「迅し」という表現からは地の傾きを思った。 おそらくは富士山へ続く傾斜であろう。 そして辺り一帯に響く「蟬時雨」、水音もまた蟬時雨の中にある。辺り一帯に茂る樹木と清涼感が何ともいい。
雑詠-櫂 未知子・選
美しく鳳梨を切つてくるる人
山口 平林美穂
「鳳梨」はパイナップルのこと。南国の明るさをもたらしてくれる果実であり、みずみずしさが身上である。 きれいに、そして食べやすいように配慮して切ってくれた人の、心ばえの感じられる作品だった。
片陰に入りて貌をとりもどす
神奈川 矢橋航介
過酷な夏だった。日陰がこれほど恋しく感じられた夏も珍しかった。 この句の面白さは、そんな厳しい暑さの中で、 自分を取り戻せる場所が「片陰」にほかならなかったと断言したところである。
正面の海の明るき夏館
広島 谷口一好
「夏館」は、どちらかというと山や高原にあるように描かれることが多い。 この句のように「海」に面した詠み方は案外珍しいかもしれない。 はればれとしていて、まことに気分のよい作品であった。
雑詠-角川春樹・選
火取虫狂へる窓に脱稿す
大阪 小畑晴子
火取虫は夜、灯をめがけて飛んでくる蛾のことである。 掲句では、夜中にかけて照明のもと原稿を執筆している作者自身を、火取虫に仮託しているのだろう。 取合せの妙がある。手書き原稿を思い浮かべた。
骨壺の側に眠りて秋涼し
神奈川 深江久美子
亡くなられた方への思いのこもった作品である。俳句では「陰」と「陽」の作用により、余情が深まるところがある。 掲句では、淡々と状況を述べることで、かえって哀切の情が伝わってきた。
昼顔やフェンスに干せる男物
新潟 阿部鯉昇
映像の復元力の効いた作品である。フェンスに男物の衣類を干すのは、都市部ではあまり見られないのどかな景である。 昼顔と男物とすぐわかる衣類とのコントラストが絶妙である。
雑詠-古賀雪江・選
西日落つ水田の中の一軒家
福岡 奥苑靖子
出雲空港から市内への道筋でこんな景に出合った。出雲は盆地を囲う山々が遠く、 水田の中に、それぞれ風垣を巡らしている一軒ずつは、正に一国一城の如き景である。 田植の時期にはそれを一層に感じる。 日が落ちてその余韻に水田が暮れ残っている。一年で一番昼間の長い頃の景。
この町に老ゆべく日傘廻しけり
千葉 原瞳子
この町に生まれ育って年を重ねている。町の外に出る機会も無かったが、 出たいと思った事も無かった。人生の哀感は全てこの町の中でであって、 恙なく今幸せな日々を送っている。「日傘廻しけり」に、 屈託ない作者の姿と充実した人生を送った充足感をも感じる。
半夏生草狐日和となりにけり
神奈川 納富篤
「半夏生」は七十二候の一つ、夏至から十一日目、七月二日頃に当たる。 本来は梅雨が明けていないので大雨の日もあるが、この日は降ったり止んだりの狐雨であった。 「半夏生草」は別名カタシログサで半夏生の頃に生える。 昔の農事暦ではこの時期に田植を終えるものとされていた。
雑詠-佐藤麻績・選
少女凜と諳んずる詩や沖縄忌
埼玉 眞下杏子
沖縄忌は六月二十三日であり、慰霊の日とも言われる。 その日は原爆忌や終戦日と同じように戦争の過ちについて誰もが考える日である。 その思いの詩を心を込めて諳んじる少女の凜然たる様子に感動した一句であろう。
箱庭にふるさとぎゆつと詰め込めり
埼玉 橋本遊行
箱庭とは箱の中に土砂を入れてミニチュアの木や陶器の人形や家や橋、 舟等を配して庭園や山水などに模したもので、夏の季語でもある。 作者はこの箱庭にふるさとの景色を思い出すままに配し懐かしんだのであろう。
風の盆胡弓に咽ぶ坂の町
三重 松本愛子
富山市八尾で九月一日から三日間、風の神を鎮め祈るため行われるのが風の盆である。 越中おわら節は特に胡弓の音が心に響く、まさに咽ぶような音色で夜を徹して踊り歩く。 夜の闇と光の中にくり広げられる女踊り、男踊りも見事な風情である。
雑詠-鈴木しげを・選
苦うるかことに伊丹の下り酒
東京 宇井偉郎
作者は相当な左党であろう。なかなかにこった作である。 うるかは鮎の腸を塩漬けにした食べ物。酒の肴には珍重されている。 これに伊丹の下り酒。江戸時代と洒落た一句。 因みに「誠のほかに俳諧なし」で知られる俳諧師・上島鬼貫は伊丹の酒造業の家の出である。
掌をまあるく掬ふ寺清水
福岡 天野じん子
「掌」は「てのひら」。勿論まちがいではないが、表記としては「手のひら」でいいと思う。 手のひらが清水の容れ物になるのがいい。中七の「まあるく掬ふ」のやさしさが的確な表現である。 また下五も単に「清水かな」ではなく、「寺清水」としたところに情景にふくらみが出た。
被災地にもどる笑顔やかき氷
福岡 森田寿美子
被災国日本などと云いたくはないけれども、今年の自然災害は目に余るものがある。掲句の作者は福岡の人。 この被災地は、九州北部の豪雨によって山崩れが起きた朝倉地区であろう。 その後の懸命の復興の兆しが中七の「もどる笑顔」に象徴されている。かき氷の季語がうれしい。
雑詠-田島和生・選
僧乗せて小島の船や大西日
大阪 藤なぎさ
瀬戸内海には無数の小島があるが、その小さな島の一つだろうか。 法要やお盆には、本土にある寺の僧が島に渡って檀家でお経を上げる。船は読経を済ませた僧を乗せ、再び本土に向かう。 僧は眩しい西日を浴びながら、船に揺れる。独りの僧、小島、大西日と視点を広げた異色作。
厨より酢の香ただよふ帰省かな
愛知 安井千佳子
夏休みに入り、久しぶりに都会から両親の家に戻り、部屋でくつろいでいたら、台所の方から酢の香りが漂い始める。 今夜はお寿司かな、それとも酢を使った混ぜご飯かな、と胸をわくわくさせながら、母のいる台所に向かう。 帰省の喜びが「厨より酢の香ただよふ」に凝縮し、秀逸。
藻の花や湖に星座のあるごとし
大阪 牧岡明子
藻の花は金魚藻、房藻、杉菜藻など淡水の藻の花である。 滋賀県湖北の米原町の梅花藻は梅の花のように浮かぶ。 藻の花が湖に咲けば、まるで星座があるみたいと、掲句は藻の花を星座にたとえ、美しく詠み上げる。 ただ琵琶湖では現在、外来種の水生植物がはびこり、問題になっている。
雑詠-辻 桃子・選
露地庭も愛でつつ屏風祭かな
大阪 北山日路地
屏風祭は祇園祭の宵山の時期に行われ、旧家や老舗が表の格子を外し、屏風や書画、美術工芸品など所蔵する品を公開する行事。 作者が訪ねると、茶室につながる露地や庭が奇麗に調えられていた。 そこで、ふだん目にすることができない家宝を鑑賞した。いかにも京都の屏風祭らしい。
夏期講座ここと定めし隅の席
大阪 鶴賀谷修
何の講座だろうか。きっと、おそるおそるながらも意を決して受講してみたのだろう。 特に席が指定されているわけではないので、いつも、「ここ」と決めた「隅の席」に座っている。 しばらく通うときっと楽しくなりそうだが。「夏期講座」って、いかにもこんな感じ。
蚊遣香弓構へたる足元に
栃木 根本葉音
弓道の屋外練習の景。蚊遣りの煙が弓を構えた人の足元にただよっている。 蚊に食われながらでは集中できないので蚊遣りの世話になるのだが、 古式にのっとった厳粛な弓道の構えと俗な蚊遣香の取合せが面白い。 中七下五の措辞も無駄がなく引き締まっている。
雑詠-夏石番矢・選
八月の上げた拳が下がらない
東京 石口榮
私たち日本人にとっての八月は、二回の原爆投下と敗戦の記憶が染みついている。 暑さと太陽のまばゆさに伴う大きな敗北感。怒りの対象もはっきりせず、「上げた拳」を下ろせず、 おのれの無力に耐えてたたずむしかない一庶民の悲しさ。拳は日盛りに小さな影としてしか存在しえない。
付火あり西日といっしょに消えっちまえ
大阪 髙島一由岐
現代日本に蔓延するもやもや感を、捨て鉢な口語調でたくみに表現した秀句。 放火は、なにかの腹いせが原因だろうが、実行したところで一時的な気晴らししかもたらさない。 そういうもやもやした鬱憤は、夏の夕日と一緒に、地上から消え去ってほしいと願うのは、作者だけではない。
ほんのりと父母が背後にゐる白夜
北海道 大橋嶺彦
ひさしぶりに特選に入った大橋さん。底割れしない、謎と奥行のある俳句を詠んでください。 この一句は、白夜の薄明りの不思議な雰囲気を、うまく伝えている。 「白夜」のあの薄明りには、あの世の父母も帰ってきて、家族を見守っているにちがいない。 「ほんのり」がとても効果的。
雑詠-行方克巳・選
注連縄で島ひと括り夏祭
大阪 清島久門
小さな島の夏祭の景を詠んだものですね。祭事が取り行われる場所を、 祭りのに場わといいますが、その辺りに張り巡らせてある注連縄が、まるで島全体を一括りしたかのように見えたのでしょう。 三輪山信仰が山そのものを御神体とするように、島そのものが神様のように思われたのです。
届きたる南瓜ふたつに割りてさて
東京 矢作十志夫
作者は多分一人者なのでしょう。大きな南瓜が届いた。 固い南瓜を二つに割ったまではいいのですが、その南瓜を前に次にどうするかはたと困ってしまった。 二分割した南瓜でも一人には手に負えません。 人にあげるか、残りはどう料理してゆくか、これから考えなければというところ。
大鯉の動けば夏の雲動く
大分 金澤諒和
風が少しもない穏やかな一日です。白い夏雲を映した池の水面も鏡のようにひっそりと静まり返っています。 水面に近く浮かび上がって来た鯉がゆっくりと向きを変えると、雲もゆらゆらと漂うのです。
雑詠-西池冬扇・選
海峡を背にしバナナのたたき売り
福井 大森弘美
バナナの叩き売りはレトロな光景。 バンバン叩きながら口上を述べる。口上は何処の土地で聞いても同じ。 たいがい「バナちゃん」は台湾生まれでキールン港から船に乗せられ門司港に着く。 実際、門司は荷揚港、バナナ叩き売り発祥の地だそうだ。関門海峡を背景にした句の設定は巧み。
原爆忌背なの痒さに届かぬ手
埼玉 柴田獨鬼
背中の痒い処に手が届かないのはか隔靴掻痒かっかそうようと同じく、もどかしさの表現だろう。 実際に痒いのかも知れない。だが、もしや背中にできたケロイド、と想像させるのが原爆忌という下五の重い言葉。 季語の中に何故原爆忌があるのか、俳人はそのことを伝え続ける使命を忘れてはなるまい。
雨樋を噴きこぼれをり夏の雨
岡山 井上幹彦
時として自然は人間が「合理的」に考えた以上の猛威を振るう。自然が悪いのではなく、 自然と対立して人間だけの都合で社会を築いてきたせいであろう。 この句の「雨樋を噴きこぼれ」る、雨は身近な景だが、集中豪雨の身近な表現だ。 小さな景に大きな真実が垣間見え「時代の句」だ。
雑詠-能村研三・選
蒸しタオル熱くはないか桂郎忌
東京 大網健治
石川桂郎は東京の三田の理髪店の息子として生まれた。 家業の理髪店の仕事をしながら俳句をつくりはじめたと言う。作者は床屋で髭剃り前に熱い蒸しタオルを顔にのせられ、 石川桂郎のことをふと思い出した。桂郎忌は十一月六日、このころは熱い蒸しタオルが心地よい時期でもある。
赤紫蘇を揉みてしばしの指美人
神奈川 大矢知順子
赤紫蘇は、茎や葉が紫色で香りや辛みが強く、葉は塩もみし梅又は生姜と一緒に漬けこんで、 色と香りを際立たせるもの。赤紫蘇の葉に塩を振り、 何度も手もみをすると白魚のような指が紫色になる。その仕事の証を否定的にならず好転させ、「指美人」としたのが素晴しい。
ソーダ水想像力といふ翼
鳥取 石渕さゆり
テーブルの上に置かれた、清涼感に満ちたソーダ水。その発泡も鮮やかで何か華やいだ気分になる。 想像を巡らせるには格好の場所であったかも知れない。 人間の想像力には無限の可能性があり、その想像力で新しいことが実現したり、素晴しいことを次々と生み出せるのだ。
雑詠-山尾玉藻・選
かなかなの防獣網に来て鳴けり
兵庫 藤田幸美
「防獣網」とは、猪や鹿による被害を防ぐため山畑を囲っているネット柵のこと。 たまたまそのネットにとまった蜩が鳴き始めたのです。 生活を護ろうとする人間の苦肉の策などに全く関わりない蜩の涼やかな声ですが、この景は少し皮肉っぽくもあります。
梅雨深し防音室のベートーベン
東京 結城節子
この「防音室」とは学校などの音楽室で、そこに「ベートーベン」の肖像画が掲げられているのでしょう。聴力を失った所為か、 絵を見る限り彼はなかなか険しい眼差しをしていますが、その面差しが「梅雨深し」の雰囲気を一層増幅しているように感じます。
み空より呼ばれてひらく蓮の花
福岡 榊原洋
泥の中から咲く美しい「蓮の花」には神聖という表現が相応しく、 その姿は神々しくもあります。 そのような花が開く様子を「み空より呼ばれてひらく」とは、何と的を射た表現かと感嘆しました。成 程、蓮の花は大空に応えるような噓偽りのない咲きぶりです。
兼題
選者:大高霧海、岸本マチ子、高橋将夫、名和未知男(敬称略)
今月の兼題…【穴】
兼題-大高霧海・選
竹槍と馬穴リレーや八月来
兵庫 井上徳一郎
洞穴に集団自決沖縄忌
長野 土屋春雄
天に穴抜けたる様に暴れ梅雨
東京 薬丸正勝
兼題-岸本マチ子・選
黒潮の育む伊勢の大穴子
三重 松本愛子
此の国のやまぬ崩壊蟬の穴
東京 薬丸正勝
西郷セゴどんの籠もりし穴やちちろ鳴く
鹿児島 内藤美づ枝
兼題-高橋将夫・選
竜天に登り宇宙の穴に入る
宮崎 早川たから
地下都市の出口やあまた蟬の穴
三重 菊田真佐
美しく穴連ねゆくレース編み
東京 森下直子
兼題-名和未知男・選
雲の峰穴門あなと往き交ふ貨物船
埼玉 橋本遊行
井戸の穴覗き六道参りかな
大阪 春名勲
われわれは何処から来たか蟬の穴
神奈川 盛田墾





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