森澄雄 句集『虚心』のご紹介です。
第十三句集
<美しき落葉とならん願ひあり>
人間はこの広大な宇宙の中の一点。人間の生もまた、永遠に流れて止まぬ時間の一点に過ぎない。句はその大きな時空の今の一瞬に永遠を言いとめる大きな遊びである。我を捨てる遊びである。
(「あとがき」より)
●自選十五句● <月の出を待ちゐる天女花かな> <何もかも夢も抜けたり籠枕> <古人みな詠ひつくせり秋の風> <水澄むや天地にわれひとり立つ> <亡き妻も若き日ありき姫椿> <吉野山さくらさくらの花曇> <淡海より彦根の城や星月夜> <空を見る無心にもあり春の空> <妻若く佛となりぬ霞草> <燈籠の美しき秋草灯の入りし> <かなかなのよきこゑにゐる朝夕べ> <丈高き紫苑に今宵月の色> <朝寒夜寒おのれおのれをいとほしむ> <周五郎周平燈火親しけれ> <かいつぶりかいつぶりとてしぐれをり>