
【200句精選】
句集/春光
著者/永井泰雄
判型/四六判並製/カバー装
価格/1905円(税抜き)
鷗らや春の光のおきどころ
早春の不忍池の景。沢山の鷗や辺りのものが共にふさわしい場所を得て、輝かしい春の陽光と風の中にあった。

【オリジナル句集】
句集/夢香山
著者/櫻 敏子
判型/四六判上製/カバー装
価格/2593円(税抜き)
オペラの余韻十三夜
右の二句は開巻劈頭の句で処女作の範疇と解していいだろう。「菅笠一つ動きをり」は雑物を排した鋭敏な写生で、噎せ返るような青田の熱気と、黙々とした作業の実態に迫っている。「オペラの余韻十三夜」には、作者の原色とも言える良質の抒情が、率直に表れていて好ましい。季語も自然な照応で生かされている。

【オリジナル句集】
句集/羽衣
著者/野田ひろ子
判型/四六判上製/カバー装
価格/私家版円(税抜き)
羽衣の天人となり秋惜しむ
ひろ子さんは俳句修行の傍ら、日本の伝統芸能の一つ「謠曲」と「能」の稽古に、長年励んでおられます。悠揚たる羽化登仙の気合があって、自ずと背筋を伸ばして拝読しました。

【オリジナル句集】
句集/白山茶花
著者/青木和枝
判型/四六判上製/カバー装
価格/2700円(税抜き)
ぬかるみに貝殻敷かれ能登時雨
本句集はどれも、「風」「雉」の手堅い即物具象と写生に裏打ちされ、しかも、詠む対象は違っていても、肌理の細かい描写力にすぐれている。看護婦として長く勤務され、最期は看護部長にまで昇格され、上司、同僚らの人望も篤かっただけに、細かい心配りや優しさは作品にもにじみ出ていると言っていい。

【オリジナル句集】
句集/明日の春
著者/田島三閒
判型/四六判並製/カバー装
価格/2500円(税抜き)
明日の春阿吽の像に手を合わす
作者は寺院の山門などで、仁王様や狛犬などを見て、阿吽の像だと思う。阿は口を開き、吽は閉じている姿。万物の初めと終りを象徴している姿に、冬から春への移りを感受して手を合わせたのだ。祈りに応えて、よい事がありそうだ。

【オリジナル句集】
句集/花に帰す
著者/梅津早苗
判型/四六判上製/カバー装
価格/2700円(税抜き)
枯野へと昭和がノイズたててゆく
「枯野」は、この世とあの世を繋ぐ「場所」である。そのトポスに対する「昭和がノイズたててゆく」の中七下五の措辞は、目の覚めるような強烈な景である。抽象的な「昭和がノイズ」は「父」のメタファーと考えられる。梅津早苗の「枯野」が持つ独自の世界観は、従来の俳句観ではなく、「魂の一行詩」が目指す道の一つである現代の「乾いた抒情詩」として評価されるべきなのである。まさに俳句から魂の一行詩への見事な変革と言ったらいいだろう。